いわば酒豪列伝。明治時代までの酒飲みに関する逸話を収集した一冊で、こういう趣向の本が40年以上前(1971年)に書かれたというのは興味深い。
もっとも、現在ではこれほどまでの「酒飲み礼賛」は難しいかもしれない。1971年当時ですら「チンマリ固まって大人らしくなった人間ばかりで構成される社会では、これらの人物は鼻つまみされるだけだろう」と嘆いている。
ただまあ、これだけ酒飲みの逸話が集まると「粋」な酒飲みに希少価値があることがよくわかる。九鬼周造のテーマ設定の背後にはこういう事情があったのかもしれない、などと思った。