オムニバス形式のサッカー漫画。サッカー部に関わる人々にスポットを当てた1話完結型で、「桐島、部活やめるってよ」の雰囲気になんだか似ている。ような気がする。(オムニバス形式のせいだ)
登場人物達は様々な立場の高校生で、進学校のサッカー部に何らかの理由で関わっていく。熱血スポ根ものでなければ超人的な才能を持つ選手が出たりというわけでなく、爽やかな、とあるサッカー部に起こる日常という感じ。
スポットを当てられる少年少女は皆何か挫折を経験したり、自分の中で燻ったものを残している。この物語は彼等の自分の中に残るそれらの昇華と“選択するかどうか”が重要なテーマになっているように思う。
目立った何かがあるわけではないが、この漫画で惹かれるのはやっぱり“実際にこんなことが起こっていそうだ”と錯覚させられてしまうということ。スポーツ漫画でありがちな仲間と勝利を目指して強くなっていくという展開ではなく、青春漫画としてはベタな内容ではあるが、スポーツ漫画ではあまり見たことがないような内容なので、ベタさの中に真新しさを感じる。
まず第1話の、安藤ソラの視点で描かれている話は掴みがとても良かった。
才能がないからこれ以上やっても仕方がないという持論を持つソラ。けれどある少女との出逢いが彼の考えを改めさせる。
読んでいると、結局、どの話も挫折や燻りをもった登場人物たちが何かの切っ掛けを経て、自分が選択したいと思っている事柄を、勇気を持って選択している。切っ掛けを与えられているという点では恵まれているように思えるが、実際に選択したのは彼等だ。その点で見ていると、この漫画のテーマは、本当に選択するかしないかという点にあるように思えてくる。
それにしても1巻しか読んでいないがサッカーをしている場面が本当に少ない。第3話なんて、ソラがサッカー部員の勧誘をしているところしか描かれていない。
これを見るに、この漫画はサッカー漫画というひとくくりにされるのではなく、「自分の選択したいことに至るまでの過程」を描いているように思える。
とは言え、まだ1巻しか読んでいないので、もしかするとサッカーに打ち込んでいる部活のシーンが登場したりするかもしれない。
私はこれをサッカー漫画としてでなく、青春時代の中で高校生たちがやりたいことを選択していく物語としての視点で見ているので、他にも色々な場面を見たいと思う。
タイトルが1/11というくらいだから、サッカー部に関わっている人たちに大体スポットが当たり終えたら連載終了しちゃうのかな?感が否めないが、色々な人の視点をみたいと思う。