エツァート・エルンストのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
サイエンスノンフィクションの大御所サイモン・シン氏が今回取り上げるテーマは「代替医療」。通常医療と比べて代替医療は効果があるのか、皆が抱く疑問を科学的アプローチで検証・解明する。鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法をメインとし付録として51の代替医療が取り上げられている。
代替医療に治癒効果があるか否かは本文を読んでいただくとして、通常医療(すなわち西洋医学)への不信感が代替医療(東洋医学もある)の活況を許している側面がある。近代まで行われていた瀉血は何故効果が有ると言えるのか何故効果が無いと言えるのかの代表例であろう。そうした点から一定勢力かつ既成権力にありつつある代替医療を検証・批評するには相当勇気ある行為である。ランダム化臨床試験を用いた効果測定、プラセボ効果と害の対比など極めて理路整然と客観的に分析されており著者らの問題意識の高さが窺える。
例えば444ページのDHMO(一酸化二水素)はなぜ依然として放置され全く問題視されないのか大きく疑問である(内容は読んでのお楽しみ)。医学が発達し我々の健康寿命が伸び続けるからこそ本書で語られるような内容の啓蒙活動は益々必要であろう。 -
Posted by ブクログ
読んでよかったと言える本。皆にもお勧めしたい。
この著者のシリーズは興味深い話が多い。
現代医療の臨床検査による医療の効果の測定について、今では当たり前になっているけど、思ったよりも最近になってから定着したのだという印象を受けた。
自分が歳をとったので、100年前というのが、古いとは思うが、以前よりも近いと感じるためだと思う。
また、私も鍼には効果があるのでは?ってなんとなく考えていたけど。まったく効果がないとは、そこはちょっと意外だった。
海外の話だが、ホメオパシーのようないかにもいい加減に聞こえるものが大手を振って医療行為としてなされているかと思うと怖くなった。 -
Posted by ブクログ
二千年以上前にヒポクラテスは警告した。
「科学と意見という、二つのものがある。
前者は知識を生み、後者は無知を生む」
本書は一言で言うと、怪しい代替医療手段に手を出すのはやめましょう、という点に尽きる。
なぜならば、通常医療はコストのかかる臨床試験を経て効用と安全性が実証されているのに対し、代替医療は無法地帯のように効能ばかりが強調されているが科学的に立証されていない。
代替医療はプラセボ効果以上のものはないという結論である。
「フェルマーの最終定理」などの著書で有名な科学ルポライター、サイモン・シンと、自らホメオパシーを施術する代替医療分野における世界初の大学教授絵エツァート・エルンストによる共著である。
本書では鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法の成立から現在に至るまでを詳細に検証し、それら代替医療の効果について論じている。
そして、付録には上記以外の三十以上にものぼる代替医療についても言及されている。
代替医療が危険なのは、代替医療が有効だと信じ込み、通常医療に影響がある、もしくは通常医療を中止してしまうことで取り返しのつかないほど病状が進行してしまう可能性がある。
本書が冒頭で「チャールズ皇太子に捧ぐ」と書かれているのは、最大の皮肉である。 -
Posted by ブクログ
「DJの首を吊し上げろ、奴らの音楽は俺の人生に何の役にもたっていない」(The Smith 「Panic」)
優れた科学ジャーナリストであるサイモン・シンが、代替医療の学術的研究を行うエツァート・エルンストとの共同作業により、鍼治療、カイロプラクティック、ホメオパシー、ハーブ療法等のいわゆる「代替療法」について、数多の先行研究を踏まえて科学的なプロセスによる効果検証を行い、その結果をまとめ上げた一冊。
検証にあたってのスタンスは決して「代替医療は効果がある/ない」というどちらかの立場に与するものでもなく、また生理学的な効用をもたらすメカニズムがわからないとしても、それが実際に効果があるのか、もしくはないのかという面だけのフォーカスを置いた点で極めて公正なものである。また、冒頭では医療の効果を検証するために先人が生み出した様々な科学的プロセスの解説が置かれ、本書の検証もまた同様のプロセスを踏んでいることが示される。
さて、結論としての代替医療の効果は概ね否定的なものとなっている。何も治療を施さない場合と比べて、明示的な効果がない、ということもさることながら、代替医療の問題の一つは副作用、通常医療に比べて高額になりやすい費用面、代替医療よりも効果のある通常医療を中止してしまうことによる症例悪化リスク、等が説明される。
何よりも問題なのは、様々な研究によりその効果が疑わしい代替医療がここまで大きなマーケットとして成立してしまっている背景、つまりなぜ人々は代替医療に入れ込んでしまうのか、という心理面の問題である。その仮説として挙げられるのは、通常医療の主体である医師があまりの多忙さ故に一人一人の患者にじっくりと向き合うことが難しく、患者が通常医療の科学的な効果やエビデンスを理解することができないからではないか、という点である。
なお、末尾ではこうした代替医療の問題点にも関わらず、疑わしい代替医療を広めた責任者として、セレブリティ、大学、政府機関、WHO等の10のプレーヤーが明示されている。首を吊らすべきなのは誰か、考えなければいけない。 -
Posted by ブクログ
ホメオパシーは怪しいと気付いている人でも、鍼灸、カイロプラクティック、漢方を疑いなく信じている人は多い。
科学は今の時代でも万能ではなく、推論の積み重ねであり、原因が完全に解明されないまま利用されているものは多数ある。だが、本書が軸としているのは科学的根拠の究明ではなく、臨床試験とその結果を収集した系統的レビュー。ランダムで選ばれた患者に対し、二重盲検法によって試験担当者も対象者も本物の薬かどうか知らされないまま検証し、プラシーボの効果を排除してその効果を測定する。
正規の医薬品だろうと鍼治療だろうと霊感診療だろうとその理論はさておき、同じ検証プロセスを通してこそ何が有用で何が有害であるのかが正しく判定される。その結果、ほとんどの代替医療にプラシーボ以上の効果がないことが明確にされるが、代替医療の信奉者にこの事実を明らかにしたところで、恐らくほとんどが聞く耳を持たないだろう。
いくら正しいデータを並べようが、科学者が言葉を尽くそうが、人の信仰というものは簡単に破れるものではない。一般的に信仰のきっかけとは日常への不安や絶望からくるものだが、代替医療にハマるきっかけは現代医療に対する失望にある。医療制度が整った日本であっても、病院に不信感を抱くシチュエーションは簡単に想像できる。長時間待たされ、たらい回しにされた挙句、数分の会話で薬を処方されて終わり。こんな流れ作業では患者が一番必要とする『安心感』が得られず、プラシーボの効果が薄まることさえあるだろう。それは「医者なんだからこの苦しみを完璧に取り除いてくれるのが当然だ」と完全性を期待してしまう患者の無理解と相まって、優しいだけだが優しさがある代替医療という甘い罠に誘い込ませる。
斯様に未だもって現代は信仰が支配する時代であるが、これは代替医療に限ったことではない。政治・経済にとどまらず、科学の分野においてさえ、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話に根拠のない確信を持つ人は多い。自覚のない信仰に自ら気付く術はあるのだろうか。せめて、自分自身にも未だ見えない信仰があるのだろうということを覚えておき、信じ難い意見にも心を開けるようにしたい。 -
Posted by ブクログ
2013年10月頃初読
2020年3月頃再読
医師が効果の証明された薬を処方すれば、患者には生化学的、生理学的な効果があるだろう。そしてその効き目は、プラセボ効果によってつねに強められるということを思い出そう。薬の標準的な効果のほかに、その薬が効くと患者が期待することによって、標準的なレベルを上まわる効果があるはずなのである。別の言い方をすれば、効果の証明された薬には、プラセボ効果というおまけがついてくる。それなのになぜ、プラセボ効果だけしかない治療を受けなければならないのだろうか? なぜセラピストは、プラセボ効果だけしかない薬を使うのだろう? それは単に、患者を騙しているだけではないのだろうか?
原題は”Trick or Treatment?”. “Trick or treat!”(お菓子くれなきゃ悪戯するぞ)をもじって意訳するなら『信じてくれなきゃ、効かないぞ』みたいな感じか?
鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック等の代替医療に実際効果があるのか? 各治療の歴史、理論を概説しつつ、検証を行なってぶった斬られて終わる、みたいな感じ。まぁ、だから代替医療の域を出ることがないのでしょう。 -
Posted by ブクログ
まず、作者の題材の選び方が素晴らしい。数学、暗号、宇宙ときて次は代替医療。代替医療と一口に言ってもその数はかなりあります。
鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法、この4大医療のほかにもアーユルヴェーダ、アレクサンダー法、アロマセラピー、イヤーキャンドル、オステオパシー、キレーションセラピー、クラニオサクラルセラピー、クリスタルセラピー、結腸洗浄、催眠療法、サプリメント、酸素療法、指圧、人智学医療、カッピング、スピリチュアルヒーリング、セルラーセラピー、デトックス、伝統中国医療、ナチュロパシー、ニューラルセラピー、パッチフラワーレメディ、ヒル療法、風水、フェルデンクライシス法、分子矯正医学、マグネットセラピー、マッサージ療法、瞑想、リフレクソロジー、リラクセーション、霊気など中にはこれも?というものも含まれていますが、科学的に有意なエビデンスがなければ検討の俎上に上がるという徹底ぶりです。
初めて聞く名前も多かったのですが、有名どころでは例えば、マグネットセラピーはピップエレキバンみたいなもの、カッピングはアントニオ猪木がやっていたが背中に丸いアザがでる、サプリメントでは魚油だけが特別扱い・・
まず最初の4大医療方法の結論から言えば、ハーブ療法は例外はあるが効果を誇張しすぎ、カイロプラクティックは腰痛だけには効果がある、鍼も同様、ホメオパシーに至っては効果ゼロ、あるのはプラシーボ効果だけ。
もちろん、プラシーボ効果にも考慮すべき側面はあるが、それなら医者が処方した薬も同様ということで、プラシーボ効果だけしか期待できないホメオパシーはやる意味がない。そして、こうした代替医療に傾斜することで、もっと効果の高い医療がなされず手遅れになるという弊害も出てくる。
このプラシーボ効果については、医師の安易な推奨についても著者は厳しく断罪する。
患者への気休めでホメオパシーを推奨すれば、それは医師がホメオパシーの効果を追認したことになるから、医療に詐欺文化が蔓延することになる。(P407)
最近、日本でも血液クレンジングという効果のないものを芸能人が拡散したことが問題になっていましたが、代替医療の分野でも同じことが起こっています。有名なところでは、ホメオパシー愛好家はシンディ・クロフォード、シェール、アーユルヴェーダはゴールディ・ホーン・・(P414)
本書では、代替医療をひろめた首謀者をリストアップしていますが、上のセレブ以外にも、医療研究者、大学、グル、メディア(この項で取り上げられた謎の化学物質の危険性を告発した記事・・センセーショナルに真実のみを誇張して書いたが、この物質とは単なる水だった、という1文は必読(P444)、医師、代替医療協会、政府と規制担当当局(多くの国ではサプリメントの安全性は保障されていないどころか、市場から回収するためには規制当局が有害であることを証明しなければならない)、WHO(過去にも鍼にお墨付きを与え、ホメオパシーも・・)などこのまま放置しておくと、代替医療天国になってしまいそうな状況です。
一方では、医薬品に関しては厳しい規制があり、研究段階だけで、前臨床試験(5年)、第1段階臨床試験(1年)、第2段階臨床試験(2年)、第3段階臨床試験(3年)、FDAレビュー(1年)など最短でも12年販売開始までに必要でさらに莫大な費用も掛かる。
ナチュラル、ホーリスティック、トラディショナルという言葉を使えば安心安全を担保しているかのように錯覚してしまう代替医療の世界とは異質です。
文庫本の訳者あとがきで、本書のサイモンシンが英国カイロプラクティック協会に名誉棄損で訴えられた顛末も書かれていますので本当にお得な1冊となっています。