いしわたり淳治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
○若者や現代のおかしみを、いまの言葉でアピールしてくる掘り出し物の一冊
55話の小説とエッセイの繰り返しの中で、若者や現代の不可思議さ、おかしみ、特徴、遊び心、嫉み、ねたみを凝縮して、若者や現代の言葉でアピールしてくる。
と言っても、初出は2004年のロッキング・オン・ジャパンの雑誌の中だ。2004年はまぁまぁ古い。古いのだが、変わりのない景色が語られる。
小説とエッセイを織り交ぜてつむぐこの文庫は、短編連作でもなんでもなく、一話一話が必ず気持ちよく完結する。
一話目の「顔色」では、ある女の子を誘った男の話。話していても退屈な女の子とデートしているわたしは、女の子が自分の顔をふいにじっと見て「顔色でストーリーがわかる」と言い出す。その後分かれた女の子を追いかけようとするわたしは――。女の子の見えていた「顔色」とは何だったか。
いしわたり淳治は、わたしの大好きなアーティストの楽曲の作詞を手掛けることが多く、以前から興味を持っていて、今回購入するに至った。いしわたりは、至って文学的に、心に惹かれる言葉たちを紡ぐ。若者の気持ちを若者の視点で描くのだ。と言ってももう41歳とかなのだけど。
ちくま文庫も固い文芸・学問系だけでなくこんなのも発刊してくれるのだな、と。
筑摩書房で販促のFAXをやってくれなければ目に留まらなかっただけに、いい掘り出し物を得られたような気がしている。 -
Posted by ブクログ
短編&エッセイ集なので、ちょっとした移動時間に1エピソードずつ読み進めることができた。
お話はどれもウィットにそんな風に展開するの?っていう驚きがあって、早く早くと次のエピソードを読みたくなる。
作者にはもちろん会ったこともないし、この人が作詞したものをたぶん聞いたことないと思うけど、
会ったらきっと、一見暗い人に見えるんだろうなと思った。
あんまりおしゃべりなタイプじゃなくて、内側でなんか考えてそれを人においそれと言わなそーだなみたいな。
でもその内側で考えてることが「愛が何より!素敵じゃないか、愛」みたいなことを考えてる人なんである、きっと。
素敵じゃないか。 -
Posted by ブクログ
ボブ・ディランの伝記映画『名もなき者』のパンフレットでお名前を拝見するまで、著者のことは存じ上げていなかった。アーティストとして活躍される傍ら、Superfly「愛をこめて花束を」やLittle Glee Monster「世界はあなたに笑いかけている」等、数多くの作詞も手掛けられているという。
本書は彼の短編小説集で、何だかキャッチーなタイトルに惹かれた。
「世界でいちばん整頓の難しい場所は、間違いなく自分の頭の中だ」(P 107)
普段彼が妄想していることを文字に起こしていった感じ。
とりわけ驚愕するほどのものでもなく、一度は私も考えていそうなトピックが綴られていた。だから、彼の脳内世界についていけなくて途方に暮れる…なんて事態にはならなかったと、自負している。
短編小説とエッセイをミックスした構成で、寸劇の合間にトークショーを観覧している気分だった。大体が2000年代に書かれたものだから、「トリビアの泉」等多少(!?)古いネタも見受けられたり…。
しかし今でも尾を引いている社会問題を皮肉ったり、登場人物らがそうしたツケを喰らっていたりと、身体のあちこちを針で突つかれるような感覚を覚えた笑
「偶像崇拝」(P 55-60):短編だから、下手すればネタバレになる危険性を孕んでいる…!だから皆さまをガッカリさせないよう、レビューには気をつけていく所存である…!
独立して自身の店を構えた美容師の男だったが、ほぼ連日閑古鳥が鳴いている。ある日、閉店時間間際に神様(!)が来店し、男にヘアカットを依頼。料金を支払う代わりに神様は、男の願いを叶えてやろうと申し出るのだが…。
これは、ストーリーの展開に誰もがヒヤッとすることだろう…。今自分が見ているものは、本当に自分が思っている通りのものなのか、しばらく思考が行きつ戻りつしそうだ。
「誕生日を祝う理由」(P 132-137):前半が小説形式、終盤にそれまでのエッセイ形式に戻るという不思議なスタイル。誕生日と男が会話しているのだが、男は誕生日を億劫がっていた。そこで誕生日は男にある提案をする。
自分の誕生日が単に歳をとる儀式と化したのは、いつからだろう。これを読んだからには、虚しいものだと捉えるのは、もうよしたい。
「正義の見方」(P 216-220):ヒドい話だ…。ストーリー自体ではなく、主人公に突きつけられた現実が。
ある人にとっての正義を別の正義で潰す。それで平和になったと思い込んでいるのは、潰した側でしかない。主人公の言葉を借りるなら、まさに「ふざけるな」だ。
「ある研究結果」(P 256-260):ある学者が動物実験の結果を学会で発表する中、人間の一家がスクリーンに映し出される。
オチはちょっぴり雑だったけど、この話は発想が好きだった。「人間様だ」とふんぞり返っている人類にも、理解が及んでいないことがある。別の話になるが、下記の言葉を思い起こさせた。
「探し物は探そうとすればするほど見つからない。見えているのに見えないものがあるせいだ。人間の目なんていい加減なものだ」(P 100)
生きていく中でも、一番肝に銘じたい「詞」である。