津野香奈美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
パワハラが発生するメカニズムを個人と組織の特性から解き明かした上で、どうしたらパワハラをしない上司になれるかを解説した本。会社がマネジメント層改革に力を入れ始めた矢先、タイトルに惹かれて読み始めた。
著者は学生時代のバイト先で女性部長の部下が次々と離職するさまを見てパワハラ研究を志したという。自身の研究成果に加え、国内外の200本強の文献を駆使した論説は説得力があった。
パワハラは国内外を問わず存在するが、日本は海外に比べて専制型上司は少なく、放任型の上司が多いという。リーダーシップに欠けマネジメントにも消極的なため、仕事の成果は上がらず組織内にパワハラが横行するリスクが高い。思い当たる人は多いのではないだろうか。
パワハラ上司にならないためのアドバイスが具体的なのもよかった。部下を対等な同僚だと思うこと、運動で自尊心を高めること、などできることから実践していきたい。 -
Posted by ブクログ
エビデンスを用いた説明と、きちんと体系化された内容。大学教授が自身の研究を分かりやすく一般書にしている。網羅性もあり、非常に良かった。
内容としては、
・パワハラの定義
・誰がしているのか
・どのような職場で起きやすいのか
・パワハラになりやすいリーダーシップの類型
・パワハラを起こさないための方策
これらを様々な調査の結果を用いて説明している。
個人的に気づきがあった点を挙げると、
放任型・消極型上司がいる職場でパワハラが発生しやすい、という指摘。最近では、管理職研修などでパワハラ防止を強く意識させられることにより、上司サイドが萎縮する。それにより放置された部下側が、メンタルヘルスを低下させるみたいなメカニズム。
そして、最も危険なのは「専制型のリーダーの上に、放任型のマネージャーがいる職場」、、、そうだと思います。 -
Posted by ブクログ
パワハラされて困っている人向けでも、プラス思考を教わる本でもないけど、自分を守るお守りになるかも。いや、これちょっとおかしいでしょ?ということも言語化できていないとストレスにつながる。自己防衛という意味でも知識をつけてデータで証明することが大切なのではないか。
環境要因 負荷が高い、自由度が低い
人的要因 マネジメントとリーダーシップのバランス
役割葛藤、役割の曖昧さ 矛盾を感じる、何を求められているのかわからない
パワハラが発生しやすい場面は決まっており、それぞれに対処法が存在する。これまで管理職に向いている人は実績と経験があることだけなのかなと思っていたが、それだと絶対人選ミスる。ダークサイドがないと認定され、個別配慮型になれるかが鍵。
褒める時もあらかじめ基準を明確にすることと、行動を起こした直後に褒めるようにする。
褒める、理由を書き加える、行動を示すという形で注意する。
「相手の関心」に興味を示すようにする。本当はこんなこと考えているのかな?という想像は難しいけど、適宜話を聞いていければ。
放任型も好き勝手にやる温床になるから、ちゃんと管理しないとダメだよといわれていると感じた。基準があいまいだと好き放題になるし不満にもつながるため、しっかりと示さないとな。管理的には、どう困っているか、リーダー的にはどういうモチベーションでそれを伝えているのかはっきりすると良いかも。 -
Posted by ブクログ
人事の仕事上での学びになればと思って購入したが、組織で働く全ての人に一章だけでも読んでみることをオススメしたい!参考になる本だと思う。
「科学的に」というのがポイントで、自分の経験談といった偏った見解ではなく、様々な調査や研究結果を分析して語られているから納得感がある。
パワハラに限らず、人間の行動心理学について興味がある方や上司部下とのコミュニケーションに悩んでいる方には刺さる部分が多いと思われる。
私は中堅社員で上と下の間に挟まれる立場にいるので、自分自身が部下や後輩に関わる時に気をつけたいことや上司へのフォロワーシップを改善していこうと思えた。
パワハラ問題に対しても、人事としてどんな切り口で対策を講じていくべきか?啓蒙していくべきかの光が見えた気がする。
自分がマネジメントの立場になる時にも、改めて読み返したい。 -
Posted by ブクログ
部下が上司の言うことを聞くのは、好きだからでも魅力的だからでもなく、「単に上司だから」です。もちろん、上司のことを尊敬していたり、魅力的だと感じていたりする場合もあります。ただ、一般的には、上司や先輩であることと、尊敬されたり好かれたりすることとは、必ずしも一致しません。
・人は優越性を得ると横柄になる
人は社会的に優位な立場に立つと、横柄になることがわかっています。社会や組織の上位にいくほど、①慈悲や同情の気持ちが減り、②権利意識や自己利益についての意識が強くなり、③周囲の人の不利益を顧みなくなることが、様々な研究からわかっているのです。
この実験結果はまさに、社会や組織の上位にいくほど、①慈悲や同情の気持ちが減り、②権利意識や自己利益についての意識が強くなり、③周囲の人の不利益を顧みなくなること、を証明しています。
その逆に、社会的地位が低い人(または貧しい人)の方が、より寛大であり、他者を信頼する傾向にあり、他者に施すのに熱心であり、他者を手助けする傾向にあったことが、複数の実験によって報告されています。
これらの研究は主に米国で行われた研究であり、貧しくても他者へ施すことを教えとするキリスト教信者が多いことが影響している可能性もありますが、少なくともこれらの研究会的地位や金銭的な豊かさと心の豊かさとは必ずしも一致しないことを示しているのです。
モノポリーの実験されたように、社会や組織の上にいくほど、自分の努力によってその地位まで到達したと認識してしまうため、努力しない者に対して自己責任論を押し付けたり、厳しい態度を取ったりするようになる傾向があります。これが、人が権力を手にすると横柄になってしまう理由です。
これは組織内の昇進にも同じように当てはまります。本当はたまたま年齢的だった、たまたま取引先に恵まれた、たまたま家事・育児・介護の負担がない等の有利な条件で仕事していた、あるいは上長のお気に入りだったなどに大きく影響していたとしても昇進した本人はそういった環境要因よりも「自分が努力したからだ」「自分は選ばれた人間なのだ」 と認識する傾向にあります。
その結果、「下は言うことを聞くべき」「自分のように、周囲も努力すべき」という思考になり、その期待に応えない部下に対してイライラするようになります。部下の努力を当然のこととして求めるので、次第にパワハラにつながるような言動が増えるのです。
さらに、上司になると、慈悲や同情の気持ちが減るだけでなく、部下の感情を適切に読み取ることもできなくなる傾向にあります。実際に、社会的地位の高い人は、そうでない人と比べて、相手の表情から感情を適切に読み取ることができなかったという研究報告が複数あります。
つまり、部下が辛そうにしていても、上司はそれに気付きにくいため、さらにパワハラ行為をエスカレートさせてしまうのです。
一方で興味深いことに、「自分は社会的弱者である」と思いこませてから、もう一度相手の感情を読み取る作業をしてもらうと、今度は正確性が上昇したという研究もあります。つまり、上司が忘れてしまった慈悲や同情の気持ちを蘇らせるには、社会的弱者の立場を疑似体験できるような研修や、部下の立場に立って考える機会を定期的に作る等の方法が有効だと言えます。権力やパワーを持つと、悪意がなかったとしても行き過ぎた行動に出る可能性が高いと言うことは、パワーを持った時にどういう振る舞いをする人なのかの見極めが重要です。パワーを適切に使える人なのかどうかを、管理職に登用する前にスクリーニングする必要があると言えます。
また、登用前の研修で、管理職になっても人として偉くなるわけではないこと、業務内容にマネジメント業務が加わっただけであること、部下が上司の言うことを聞いて当たり前だと思わないことを説明して理解してもらうことも大切です。
■パワハラ行為者に男性が多いのか
パワハラ行為者に男性が多い理由として、五つの理由が考えられています。一つ目は「管理職に男性が多い」こと、二つ目は「男性の方が攻撃的な行動を取りやすい」こと、三つ目は「“有害な男性らしさ”の影響を受けている」こと、四つ目が「男性の方が相手の感情を読み取りにくい」こと、そして五つ目が「パワハラ行為を行いやすい性格傾向を持つ人が男性に多い」ことです。
■ダークトライアド(邪悪な三つ組の性格特性)の特徴
1マキャベリアニズム(マキャベリ主義)
ルネサンス期の政治思想家ニッコロ・マキャヴェッリ及び彼の著書『君主論』の内容に由来する、君主は恐れられることが必要であり、どんな手段や非道徳的な行為、結果として国家の利益を増進させるのであれば許されるという考え方。転じて、目的のためには手段を選ばないやり方を指す。
2 サイコパシー(精神病質)
良心が異常に欠如している、他者に冷談で共感しない、慢性的に平然と嘘をつく、行動に対する責任が全く取れない、罪悪感が皆無、自尊心が過大で自己中心的、口が達者で表面は魅力的。
3 ナルシシズム(自己愛性傾向)
「自分は特別で重要な存在である」と誇大な感覚を持つ。常に自分の能力を過大評価し、しばしば自慢げに見栄を張っているように見える。自分は褒められて当然であると思い込んでおり、賛美が得られない時は驚く。自分の成功や権力、美しさ、理想的な愛などについての空想にふけっている。対人関係で相手を不当に利用することも多く、共感が欠如している
特にマキャベリアニズムやサイコパシー傾向の強い人にとっては、目的のために嘘をつくことはたやすいものであることを認識しておく必要があります。そのため、少なくとも下記の三点を、その人と直接一緒に仕事をしたことのある同僚や後輩、部下からのヒアリングによって確認するのがいいと考えています。
1目的のためには手段を選ばない傾向があるか(マキャベリアニズム)
2他者への共感力や良心が異常に欠如していないか(サイコパシー)
3これまでに人をタダ働きさせたり、人の手柄を横取りしたりするなど、他者を不当に利用したことはなかったか(ナルシシズム)
なぜこういった人たちからヒアリングする必要があるかと言うと、ダークトライアドに該当する性格特性を持つ人は、相手によって見せる顔が大きく異なることがあるからです。自分よ同等もしくは格下の者にどう対応するかに、その人の本性が現れます。例えば、経歴が華やかで、上層部から評価されており、見た目も良く、優しそう・頼りになりそう等、第一印象が非常に良い人であっても、過去に一緒に仕事をした同僚や後輩から話を聞くと、「二度と一緒に仕事をしたくない」「顔も見たくない」という全く別の評価が出てくることがあります。
■パーソナリティ障害分類(DSM-5)
A群:奇妙で風変わりに見える
・妄想性パーソナリティ障害群
他者の動機を悪意のあるものと解釈する、他者に対する根拠のない不信および疑い深さを持つ
・シゾイドパーソナリティ障害
他者に対する全般的な無関心、対人関係における感情の幅が狭い
・統合失調型パーソナリティ障害
親密な関係に対して強い居心地の悪さを覚える。親密な関係を築く能力が低く、思考や知覚が歪んでいたり、風変わりな行動を取ったりする
B群:演技的で、情緒的で移り気に見える
・反社会性パーソナリティ障害
社会の規範を破り、他人を欺いたり権利を侵害したりすることに罪悪感を持たない
・境界性パーソ ナリティ障害
現実または妄想で、人に見捨てられることを強く恐れ、不安を抱く
・演技性パーソナリティ障害
広い範囲の対人関係において、過度に注意を引こうとする。話題の中心にいないと気が済まず、知人を実際以上に親密だと思いがちで、公衆の面前で過剰な情動表現を行う
・自己愛性パーソナリティ障害
自分が重要であるという誇大な感覚を持つ。自分の能力を過大評価し、業績を誇張し、他者からの賛美と有利な待遇を期待する。他者を無意識に搾取する
C群:不安又は心配げに見える
・回避性パーソナリティ障害
批判、非難、拒絶に対する恐怖のために、重要な対人接触のある活動を避ける。好かれていることや非難せずに受け入れられることが確認できない限り、新しい友人を作ろうとしない
・依存性パーソナリティ障害
面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動を取り、分離に対する不安を感じる
・強迫性パーソナリティ障害
秩序、完璧主義、規則にとらわれ、柔軟性や効率性、開放性が犠牲にされる。手順や形式に極端にとらわれて仕事を終わらせることができなかったり、完璧にとらわれて掃除をいつまでも行い、約束の時間に遅れたりする
破壊的・建設的リーダーシップモデルによれば、専制型リーダーシップは部下を疲労させモチベーションを下げる一方で、組織の目標達成に貢献する行動(向組織行動)であると定義されています。
あると定義されています。
これが、専制型上司の評価が組織内で分かれる理由です。例えば、部下側からは「今日も怒鳴られた」「このままだと不調者が出そうだ」という悲鳴に似たような訴えが寄せられるのに対し、上長や経営層は「いや、あの人は仕事ができるから、少し部下にも厳しいところがあるのだと思う」「よく部下を指導してくれている」などと評価しており、問題意識を持ってもらえないというパターンです。
このことは、研究者の間でも議論されています。例えば、中国を統一した秦の始皇帝(紀元前二五九~二一〇年)は専制的であったことが知られていますが、万里の長城を完成させたり、また中国史史上初めて通貨や度量衡(計量の基準)を導入したりと、後世に残る功績を遺しています。
ビジネス界でも、例えば米国のApple Inc.の創業者であり、この世にMacBookやiPhoneを生み出した故スティーブ・ジョブズも、専制型のリーダーシップを発揮しており、部下を追い詰めるようなパワハラ的行為を行っていたことが指摘されています。
つまり、専制型上司は部下にとっては辛くても、会社にとっては歓迎される“リーダーシ ップ”でもあるのです。パワハラ上司が部下を追い詰めてくれているおかげで、会社全体の売上等の数値目標や新商品開発、短期の納品等の業績が達成されていることがあるからです。
■破壊的リーダーシップを発揮させる毒の三角形
①リーダー(上司本人)
②フォロワー(部下)
③環境
■専制型リーダーシップは、長期的には部下のパフォーマンスを下げる
専制型リーダーシップがパワハラにつながりやすいと言っても、それを乗り越えた部下はきちんと成長している、という意見もあるかと思います。確かに、上司側から見て、自分の思う通りに部下が動いてくれている実感があると「成長している」と感じるようです。
ただ、本当は成長させているのではなく、主体性を奪い依存させているだけという場合もあります。上司が仕事のやり方や意見を押し付けなければ、もっと他に効率的なやり方や革新的なアイディアがあるかもしれないのに、その機会を奪ってしまっているのです。
専制型リーダーシップは、短期的には部下の仕事のパフォーマンスを上げるとも言われています。短い納期で仕事を仕上げるように言われれば、人は無理してその納期を達成する、つまり高いパフォーマンスを出すことができます。しかし、長期的には必ず部下の仕事のパフォーマンスを下げると報告されています。
中国のとある製造業の企業の上司九〇名、部下三六〇名を対象にした研究においても、直属上司の専制的な関わりは、部下の仕事のパフォーマンスを下げる働きをしていたと報告しています。そして、部下のパフォーマンスが下がったり依存的になったりすることが、ますます専制型上司の管理指向を高めてしまうという悪循環を生み出すのです。
部下の生産性が下がる主な理由は、①上司からのプレッシャーや要求度が高いことにより疲弊していくこと、②継続的に批判され続けることで、自尊心を傷つけられることです。実際の職場でも、専制型上司の部下は入れ替わりが激しかったり、メンタルヘルス不調者が一人以上出ていたりする傾向にあります。
私たちは、関東地方の地方公務員約一〇〇〇名を対象に縦断調査を実施しました。このとき、新規にパワハラが発生するかどうかを見たかったため、初回調査時点でパワハラにあっている人は解析から除外しています。
その結果、直属上司のリーダーシップ形態が放任型だと、半年後にパワハラが新規発生するリスクが四・三倍に、直属上司のリーダーシップ形態が放任型だと、半年後に部下がメンタルヘルス不調になるリスクが二・六倍になることがわかりました(いずれも、性、年齢、学歴、婚姻歴、慢性疾患の有無、職種、職位、交代勤務の有無、追跡期間中のライフイベントの影響を調整済の結果)
■個人的パワハラの発生要因
①自尊心が不安定に高い
つまり、自尊心は誰かによって強制的に植え付けられるものでもなく、また、根拠なく自分自身が優れていると思い込むことが重要なのではなく、何かしらの、納得できる根拠を基に、少しずつ自然と獲得していくものだと言えます。逆に、明確な根拠なく高い自尊心を持ってしまうと、不安定ゆえに何かのきっかけに不安を感じやすく、自尊心が傷つくのを恐れるがゆえに、自己防御として他者を攻撃したり排除したりしてしまうのです。
②感情知能が低い
③自分の言動が他者にどのように影響するか認識できていない
パワハラ行為に至る理由の三つ目は、想像力が乏しいことです。多くの場合、パワハラ行為者は自分がどのような行動をしていて、それが被害者にどのように影響を与えるかについて、驚くほど認識していません。ノルウェーの研究でも、パワハラ事例の四六%に、原因として行者の無思慮(thoughtlessness)が見られたと報告しています。
インタビュー調査によって、パワハラ被害者のほとんどは加害者からの攻撃を、一連の関連ある出来事として捉えているとわかっています。例えば、「先週は上司に舌打ちされた」、「今日は怒鳴られた」と経験すれば、いずれも上司から受けた連続性のあるパワハラであると認識します。そのため、パワハラ行為を受けているのが月に数回でも、「ずっとパワハラを受けている」と感じるのです。
一方で、加害者は、パワハラ行為一つ一つを単発のものと認識する傾向があります。加害者にとって、先週舌打ちしたことと、今日怒鳴ったことは、「別物」なのです。怒鳴った日があっても、次の日に怒鳴らなければ、ダメージはリセットされると考えるため、加害者側は個々の行為を「耐えうるもの」だと判断する傾向にあります。
こういった上司の行為に対し、被害者は最初は我慢するのですが、次第に我慢できなくなり、「やめてください」と言ったり、泣いたりといった反応を示すようになります。しかし加害者は自分の行動を理解していないため、被害者の反応に驚き、「自分はそんなひどいことはしていない、被害者が誇張している、過敏すぎるだけだ、自分には理解できない」等と主張するのです。
これは、事実確認調査で双方の意見が全く噛み合わないことにもつながります。そもそも行為者は自分がパワハラをしていると認識していません。過去二年間にパワハラで訴えられたことのある管理職一九名を対象にインタビュー調査を行ったオーストラリアの研究では、なんと参加者の九割が「これまで誰に対してもパワハラをしたことがない」と回答しています(一割のみが「ごくたまにパワハラ行為をしたことがある」と回答)。
そして参加者全員が、指摘されたパワハラ行為に対して「合理的なものだった」「管理職としての仕事を全うしただけだ」と説明したと報告しています。この調査結果にも、パワハラ行為者は自分自身の言動が部下にどのようなダメージをもたらすかについて認識できていないことが、如実に表れています。
④他者に対する期待水準が高い
⑤厳格な親タイプ
■役割葛藤・役割の曖昧さのある職場
本章で既に、パワハラ行為者の多くが役割葛藤や役割の曖昧さ等に関するストレスを感じていたことは触れました。繰り返しになりますが、「役割葛藤」は仕事において矛盾した期待、要求、価値観を感じる度合いのことで、「役割の曖昧さ」は自分に何が期待されているのかわからないこと、あるいは計画された明確な目標や目的がないと感じている程度を示します。
従業員に役割葛藤や役割の曖昧さを感じさせるような職場でパワハラが増えることは、縦断研究によっても報告されています。職場のルールやシステムが曖昧であるばかりに、パワハラが誘発されてしまった相談事例もあります。
例えばコロナ禍で、消毒作業を誰がいつどこまでやるのかというルールが明確にされていなかった職場がありました。朝一番早く出勤した職員がやっていたため、遅めに出勤する職員が非難されたり、人によってどこまで消毒すべきかの認識が異なっていたため、「念入りに消毒すべき」と主張する職員と「ほどほどでいい」と言う職員とで対立が起きたりしていました。
所属長が的確な指示をしなかったため、勤続年数が長い職員が、短い職員をいじめるという構造になってしまったのです。これも、職場の構造が生み出したパワハラです。
また、仕事用具や機器を従業員が共有しているある職場では、ルールが明確でなく、きれいに整理整頓したい後輩と、適当にしまえばよいと考えている先輩との間で対立が起きて、後輩側が「先輩に意見を言うなんて生意気だな」といじめられる一歩手前の状況でした。
仕事用具や機器を共有する場合、どこまできれいに使うべきか、丁寧に使うべきかについて、個人の価値観がぶつかりやすくなります。その結果、従業員同士の葛藤が起きやすく、圧倒的な差がある場合はパワハラの発生につながるのです。
■感情知能の構成要素
①自己認識力
-感情の自己認識
-正確な自己評価
②自己調整力
-感情の自己抑制
-信賴性
-変化への順応性、柔軟さ
-主体性
③社会認識力
-共感
-集団の感情把握
④関係調整力
-コミュニケーション
-コンフリクト・マネジメント
-ビジョナリー・リーダーシップ
-チームワークとコラボレーション
人は、一度「あいつはだめ」「あいつはできない」「あいつは生意気」等とネガティブな印象を持ってしまうと、無意識のうちにその印象に合致した言動をさらに探してしまい、「やっぱりあいつはできない奴だ」等と決めつけてしまう性質があります。そしてこれが、さらなるイライラの原因になってしまうのです。
それを防ぐために有効なのが、別の思考オプションを予め用意しておくことです。「あの人はだめな人だ」「仕事ができない人だ」と思うことがあったら、次回からこう思うようにして下さい。「あの人はだめなのではない。①(その仕事の)やり方を知らないか、②(その仕事が)苦手なのか、③何か事情があるのだ」と。
■マネジメントとリーダーシップの違い
本題に移る前に、ここで「マネジメント」と「リーダーシップ」との違いを整理しておきたいと思います。ハーバード大学ビジネススクール名誉教授であるジョン・P・コッターによると、マネジメントは「計画と予算の策定」「組織編成と人員配置」「統制と問題解決」によって構成されるのに対し、リーダーシップは「方向性の設定」「人心の統合」「動機づけ」から構成されると定義されています。
管理職であればいわゆるマネジメント業務を行うのは当然ですが、その管理職にリーダーシップがあるかどうかは別問題です。この「リーダーシップの不在」こそが、第3章で取り上げ上司のもとではトラブルが起きやすいこた「放任型リーダーシップ」です。こういった放任型上司のもとではトラブルがおきやすいことは、既に解説しました。
また、放任型でなくても、部下への積極的な関わりがマネジメントに大きく傾いてしまうと、「血も涙もない上司」になりがちで、気持ちがついていかなくなります。逆にリーダーシップばかりに傾いてしまうと、夢や目標設定をしたり、ひたすら部下を鼓舞したりするだけで、予算を取ってくる・十分な人員を確保する等の実務的な問題解決がなされず、疲弊していくことにつながります。
大切なのは、「マネジメント」と「リーダーシップ」をバランス良く発揮することです。現在の部下への関わり方が、マネジメントの三項目、リーダーシップの三項目すべてバランスよく発揮できているかどうか、振り返ってみてください。マネジメントの方に大きく傾いてしまっていたら、リーダーシップの部分の関わりを増やす必要があります。
■個別配慮型リーダーシップ
個別配慮型リーダーシップとは、上司が部下の長所を伸ばせるように手助けしていたり、単なる集団の一員というより、個人として接していたり、部下それぞれが異なる欲求・能力・抱負を持っているものだとして接している状態のことを指します。
①部下の長所を伸ばせるように助ける、②部下一人ひとりが違うニーズ、モチベーション、スキル、キャリア展望を持っていることを頭に入れて接する、③単なる集団の一員としてではなく個人として接する、ということを実行すればよいだけです。これなら、特別な訓練をしなくても、自分の性格を変えなくてもできることではないかと思います。
①部下の長所を伸ばせるように助ける
・ステップ1:部下の長所を見つける
・ステップ2:感謝する・承認する・ほめることで、報酬を与える
ルール1事前に評価基準を伝えておく
ルール2相手が行動を起こした直後にほめる
・ステップ3:期待していることを伝える
②部下一人ひとりが違うニーズ、モチベーション、スキル、キャリア展望を持っていることを頭に入れて接する
・ステップ1:自分の仕事観、仕事へのモチベーション、今後の展望を開示する
・ステップ2:部下が過去に経験したことや考えていたことを聞く
・ステップ3:部下の現在~未来のことを聞く
■ダメ出しの鉄則:3プラス3
①周りに人がいない状態で行う
②ほめられる点・できている点をさっきに伝える
③人格否定をせずに、何をどうしてほしいのか伝える
(a行動の指摘+bなぜそれが問題なのかの説明+cどうしてほしいのかの具体的な説明)
ではどうすればよいかと言うと、部下に直してほしい「行動」を明確に指摘する、なぜそれが問題なのかを補足説明する、どうしてほしいのかを依頼する、の三点セットで行うことが有効です。場合によっては、部下に直してほしい「行動」を明確に指摘する、どうしてほしいのかを依頼する、の二点だけを伝えれば十分な場合もあります。
■パワハラ上司にならないためのポイント まとめ
・「自分と部下は対等な立場にいる同僚同士だ」と言い聞かせる
・運動や筋トレをして、自尊心を高める
・感情知能(自己認識力、自己管理力、社会認識力、関係管理力)を高める
・部下のできていない点が目に付いたら、やり方を知らないのか、②苦手なのか、③何か事情があるのか判別する
・世代によって仕事へのモチベーションは異なることを認識する
・外国人が働きやすい職場にする
・部下の長所を伸ばせるように助ける
・部下一人ひとりが違うニーズ、モチベーション、スキル、キャリア展望を持っていることを頭に入れて接する
・単なる集団の一員としてではなく個人として接する -
Posted by ブクログ
そもそも、パワハラしている人は、自分がパワハラしているという自覚がないのではないかと、思います。
そんな相手に「それはパワハラです!」と言ったところで、相手はきょとんで、なんのことだかわからないということが多いのではないかと思います。
パワハラ気質の人たちには、何か共通点があるのではないかと思っていた時に、この本に出会いました。
どういった人がパワハラに陥りやすいかなど、なるほどと納得することばかりでした。
読みやすくて、おもしろかったです。
おわりが、筆者の3歳と1歳の2人の息子さんに対して「君たちが就職する前の日本では、パワハラがないことが当たり前の社会になっていることを願います。」で締め括られていて、涙をこられるのに必死でした。
ホント社会からパワハラなくなって欲しい。
人の欠点やできていないところを責め立てるよりも、
相手も認められるようになるといいのに。
自分はそうありたいと思います。 -
Posted by ブクログ
強い組織を作るために必要な要素と考えられてきたものが変わってきている。戦中の軍隊の教えがまだ残っているのかもしれないと思う。日本人は特に細かい。寛容さがない。失敗を極端に恐れる。人目を気にする。だからチャレンジできない。チャレンジできないから成長できない。
高校野球を見ていると思う。昔はみんな坊主頭だった。今は長髪のチームも増えた。監督は軍隊の上官のようなキャラが多かった。今は兄貴分のような人が多い。選手は楽しそうではなかった(ヘラヘラ、チャラチャラしてると怒られたのだと思う)。今は笑顔で応援歌を口づさみながら打席に立つ選手もいる。先輩も強かったのだと思う。レギュラーの地位が脅かす後輩に強く当たる先輩もいたと思う。今もライバル関係は残るだろうけどそれなりにお互いをリスペクトできているのではないだろうか。レギュラーになれた子はもちろん一生懸命プレーするし、なれなかった子も一生懸命サポートする。スタンドから応援する。
会社は利益が出なければ存在できない。みんながサボっていては利益は出ない。みんながやりたいことしかやらなくても利益は出ない。高校野球のように、みんながお互いの状況を理解し合って、フォローし合って、感謝し合って、喜びを感じないと難しい。強い人は思いやりや寛容さを持たなければならないだろうし、弱い人はできるだけ組織のためになれることを考えなければいけないのだと思う。
思考や行動の規範となるクレドを定義してみようと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレ職場の上司にすすめられて読んだ本。
タイトル通り「パワハラ上司ってなぜああなるのか?」を科学的に解き明かしていて、めちゃくちゃ納得できた。
ポイントは、パワハラは「性格の悪さ」じゃなくて、脳の報酬システムが暴走したり、組織の仕組みがうまくはまった結果の“脳+環境のガチャ”だということ。
だから「悪い人」と決めつけるより、「ああ、この人の脳は今こんな状態なんだな」と知ると、気持ちが少し楽になる。
自分も「ああ、いるいるこういう上司…」とリアルに感じてしまい、理屈でわかると怖さが半減するのが不思議だった。
結論としては、パワハラ上司のせいにするより、脳と組織のせいにして、自分の心は守りつつ賢く距離をとるのが賢者の選択だと思う。
上司になることがあれば、読んだ方が良さそうな一冊。