鈴木範久のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
.
遅ればせながら、「“名著“と呼ばれている本に取り組もう」と、意識して読むようにしています。
しかしいざ読んでみると、自分の知識レベルが低くて理解できなかったり、文章を読むことそのものに苦労したりと、消化するのに苦労しています。
それでも、「少しでも得られるものがあれば良い」と考え、チャレンジするようにしています。
この本も以前から気になっていたので、岩波文庫版を読むことにしました。
本書は1895年に、英語で書かれた文章が土台になっているようです。
原著の著者、内村鑑三が“代表的日本人”として5名を取り上げて、それぞれがどのような人柄だったのか、どのような事を成し遂げたのかを書いています。
最初に取り上げられているのは、西郷隆盛。
亡くなってからまだ20年も経たない時点で書かれていることもあり、本人に接した人々による詳細なエピソードが複数、紹介されています。
後年の、偶像化された西郷評を読むことが多かったので、本書で(実在の人物として)魅力的な人柄だったということを、知ることが出来ました。
西郷の考えとして紹介されている、「文明とは正義がひろく行われることである」という言葉には、そうあるべきだ/そうであって欲しいと、深く共感しました。
二人目は、上杉鷹山。
三人目は、二宮尊徳。
いずれも、財政的に苦しい状況にあった組織を、再建した人物。
良い仕組みを導入したという面もありますが、推進者自らが徹底して道徳的に振る舞い、組織の規律を整えたという点が強調されていることが、印象に残りました。
四人目は、江戸時代初期の教育者、中江藤樹。
正直、この方のことは初めて知りました。
江戸時代に行われていた教育がどのようなものであったか、知ることが出来ました。
五人目は、日蓮上人。
何を成し遂げたかということ以上に、困難に屈せず自分が信じることを続けたことを、著者が評価している点が印象に残りました。
読み終えて、本書の著者は「日本ではどのような人が、周囲から尊敬を受けるのか」、「その人のどのような資質や振る舞いが、良いとされているのか」といったことを、欧米人に向けて発信したかったのかなと、想像しました。
自らを律し、謙虚に振る舞うこと。
我欲にとらわれず、正しいかどうか(天/神の意思にそっているか)で、自らの行動を選別すること。
書かれてから100年以上が経ち、日本人の道徳観も、変化している部分があるかもしれません。
しかし、この本が書かれた時代に好かれていた人、尊敬されていた人は、現在の日本でも同じような評価を受けるだろうなと思いました。
人生を歩む上で、すべきこと/してはならないことをどう、定義するか。
「道徳」という言葉の持つ意味について、考えさせてもらえた一冊でした。
. -
Posted by ブクログ
内村鑑三先生が5人の代表的日本人を題材に日本人の道徳観を説いた本。外国人向けに日本の思想を紹介した内容であり、偏ったバイアスがないのが良く、日本人が客観的に日本を学ぶのに優れた本である。
以下、中江藤樹より備忘しておきたい一文。
・“学者”とは、徳によって与えられる名であって、学識によるものではない。学識は学才であって、生まれつきその才能をもつ人が、学者になることは困難ではない。しかし、いかに学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない。学識があるだけではただの人である。無学の人でも徳を具えた人は、ただの人ではない。学識はないが学者である。 -
Posted by ブクログ
内村鑑三について知れば知るほど、引き込まれる。
新渡戸稲造と同期だった内村。彼は主席の座を一度も明け渡すことはなかったほどの頭脳の持ち主。
でも、頭脳明晰それだけではない。彼が後世に与えた影響は計り知れなくて、何がそれほどまでに人を引きつけるのだろう。
三年経し 心の傷は癒えやらで
花咲く毎に 痛みつるかな
これは内村鑑三が「不敬事件」の後、亡くなった前妻を想って詠んだ歌で、1899年に詠んだもののよう。不敬事件から35年。
厳しくて、でもユーモアがあって、愛の人だったと言われるけれど、同時に、哀しみを知る人だった。そんな人となりと、その信仰を、この本を通して再認識できた。 -
Posted by ブクログ
信仰の書としてではなく文学作品として聖書をとりあげる。文語訳はその簡潔さとリズムのよさで、日本の言語文化に寄与してきた。中国語訳も経緯しているから漢文調で格調も高く、まるでことわざや故事成語のようだったりもするよね。『風立ちぬ』では「たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害をおそれじ」がひかれ、流全次郎も「一粒の麦、地に落ちて死なずば、ただ一粒にてあらん。もし死なば、多くの果を結ぶべし」と決意を語っていたよね。
だけど文語調の日本語はずっと残っていけるのかなぁ。岩波文庫から文語訳の旧約聖書が出た時、飛びついた身としては、いつまでも残ってもらいたいけど。 -
Posted by ブクログ
うろ覚えだが…ケネディ大統領が尊敬する日本人は誰か、と聞かれて「上杉鷹山です」と答えた、というエピソードがあったらしい。
…上杉鷹山って誰だ?そんなマイナーな人をよく知っているもんだ、さすが大統領は違うと、日本人記者は感心したという。おそらく、ケネディさんはこの本を読んだのだろう。この本は元々内村鑑三が英語で書いた本だからだ。
もっとも、日本人である私にも理解できない部分があり、時代的な差異を感じる。もしかしたら、これを読んだ外国人の方の経験を追体験できたのかもしれない。
この本で紹介されているのは、先の上杉鷹山のほか、西郷隆盛、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5名。それぞれのエピソードが語られる中で、日本人の美徳について語った書物だ。
印象的なのは、結構挑発的な点。外国人に対する劣等感みたいなものを感じる。まぁ、それは現代でも同じか。
また、登場人物が大なり小なり「天」をはじめ何かしらの超越的なものに依拠しているのも印象的だった。何かを成し遂げる時、理屈が邪魔になることはある。彼らには、そういったストッパーはなかったのだと思う。それが大きな功績を成し遂げる一因だったのだろう。
逆に世間体は気にしていた感じがある。気にしなかったのは日蓮上人くらいか。日本人的なもの、と言えば世間的なところ、という風に陰絵的な感じでこの本を読むことも可能かもしれない。
ちょっとダラダラと読んだのは反省。何かしらの視点で持って批評的に読むべき本な感じがした。例えば、当時の日本人的な意識とか、外国人にどう思われたい、とか。
この本自体の評価は難しい。書き手の意識する時代も読み手の対象も違うからだ。大学の頃に読むように言われて10年以上積読状態だったが、何かしらの意図を持って読むという観点からは大人になってから読んでもいいと思う。