鈴木範久のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ついこのあいだ鈴木大拙の『禅と日本文化』も読んだ。こちらも、日本人が日本のことを紹介するために外国語で書いた書物を日本語訳したものである。
江戸時代から戦前あたりまで連綿と続いてきた、いわゆる日本的な文化の底流にある精神に接するにあたって、戦後生まれのわれわれにとってはむしろこのようなアプローチからの方がすんなり入ってくるような気がしないでもない。
この書物が外国の知識人に与えた影響は少なくないのではないかと思う。J.F.ケネディが上杉鷹山を尊敬していたというエピソードは有名だが、おそらくこの本を呼んでいたのではないか。
それにしても、内村鑑三は熱血漢だったのだろうか。文章からその心意気が -
Posted by ブクログ
内村鑑三について知れば知るほど、引き込まれる。
新渡戸稲造と同期だった内村。彼は主席の座を一度も明け渡すことはなかったほどの頭脳の持ち主。
でも、頭脳明晰それだけではない。彼が後世に与えた影響は計り知れなくて、何がそれほどまでに人を引きつけるのだろう。
三年経し 心の傷は癒えやらで
花咲く毎に 痛みつるかな
これは内村鑑三が「不敬事件」の後、亡くなった前妻を想って詠んだ歌で、1899年に詠んだもののよう。不敬事件から35年。
厳しくて、でもユーモアがあって、愛の人だったと言われるけれど、同時に、哀しみを知る人だった。そんな人となりと、その信仰を、この本を通して再認識できた。 -
Posted by ブクログ
信仰の書としてではなく文学作品として聖書をとりあげる。文語訳はその簡潔さとリズムのよさで、日本の言語文化に寄与してきた。中国語訳も経緯しているから漢文調で格調も高く、まるでことわざや故事成語のようだったりもするよね。『風立ちぬ』では「たとひわれ死のかげの谷をあゆむとも禍害をおそれじ」がひかれ、流全次郎も「一粒の麦、地に落ちて死なずば、ただ一粒にてあらん。もし死なば、多くの果を結ぶべし」と決意を語っていたよね。
だけど文語調の日本語はずっと残っていけるのかなぁ。岩波文庫から文語訳の旧約聖書が出た時、飛びついた身としては、いつまでも残ってもらいたいけど。 -
Posted by ブクログ
うろ覚えだが…ケネディ大統領が尊敬する日本人は誰か、と聞かれて「上杉鷹山です」と答えた、というエピソードがあったらしい。
…上杉鷹山って誰だ?そんなマイナーな人をよく知っているもんだ、さすが大統領は違うと、日本人記者は感心したという。おそらく、ケネディさんはこの本を読んだのだろう。この本は元々内村鑑三が英語で書いた本だからだ。
もっとも、日本人である私にも理解できない部分があり、時代的な差異を感じる。もしかしたら、これを読んだ外国人の方の経験を追体験できたのかもしれない。
この本で紹介されているのは、先の上杉鷹山のほか、西郷隆盛、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5名。それぞれのエピソードが -
Posted by ブクログ
西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人について、内村鑑三が書いた伝記的読み物。この本は、新渡戸稲造の「武士道」と同じように、英文で書かれたもので、それが和訳されて逆輸入されたような形になる。
この本が出版されたのは、今からちょうど100年前の1908年。こういう、日本のことを世界に伝える本の需要があったのは、日清戦争、日露戦争が終わった直後で、世界の注目が日本に集まっていた時期だったからだろうと思う。
もし、自分が100年前に生きていて、外国人から「日本というのはどういう国なんだ?」と尋ねられたら、この本をプレゼントしていたかもしれない。
内村鑑三は、「私の貴ぶものは二つのJ