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内村鑑三(一八六一―一九三〇)は、「代表的日本人」として西郷隆盛・上杉鷹山・二宮尊徳・中江藤樹・日蓮の五人をあげ、その生涯を叙述する。日清戦争の始まった一八九四年に書かれた本書は岡倉天心『茶の本』、新渡戸稲造『武士道』と共に、日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表的な著作である。読みやすい新訳。
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Posted by ブクログ
明治時代、日本のキリスト教思想家である内村鑑三が「Representative Men of Japan」として英文で著した本書は、5人の気高い日本人の姿を通して、西欧社会に日本の文化や思想を啓蒙しようとした書物でもあります。 藤原正彦先生の「名著講義」でも取り上げられていた本書は、日本語訳が素晴ら...続きを読むしいこともあり、格調高さと高潔さに溢れています。 西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮が代表的日本人として紹介されており、この5人からは「徳」「志」「信念」といった共通のキーワードが想起されます。 二宮尊徳にピューリタンを、日蓮にルターを重ね合わせたのも、キリスト教徒の内村ならではのユニークな着眼点だと思いました。 日本人として誇らしく、そして心洗われる名著です。
上毛かるたの「こ」 「心の灯台内村鑑三」 群馬県出身でありながらその著書を読んだのは初めてだった。海外に向けて優れた日本人を紹介した本書。 日本人として誇らしい五名を紹介している。 二宮尊徳が特にお気に入り。誠実であること、その素晴らしさを身をもって証明した人物であると感じた。 「尊徳からみて、...続きを読む最良の働き者は、もっとも多くの仕事をする者でなく、もっとも高い動機で働く者でした。」p89 常に志を高く持ってことをなすことは難しい。今、していることは何の意味があるのか考える。そういうとき、強い意志があるものには到底敵わない。己の軸は曲げたくないと心から強く思った。
感想 謙虚な心を持ち、信念を貫く。 そんな姿勢が、本書に描かれている5人の人物からは感じられる。 5人はそれぞれ環境は違うものの、みな広い視野を持って、「この国を良くしよう」と人生を賭けて動いている。 また、そのために自身の身なりや家は質素にして、人に施すことを忘れない。 自分の...続きを読む周りにいる家族や親せき、その他の人を大切にする。 言葉にすると簡単だが、実践し続けることは難しい。 西郷隆盛は身の回りのことは自身で行い、人をとがめず、自力で状況を切り開いた。 上杉鷹山は藩の財政を立て直すため、自身の実入りを極度に減らし、先を見通して産業を育て、見事に藩を復興した。 二宮尊徳は誰よりも長く畑に立ち、わずかな時間でも学び、徳の力をもって、多くの村を救った。 中江藤樹は自身が感動した徳の教えを広め、日々善を積み重ねることの大切さを説いた。 日蓮上人は世の反発に屈せず、信念を貫き、法華経の教えを広めて日本を救おうとした。 何かを変えられる人は、傍から見れば極端で、言い方は悪いが狂ったように見えるものかもしれない。 世の中には反発され、疎まれるかもしれない。 しかし、そうした人間こそが、世の中を変えていけるのだろう。 やや難しい言い回しも多いけれど、ここに描かれている日本人の姿は、今の日本人とは大きく違う。 でも、見習いたいところが多くある。 昨今、働き方改革、ワークライフバランスと、仕事よりもプライベートを大切にしよう、という風潮が盛り上がっているように思う。 しかしながら、それでも人生の長い時間を仕事に費やすことに変わりはなく、その時間こそ、自分が燃えるものに投下したい。 私はそう思う。 ここに描かれている5人の偉人を見習って、私も私にできることで、社会をよくするために時間を費やしたい。
まさに日本人の精神のルーツを学べる教養書。ふせんを何十枚も貼り、何度も読み返した。 私は上杉鷹山の改革が特に気に入っている。身分を問わず礼節を重んじ、自ら節制を示し、教育に注力し、僅かな領土や資源をも最大限活用する。読み終えると、同じ日本人に生まれて何だか誇らしい気分にさえなる。
日本の偉人を海外に紹介した名著。中江藤樹や日蓮などは知らないエピソードも多く、あらためてその精神性や考え方に感銘し、同じ日本人として誇らしく感じた。
日本の歴史的名著の一つ。日本を代表する5人の偉人について、若干の著者の解釈や西洋との比較を交えながら描かれている。強い志や人間としての徳を持った人が歴史上で成し遂げてきたことを知ることができ、また、どんな考え方をしてどのように実行してきたかを知ることができ、勉強にもなる。その中には、事をなす前にまず...続きを読むは徳を持つことの大切さ、人に尽くす、世の中のために尽くすという信念を持って成し遂げてきた経緯を読むことができることから、弱い自分の心の戒めとして何度も読み返す価値のある本だと思った。 二宮尊徳の、最初に道徳があり、事業はその後にあるのである、後者を前者に先立ててはならない、という言葉は印象的であった。また、上杉鷹山の変革は、人の心や行動を改めて藩を立て直していったこと、医療や教育などさまざまな取り組みを行っていたこと、それを19歳に藩主となって若くして成し遂げていったことに強く尊敬を持つ。
新渡戸稲造 「武士道」、岡倉天心 「茶の本」と並ぶ、内村鑑三の、「代表的日本人」 その特徴は、欧米人に向けに、外国語でかかれたものを、和訳したものを改めて出版したものである。 「代表的日本人」は、日清戦争中に、Japan and the Japanese の題で、公刊された書物の再販です。 5名の...続きを読む特徴は、いずれも、貧乏な家庭に生まれ育ち、そこで、人から非難や抵抗をうけて、苦労して大成をなし、人をまとめ上げて和となし、死んでは聖人として称えられる。名や財を求めず、清貧にあるものを、内村鑑三は、代表的日本人と呼んだ。 それぞれ、気になったのは、以下です。 ■西郷隆盛 ・動作ののろいおとなしい少年であった西郷を変えたのは、縁戚の武士が自らの前で腹を切り、「命というものは、君と国とに捧げなければならない」を語ったこと。それを彼は生涯わすれることはありませんでした。 ・西郷に影響を与えた人物、それは、藩主の斉彬と、水戸藩の藤田東湖先生の2人であった。 ・機会を作るのも、それを用いるのも、人である。 ・西郷とは不思議な人で、ヨーロッパ文化というものにまったくの無関心でした。彼の度量が広く、進歩的な人物の教育はすべて東洋によっていました。 ・物事は、一度動き始め、進路さえきまれば、あとは比較的簡単な仕事である。その最初の指導者が西郷隆盛であった。 ・西郷と勝、旧友がいう、我々が一戦を交えると、江戸の罪のない人々が苦しむこととなる。西郷の情が動き、江戸は救われた。 ・強い人は、弱い人が相手でないとき、もっとも強い。西郷の強さの奥には、女性的な優しさがありました。 ・彼が掲げた「敬天愛人」とは、「天はあらゆる人を同一に愛する。ゆえに、我々も自分を愛するように人を愛さなければならない。」ということです。 ■上杉鷹山 ・変革とは他人を待つのではなく、まず自らが始めなければなりません。 ・鷹山の倹約はけちではありません。施して浪費するなかれ、 ・東洋思想の一つの美点は、経済と道徳を分けない考え方にあります。富は常に徳の結果であり、両者は木と実との相互の関係と同じです。 ・鷹山の優れたことは、改革の全体を通じて、家臣を有徳の人へ育てようとしたことである。 ■二宮尊徳 ・仁術さえ施せば、この貧しい人々に平和で豊かな暮らしを取り戻すことができる ・信念:ただ魂のみ至誠であれば、よく天地をも動かす ・利己心はけだもののものだ。利己的な人間はけだものの仲間である。村人に感化を及ぼそうとするなら、自分自身と自分のもの一切を村に与えるしかない。 ・尊徳にとって、あくどい手段で獲得した財産は本当の財産ではありませんでした。 ■中江藤樹 ・天子から庶民にいたるまで、人の第一の目的とすべきは、生活を正すことにある ・藤樹の理想とは、謙譲に徹することでした。仏陀はそれにかなう人ではなかったのです。 ・藤樹は、弟子の徳と人格とを非常に重んじ、学問と知識を著しく軽んじました。 学者というのは、徳によって与えられる名であって、学識によるものではない。 学識は学才であって、生まれつきその才能を持つ人が、学者になることは困難ではない しかし、いかに、学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない 学識があるだけではただの人である 無学の人でも徳を備えた人は、ただの人ではない 学識はないが学者である ・先生は利益をあげることだけが人生の目的ではない。それは、正直で、正しい道、人の道に従うことである。とおっしゃいます ・藤樹によって謙譲の徳とは、そこから他の一切の道徳が生じる基本的な道徳でした。これを欠けば一切を欠くにひとしくなります ■日蓮上人 ・すでに「末法」が世に到来していること、新しい世をもたらすためには、新しい信仰が必要であり、その機会が到来していることを深く確信しました。 ・預言者故郷にいれられず、といわれます ・私はとるにたらぬ、一介の僧侶であります。しかし、法華経の弘布者としては釈尊の特使であります。それゆえ梵天は我が右に、帝釈天は我が左に合って私を守り、日天は私の先導となり、月天は、私にしたがいます。我が国の神々はすべて頭をたれて私を敬います。 ・日蓮の大望は同時代の世界全体を視野に収めていました。仏教はそれまでインドから日本に東に進んできましたが、日蓮以後は、日本からインドへ西に向かって進むと日蓮はいっています。 ・闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教家であります。 目次 凡例 はじめに 1 西郷隆盛 新日本の創始者 2 上杉鷹山 封建領主 3 二宮尊徳 農民聖者 4 中江藤樹 村の先生 5 日蓮上人 仏僧 ISBN:9784003311936 出版社:岩波書店 判型:文庫 ページ数:256ページ 定価:780円(本体) 発売日:1995年07月17日第1刷 発売日:2021年05月27日第46刷
内村鑑三先生が奔流のように押し寄せる西欧文化の中で、どのような日本人として生きるべきかを模索した書です。
内村鑑三が英語で日本の文化・思想を西洋社会に紹介した名著 西郷隆盛、上杉鷹山,二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人が記されている。
「同僚たちが立ち止まろうとしたところを、西郷は出発点とみなしていた」 「その時できた膝のあざをそうっと眺めるのが常であった。これは尊師が私に残した警告である。これを見るたびに自分を省みて自己と民とに誠実であるかと問う戒めとしている。しかし、残念ながらあざは歳を取るごとに色薄れ、それに従い私の慎みも薄...続きを読むれている」 「鷹山の産業改革の全体を通じて特に優れている点は、産業改革の目的の中心に家臣を有徳な人間に育てることを置いたところです」 「尊徳は伯父の怒るのはもっともと考え、自分の油で明かりを燃やせるようになるまで勉強を諦めました」
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