丸山健二のレビュー一覧
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自分が思い描く理想があったとして、それは現実と地続きな平面の先にあるはずだ。しかし、道は曲がりくねり一方通行となり行き止まりとなる。引き返し、振り返れば、最初の理想はすでに形を変え、遠い追憶の彼方だ。形を変えた理想は今の現実に干渉し、奇形の理想を最初の理想と同一視する錯覚に陥らせる。折り合いをつけられれば幸せ。つけられなければ世界から疎外される。それを従属というのは悲しすぎるけれど、いっそ破滅というのはあまりに文学的すぎる。
「夏の流れ」が23歳で書かれたというのは驚愕に値する。芥川賞受賞はどうでもよいが、23歳でなぜこのディテールが描けるのか?いったいどういう天才なのか。死と生の交わる中、己 -
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ネタバレ先週読んだ山口果林著「安部公房とわたし」に、
他人の作品を滅多に褒めない安部が珍しく感動し、
わざわざ出版社から著者自宅の電話番号を聞いて
賞賛の電話をしたところ、
丸山健二から「誰ですか、あなた?」と言われて気分を害した、
と書いてあったので、“孤高の作家”丸山健二を読んでみることに。
丸山健二っていうと、映画にもなった「ときめきに死す」が有名だけど・・・
1966年に芥川賞を取った「夏の流れ」。
80数ページの短編というか、中編というか。
刑務官の話で、主人公を含めた中堅刑務官2人と、若手刑務官との話。
若手刑務官は、まだ死刑囚を死刑台に送ったことがない。
初めてそうする場面での、主人 -
Posted by ブクログ
自然のなかでのできごとや、釣りや猟など自然と対する内容の作品が多いのに、海や川に瓶やモノを投げ捨てる描写が頻出するのが気にかかった。猫だってあっけなく殺してしまうし。
例えばヘミングウェイの鱒釣りに関する小説のような、自然に対するあたたかい眼差しのようなものは見当たらない。
まあ、だいたいが主人公は都会育ちで自然にあまりなじめないような人間として描かれてるから、それはいいのだけれど。茂木健一郎の解説にあるように、時に暴力をふるい、自然に美をもたらし管理することを意識的にか無意識的にか作者が志向しているのであるとすれば、僕はその考えにあまりなじめそうにない。
>ふたりは病院を出、国道を