会田弘継のレビュー一覧
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200ページ強の大冊だが、リベラリズムの発展経緯を細かに述べている.新自由主義・ネオリベラリズムの登場による経済格差の顕在化を憂いているが、それ以上の現代のアメリカの状況を危惧していることに驚いた.数多くの著書や文献に目を通して、自説の補強に絶え間ない努力をされている姿勢に感心した.ロシアや中国、ハンガリーなどの権威主義体制も批判しているが、言論の自由の保護が世界的に危ういものになりつつあることへの警告も発している.p125にあった「トランプをはじめとする現代の保守派が彼らが忌み嫌うポストモダニズムの理論を一言でも読んでいることはありえないが..」のフレーズは我が国の自民党の輩にも与えたい語句
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「アメリカ政治は左右の分断ではなく上下の分断であり、文化戦争が上下の分断の偽装の道具につかわれている」
アメリカでトランプが再選したのは、アメリカ国民のリベラル疲れと言われていた。そうなのか、程度に思っていたが、本書でアメリカの状況を知ると、想像以上にリベラル的状況になっていた。例えば、ポリコレによるキャンセルカルチャーが一流メディアが白と言っていたものを黒に変えさせたりしていた。これは、反対勢力に対する攻撃ではなく、リベラルの内部統制のような行いであった。
ニューヨークタイムズの自己批判である白を黒に変えさせた経緯は公になっており、その経緯を見た人がポリコレに嫌悪感を感じたのも民主党 -
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著者は元共同通信の編集委員。
題名となった問いに対しては、断定をする表現を避けこれまで見たことがない現象が現在進行系だとする。
その現象、すなわちトランプ現象はトランプ自身が作り上げたものではない。アメリカの根底にある新自由主義(ネオリベラリズム)、つまり資本主義が途方もない経済的格差を生み出したことが今起きていると説く。
民主党vs共和党の政権構図も実際には横並びではなく、富める者vs貧しい者の構図になっており、エリートへの反発のマグマが沸点を迎えるところにトランプが出現したと解説する。大分端折ってしまったが、文中ではアメリカの政治思想史を丹念に記す。
現政権にあるのは冷えたポリシーではなく -
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トランプが最初に大統領に選ばれたときは、彼がどういう政策をやるのか、みんながわかっているわけではなかった。だが、彼の4年間をみて、さらに支持者が国会に傾れ込む姿を見て、これでトランプは終わったかと思ったら、再び大統領として復活した。
となるとトランプは、なぜ選ばれたのかをちゃんと理解しないわけにはいかない。
トランプは、これまでの共和党の基本戦略、キリスト教的な伝統的な価値観を社会政策的にアピールしつつ、経済的には新自由主義的な政策を推進するという大きなパターンの中にあるものと考えていた。この社会政策と経済政策の組み合わせは一見変なのだが、アメリカの基本理念やプロテスタント的な価値観で一人 -
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アメリカの保守層は、従来「小さい政府」と規制緩和を主張してきたが、このコロナ禍で「大きな政府」に傾き出している。「政府は解決をもたらすものではない。政府こそ問題だ」(レーガン大統領)「大きな政府の時代は終わった」(クリントン大統領)。共和・民主両党で近年最も人気がある二人の大統領の言葉にも象徴される「小さな政府」を掲げる時代は、いよいよ終わりを迎える気配だ。
トランプは自由貿易と対外軍事介入を否定し、一方で「大きな政府」によって社会保障の維持を約束する、まさにレーガン主義を反転させた選挙公約を打ち出した。こうした公約は特に高校卒業以下の低学歴の白人男性を引きつけ、これが中西部の「ラストベルト」 -
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トランプ以前の米国政治は民主共和両党の政策は大差なく、支配階層にとってはどちらの政権でも構わなかった。そして支配階層の望み通りに格差拡大していった。白人労働者階級は平均寿命が低下するほど困窮し、自暴自棄になっていた。
そうした白人労働者階級の不満に応えたのがトランプであり、若者の支持を集めたのがサンダースだった。
つまり、トランプとサンダースは支配階層へ反乱者の受け皿。日本では長らく米国支配階層視点のメディアによる米国政治解説がなされてきたので、トランプ政権誕生時にはトランプ支持者への理解が不十分だったが、陰謀論にハマる愚か者が有権者の半分も占めるわけもない。
米国社会の格差と絶望がトランプを -
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トランプ大統領は、原因ではなく結果なのだ。トランプ関税やウクライナ・イスラエル等への外交姿勢、マイノリティに対する差別やヘイトスピーチなど、世界中に大混乱をもたらすトランプ政権が誕生した歴史的経緯を紐解いた内容となっている。
いまのアメリカ合衆国では、絶望的なまでの経済的格差が党派による分断を深くしている。単なる泡沫候補だったトランプは、民主党から共和党に鞍替えして白人労働者の中間層の代弁者となっていく。それまでの共和党は、WASPに代表される東海岸の資本家によって支えられてきた保守政党であったが、産業構造が変わって金融やITが台頭してくる中で、党勢が脅かされていく。
一方の民主党は、クリ -
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トランプ大統領は、今米国で起きている分断、民主主義の危機の原因ではなく、その結果だ。
その通りだと思う。
意識高い、あるいは、思惑のある左側エリートさん中心に大騒ぎしているが、要は、そう言う人たちの綺麗事にまとわりつく利権、権力構造への嫌悪が、トランプ大統領という核に集まって溢れ出てしまった。
ちょっと怪獣8号みたい。
金持ちと貧乏人ばかり優遇されて、中間層はそのために搾取されている。
それはいいんだが、同じことばかり言葉変えて言っとるなあ、と思ったら、やはり過去の論説集という体裁だった。ガチの論証だと思うんだが、そこまで固い文章を長く読みたいわけではないので、本気で分析したい方はじっ -
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Posted by ブクログ
アメリカの政治学者フランス・フクヤマによる、古典的リベラリズムを擁護する本。リベラリズムを「人道的な自由主義」と呼び、「法の支配」による自由主義であり「寛容」が基本原則であると主張している。右派による新自由主義に基づく格差の拡大やポピュリズム、左派によるアイデンティティ政治や個人の自律の極端化を批判している。理解の難しい箇所もあるが、勉強になった。
「新自由主義経済学の欠陥は、財産権や消費者利益を崇拝し、国家の活動や社会的連帯をあらゆる面で軽視したことであった」p67
「近年、アメリカでは「批判的人種理論」をはじめ、エスニシティ、ジェンダー、性選好などに関する批判理論をめぐって、騒がしい争い -