会田弘継のレビュー一覧

  • リベラリズムへの不満

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    リベラルとは何か、に関する本は様々手にしたが、今日的な右派と左派の対立現実と双方の思想的特質が明瞭に結びつけられており、もやもやしていた分かりにくさが払拭された。
    普遍的真理の尊重ととアイデンティティ政治の確執が、世界の分断に大いに影響を与えている。また、そのベースにメディア、データの氾濫という要素があることも見逃せない。
    こうした複合的な大衆の危機に、バランスの取れた視野であるべき向き合い方を示してくれる名著。

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    2023年10月06日
  • リベラリズムへの不満

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    200ページ強の大冊だが、リベラリズムの発展経緯を細かに述べている.新自由主義・ネオリベラリズムの登場による経済格差の顕在化を憂いているが、それ以上の現代のアメリカの状況を危惧していることに驚いた.数多くの著書や文献に目を通して、自説の補強に絶え間ない努力をされている姿勢に感心した.ロシアや中国、ハンガリーなどの権威主義体制も批判しているが、言論の自由の保護が世界的に危ういものになりつつあることへの警告も発している.p125にあった「トランプをはじめとする現代の保守派が彼らが忌み嫌うポストモダニズムの理論を一言でも読んでいることはありえないが..」のフレーズは我が国の自民党の輩にも与えたい語句

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    2023年10月03日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    「アメリカ政治は左右の分断ではなく上下の分断であり、文化戦争が上下の分断の偽装の道具につかわれている」

     アメリカでトランプが再選したのは、アメリカ国民のリベラル疲れと言われていた。そうなのか、程度に思っていたが、本書でアメリカの状況を知ると、想像以上にリベラル的状況になっていた。例えば、ポリコレによるキャンセルカルチャーが一流メディアが白と言っていたものを黒に変えさせたりしていた。これは、反対勢力に対する攻撃ではなく、リベラルの内部統制のような行いであった。

     ニューヨークタイムズの自己批判である白を黒に変えさせた経緯は公になっており、その経緯を見た人がポリコレに嫌悪感を感じたのも民主党

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    2025年08月18日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    著者は元共同通信の編集委員。
    題名となった問いに対しては、断定をする表現を避けこれまで見たことがない現象が現在進行系だとする。
    その現象、すなわちトランプ現象はトランプ自身が作り上げたものではない。アメリカの根底にある新自由主義(ネオリベラリズム)、つまり資本主義が途方もない経済的格差を生み出したことが今起きていると説く。
    民主党vs共和党の政権構図も実際には横並びではなく、富める者vs貧しい者の構図になっており、エリートへの反発のマグマが沸点を迎えるところにトランプが出現したと解説する。大分端折ってしまったが、文中ではアメリカの政治思想史を丹念に記す。
    現政権にあるのは冷えたポリシーではなく

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    2025年08月04日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    ちょっと右寄りな本。でも日本では破茶滅茶無鉄砲としか報道されてないトランプの裏側?(表側?)の思想とか、アメリカの政治と思想の歴史的な移り変わりとかとても新鮮で楽しかった。何よりアメリカの政治ニュースを見るのが面白くなった。

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    2025年07月02日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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     米国の政治はしばしば振り子のように揺れる。理想や多様性を掲げるリベラルが進めばその反動として保守が勢いづく。トランプ氏の言動は過激で分断を招くと批判されるがそれでもなお支持は根強い。
     背景には置き去りにされたと感じる人々の怒りと不安がある。グローバル化やIT化が進む中で失業や格差に直面した彼らは「アメリカを再び偉大に」と訴える声にすがった。良識を重んじる声があれど感情に訴える言葉は時に理を超える。民主主義とは耳を傾けるべき声の多様さを映す鏡なのかもしれない。

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    2025年05月05日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    感想、国破れて山河あり。

    元の杜甫の春望よりも、やはり芭蕉の感覚の方が、気持ちは近い。どこか旅先の余韻が、ピッタリだ。それでいて戦った自覚は全くないのに、負けていたと、感じてしまった。

    冷戦終結時、我々近代国家の数十億人は、負けたのだ、と。アメリカ人も含めて。

    世紀末に大転換が来るかと思っていたその十年前に、そう思っていたその時、既に負けていたか。小次郎負けたりって感じだったんかな。

    外部性、その圧縮率の比率が、全く質の転換を起こしたのだろうかな。前後の履き違えからくる、チグハグさは、これからもかなり続くのだろうな。

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    2025年03月28日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    トランプが最初に大統領に選ばれたときは、彼がどういう政策をやるのか、みんながわかっているわけではなかった。だが、彼の4年間をみて、さらに支持者が国会に傾れ込む姿を見て、これでトランプは終わったかと思ったら、再び大統領として復活した。

    となるとトランプは、なぜ選ばれたのかをちゃんと理解しないわけにはいかない。

    トランプは、これまでの共和党の基本戦略、キリスト教的な伝統的な価値観を社会政策的にアピールしつつ、経済的には新自由主義的な政策を推進するという大きなパターンの中にあるものと考えていた。この社会政策と経済政策の組み合わせは一見変なのだが、アメリカの基本理念やプロテスタント的な価値観で一人

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    2025年02月06日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    トランプは病因ではない、病状なのだ。原因ではない、結果なのだという。
    時代がトランプ大統領を生んだのか。

    何が真実かわからなくなっている現代、もしかしたら日本の報道が、トランプを悪人に仕立て上げているのかもしれない。

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    2025年01月28日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    アメリカの保守層は、従来「小さい政府」と規制緩和を主張してきたが、このコロナ禍で「大きな政府」に傾き出している。「政府は解決をもたらすものではない。政府こそ問題だ」(レーガン大統領)「大きな政府の時代は終わった」(クリントン大統領)。共和・民主両党で近年最も人気がある二人の大統領の言葉にも象徴される「小さな政府」を掲げる時代は、いよいよ終わりを迎える気配だ。
    トランプは自由貿易と対外軍事介入を否定し、一方で「大きな政府」によって社会保障の維持を約束する、まさにレーガン主義を反転させた選挙公約を打ち出した。こうした公約は特に高校卒業以下の低学歴の白人男性を引きつけ、これが中西部の「ラストベルト」

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    2024年12月27日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    トランプ以前の米国政治は民主共和両党の政策は大差なく、支配階層にとってはどちらの政権でも構わなかった。そして支配階層の望み通りに格差拡大していった。白人労働者階級は平均寿命が低下するほど困窮し、自暴自棄になっていた。
    そうした白人労働者階級の不満に応えたのがトランプであり、若者の支持を集めたのがサンダースだった。
    つまり、トランプとサンダースは支配階層へ反乱者の受け皿。日本では長らく米国支配階層視点のメディアによる米国政治解説がなされてきたので、トランプ政権誕生時にはトランプ支持者への理解が不十分だったが、陰謀論にハマる愚か者が有権者の半分も占めるわけもない。
    米国社会の格差と絶望がトランプを

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    2024年09月02日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    内容としては、タイトルのテーマに沿ったまとまりのある論評·分析ではなく、この数年の間に書かれた論文(評論)を寄せ集めたものなので、重複も多く、中にはトランプと無関係のものもあった。しかし、アメリカの二大政党の変遷と施策について、多くのことを知ることができ、大変興味深く読んだ。まさに自分が、「トランプの奇矯な行動ばかりに気をとられると、その底流で起きている現象を見落としてしまいがちだ」という状況に陥っていたことを認識し、「幸福な国はトランプを大統領に選んだりしない。絶望している国だから選んだのだ」という説明に、深く納得した。

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    2024年08月29日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    なぜトランプがこんなに支持され続けるのか、その答えと思われるのもが提示されている。
    民主党の政策による中間層の没落と、ネオコンの覇権主義の失敗、伝統的なアメリカ第一主義の復活。

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    2025年11月06日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    すごく興味を持って読み始めたけど、私には難しく、リタイヤしました。でも、もう一度 チャレンジしたいと思います。

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    2025年09月19日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    トランプ大統領は、原因ではなく結果なのだ。トランプ関税やウクライナ・イスラエル等への外交姿勢、マイノリティに対する差別やヘイトスピーチなど、世界中に大混乱をもたらすトランプ政権が誕生した歴史的経緯を紐解いた内容となっている。

    いまのアメリカ合衆国では、絶望的なまでの経済的格差が党派による分断を深くしている。単なる泡沫候補だったトランプは、民主党から共和党に鞍替えして白人労働者の中間層の代弁者となっていく。それまでの共和党は、WASPに代表される東海岸の資本家によって支えられてきた保守政党であったが、産業構造が変わって金融やITが台頭してくる中で、党勢が脅かされていく。

    一方の民主党は、クリ

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    2025年04月15日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    トランプ大統領は、今米国で起きている分断、民主主義の危機の原因ではなく、その結果だ。

    その通りだと思う。
    意識高い、あるいは、思惑のある左側エリートさん中心に大騒ぎしているが、要は、そう言う人たちの綺麗事にまとわりつく利権、権力構造への嫌悪が、トランプ大統領という核に集まって溢れ出てしまった。

    ちょっと怪獣8号みたい。

    金持ちと貧乏人ばかり優遇されて、中間層はそのために搾取されている。

    それはいいんだが、同じことばかり言葉変えて言っとるなあ、と思ったら、やはり過去の論説集という体裁だった。ガチの論証だと思うんだが、そこまで固い文章を長く読みたいわけではないので、本気で分析したい方はじっ

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    2025年03月17日
  • それでもなぜ、トランプは支持されるのか―アメリカ地殻変動の思想史

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    著者はあとがきで、トランプ支持者が多数派の今のアメリカについて、

    ー 一種の言葉の意味の転倒が起きているのだ。それによって、これまでの常識が通じなくなっている。そのような事態を普通、「革命」と呼ぶ。

    と、言っている。

    そういうことなのだ。

    日本でも、たぶん「革命」は静かに進行している。

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    2025年02月06日
  • リベラリズムへの不満

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    リベラリズムの理想は叶えられていない部分もあり、
    そこを左右から攻撃されているのが今。
    攻撃によって分断が進むのだから、とにかく不毛……

    次の大統領選に関する報道を見ていて、アメリカどうなっちゃったんだと思っていたので、右派の行動原理について理解が深まったのはよかった。

    言論の自由を加速させる装置かのように思われたインターネット、SNSが、そうではない方向に進んでいるのが現代の大きな問題。

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    2024年01月28日
  • リベラリズムへの不満

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    アメリカの政治学者フランス・フクヤマによる、古典的リベラリズムを擁護する本。リベラリズムを「人道的な自由主義」と呼び、「法の支配」による自由主義であり「寛容」が基本原則であると主張している。右派による新自由主義に基づく格差の拡大やポピュリズム、左派によるアイデンティティ政治や個人の自律の極端化を批判している。理解の難しい箇所もあるが、勉強になった。

    「新自由主義経済学の欠陥は、財産権や消費者利益を崇拝し、国家の活動や社会的連帯をあらゆる面で軽視したことであった」p67
    「近年、アメリカでは「批判的人種理論」をはじめ、エスニシティ、ジェンダー、性選好などに関する批判理論をめぐって、騒がしい争い

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    2023年09月04日
  • リベラリズムへの不満

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    リベラリズムへの不満から、社会の分断が進んでおり、民主主義の破壊に向かいつつある。
    そのリベラリズムへの不満について分析されている。個人の自律が行き過ぎた結果、ネオリベラリズムによる富の極端な偏在をもたらし、リベラリズム自体を損なう結果となった。
    多様性を受け入れつつ、富の偏在を是正する政治が求められる。

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    2023年07月19日