アメリカの政治学者フランス・フクヤマによる、古典的リベラリズムを擁護する本。リベラリズムを「人道的な自由主義」と呼び、「法の支配」による自由主義であり「寛容」が基本原則であると主張している。右派による新自由主義に基づく格差の拡大やポピュリズム、左派によるアイデンティティ政治や個人の自律の極端化を批判している。理解の難しい箇所もあるが、勉強になった。
「新自由主義経済学の欠陥は、財産権や消費者利益を崇拝し、国家の活動や社会的連帯をあらゆる面で軽視したことであった」p67
「近年、アメリカでは「批判的人種理論」をはじめ、エスニシティ、ジェンダー、性選好などに関する批判理論をめぐって、騒がしい争いが起きている。現代の批判理論家は、じっくりと議論する真面目な知識人であるというよりも、大衆受けを狙った政治主張をしているだけであり、批判理論に対する右翼の批判者(大多数は批判理論について一切読んだことがない)はさらにたちが悪い」p93
「個人主義は、東アジアや南アジア、中東、サハラ以南のアフリカにおいては、ヨーロッパや北米と同じように根付くことはなかった」p96
「福祉国家や社会保障の諸制度は19世紀後半から大きく発展し、多くの自由民主主義先進国では、GDPの半分近くを費やすまでになった」p103
「リベラルな個人主義は西洋文明の偶然の歴史的副産物かもしれないが、いったんそれがもたらす自由に触れれば、さまざまな文化の人々にとって非常に魅力的であることが証明された」p105
「チェック・アンド・バランスは、独裁的な権力の乱用を防ぐために存在する。中国では憲法上の制約がないため、鄧小平の改革だけでなく、毛沢東の大失敗である大躍進政策と文化大革命も可能になった。チェック・アンド・バランスの欠如は、今日の習近平の独裁中央集権化を促進させている」p110
「極左は国家主義者ではなく、アナーキストであることが多い」p165