齋藤可津子のレビュー一覧
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前作「三つ編み」では、同じ時を生きるイタリア・インド・カナダの女性たちの人生を、まさに三つ編みのように交差させて描いていたが、今作は、フランスの同じ場所を舞台に別の時代を生きる女性たちを描いている。
それぞれ横軸と縦軸で紡ぐ物語。
その切り取り方がすごい。
100年ほど前、救世軍の創成期の頃に幾多の困難を乗り越え、女性のための居場所を造った女性ブランシュと、現代に生きるバーンアウトしてしまった敏腕弁護士ソレーヌ。自分を含め女性が抱える困難に寄り添い、立ち向かう二人の女性の生き方に、諦めずに進めと言われているような気がする。
救世軍は、年末になるとターミナル駅などで募金を募る「社会鍋」を、子 -
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「三つ編み」や今作、「82年生まれ、キム・ジヨン」などの所謂フェミニズム文学に弱い。共感と、連帯感。
私自身女性として生きてきて、女性ならではの生きにくさを感じることがあるけれど、特にレティシア・コロンバニの作品に描かれる女性たちの人生というのはとても過酷で、同じ世界・同じ時代に生きているとは信じられないほど。
偶々生まれた環境が違うだけ・偶々ボタンを掛け違えただけでここまで違ってしまう人生に、罪悪感のようなものを感じてしまう。なにか自分に出来ることがあればしたいけれど、無力な自分に何ができるのか、そこまでの責任が負えるのかと思うと、躊躇してしまうー 今作の主人公の一人、ソレーヌの気持ちがとて -
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パリの女性会館。現在と過去、二人の女性の苦闘。現在のソレーヌ、女性会館で代書人のボランティアをすることになる。100年前、救世軍のブランシュは女性・子供を救う施設を作る。ソレーヌは自分とは違う境遇の女性たちに最初は戸惑うが、代書を通じて心を通じ合わせる。ブランシュは病気であっても女性のために奮闘する。
ブランシュの方は女性会館ができるまで、ソレーヌの方は、うつ状態を脱し、自信を取り戻し、立ち上がるまで。タイプは違うが二人の強さが描かれる。二人の物語でもあるが、現在のところで描かれる女性会館に登場する女性たちも、私に、読者にエールを送る。様々な境遇で戦う女性たち。どの女性もなんと力強かったことか -
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Posted by ブクログ
ある事情を抱えて、インド南部の村へ逃避行したフランス人女性(元英語教師)が、不可触民の子どもたちのための学校を作るお話。
インドのエネルギッシュさや伝統的な習慣の美しい描写のほか、今なお続くカースト差別、児童労働、児童婚、忌み嫌われる不可触民であるのに女性が襲われるという逆説の事実。
不可触民の差別から脱するために、ヒンドゥー教からキリスト教に改宗しているくせに、伝統的な価値観に則って12歳の少女を結婚させようとする養父母。赤色と金色の美しい布に刺繍が施されたきらびやかな婚礼衣装を纏う少女の悲しみ。
「新妻は家族と別れ、夫の家族と同居し、その所有物となる。」所有物、という単語を人に使うことの意 -
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ネタバレ登場人物が多くて、誰が誰だかよく分からないままだった(登場人物リストがあって助かった)。全て透明な家は絶対に住みたくはないけど、SNSで私生活を発信したり気軽に写真を撮られて拡散されたりする現代は、考えようによっては透明都市で、2050年の仮想の都市ではあるがとてもリアルな設定だった。透明で全てが見えるからこそ、見た人たちを隠蔽して、皆だんまりを決め込むのも、狂ってはいるけれどもこのまま社会がそのようになっていくのかも。どうしてルーを犯人に仕立て上げたのか、ニコがどうしてエレーナを出し抜いたのか(振られたから?そんなにいい感じでもなかったけど)、謎解きパートは分かりにくかった。
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