齋藤可津子のレビュー一覧

  • 彼女たちの部屋

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    パリ、女性会館という場所で現代と100年前が行き交う。女性が安心して眠れる場所に生涯を捧げた女性と、100年後のその場所で人生に再び意味を取り戻す女性。
    書くこと、報われること、この場所から始まっていくこと。読みやすい文章の中に情熱の灯り、時を越えた女性たちへのエール。


    物語の中にパリの貧困の現状、女性を取り巻く窮状が頑とした意志で書かれていたのがよかった。同じ女性であっても境遇が違えば見えないものはこんなにあって、いつ立場がひっくり返るかもわからない。
    女性が女性に「気づく」物語でもあり、境遇の差を越えた連帯と友情、人生賛歌でもある。
    とても好き。

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    2020年08月04日
  • 三つ編み

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    諦めない 努力し続ける
    環境によってここまで人は追い詰められるのか
    でも環境を変えようとしないことには始まらない
    まず決断する

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    2025年06月21日
  • 透明都市

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    逆パノプティコンのような相互監視社会。
    行き過ぎた潔癖性。
    悪いと思ってるから隠すんだよね、ってずっと言われてるような得体のしれない針で刺されてる気分。

    開かれた社会が本当に人々の幸福を作っていくのか、形骸化した彩りのない多様性って感じ。

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    2025年05月19日
  • 彼女たちの部屋

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    ネタバレ

    映画のノベライズを読んでいるような、独特な描写が続く一冊。そのため感情移入はしずらく、傍観者という感覚になる。

    100年前、貧しい女たちの為に立ち上がり戦い続けた貴族の令嬢と、同じように恵まれた階級に生まれながら貧しい女たちの存在を知らずに生きてきた現代の女性。
    2人の物語が交互に語られるが、面白いのは過去の志が現代に引き継がれる構造ではないということ。

    現在を生きる恵まれた女であるソレーヌが、ふとした運命の悪戯によってそこから転落し、自らが恵まれていたが故に傲慢であったことに気づく。
    そして今まで「貧しい女」「苦労している女」と無意識に一段下に見ていた女性たちと自分に何ら変わりはないのだ

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    2025年03月31日
  • あなたの教室

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    私自身、生まれてからこれまで何度「どうして女に生まれてしまったんだろう」と考えたか分からない。なのに、もっと苦しい状況に置かれている女たちがいる。そのことに絶望する。
    いったい、彼女たちにとって知識は救いなのだろうか。

    何も知らず置かれた仕組みの中で淡々と生を終える事と、外の世界がある事だけを知りながら逃れられない檻の中で生きる事。どちらが幸せなのか。いつもいつも考えて、わからないと思う。
    何も知らずに一生を終えた沢山の彼女たちが不幸であったと決め付けたくは無い。けれど、一人でも多くの若い彼女たちが自らの選択で人生を歩めるような時代が来て欲しいとも思う。

    読んでいて映画のシーンが浮かぶよう

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    2025年03月30日
  • 滅ぼす 下

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    物語後半で展開されるのは人生の不条理劇。解明しようとしてたサイバーテロ攻撃も父が残した謎も大統領選もこれ以上進展がのぞめない。なぜならポールは口腔癌によって「滅ぼされる」から。
    自分はまだ重い病気に罹ったことがないから、癌の告知、治療の選択、家族へ知らせる過程等をポールと共に追体験した。嘘つくまではいかないが言うべきことを妻に言わなかったりセカンドオピニオン受けて治療法を天秤にかけたりと、細部にリアリティがあってこんな感じなのかーとしみじみ思った。
    やっぱり、妻であるプリュダンスとパートナー関係が修復できてるのが今までのウエルベック作品と異質だと思う。
    知人とも話したけど、ウエルベック年々作風

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    2025年03月19日
  • 三つ編み

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    交互に進行する3人の大きな決意の物語が
    徐々に1つの束、三つ編みになっていく。

    インド、イタリア、カナダ
    国も文化も言語も異なる見ず知らずの3人が
    それぞれがそれぞれの「女性」としての人生の
    新たな一歩を踏み出していく。

    同じ地球の別の場所で自分と同じ「女性」が
    どこかで同じくそれぞれの壁を乗り越えている。
    必ず苦悩も希望も分かち合える。
    自分は1人ではないと信じさせてくれる作品。

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    2025年03月13日
  • 彼女たちの部屋

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    ネタバレ

    映画のシナリオ的な文章で読みやすく、映像も浮かぶ。挫折した主人公がこれまで知らなかった世界・人々とのかかわりを通して変わっていく様に、世界の豊かさを見る。職業人としての自分の価値は相対的なものでもあるが、個人の本当の価値はそうではない。主人公が、手編みのニットを値切ろうとした人に怒りを覚えたシーンが印象的だった。怒りは大事にしたいものを守ろうとする感情であり、あのときソレーヌは編み女の手編み服に、大きな価値を見いだしていた。それは、編み女が編んでいた姿を見ていたからであり、編み女を個人的に知っていたから。

    世界ではつねにそれぞれの人がそれぞれの仕事をしている。今は嘆き悲しむことしかできない人

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    2025年02月13日
  • 滅ぼす 上

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    いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
    序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
    ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
    一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな

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    2025年01月21日
  • 三つ編み

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    今年(2024年)読んだ中で一番よかった。
    国も文化も異なる3人の女性が三つ編のように絡まり、繋がるお話。
    インド編のスミタのお話には続編もあるらしく読みたい。幸せになってほしい。

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    2024年12月21日
  • 三つ編み

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    12月にして、今年最高の作品と出会えたかもしれない。
    インドの不可触民、イタリアの自営業の娘、カナタの有能な弁護士。地理も社会的立場も年齢も全く違う3人の女性の物語が、「三つ編み」をテーマに交差する。
    人生の試練に直面したとき、この小説を読み返して力を貰いたい。

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    2024年12月09日
  • 滅ぼす 下

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    少しだけ未来、フランス大統領選と同時並行して起こる、不思議な出来事。
    それは主人公ポールの公私に広がる。

    ポールの見る夢、時には白日夢に近い空想……暗示なのか深層心理なのか。

    ネットという怪物
    拡散というパワー
    妄信という暗黒
    これまでの経験からくる未来への安心感が、ガタガタと音を立てて崩れていく、「滅ぼす」という行為。

    恐らく、現代フランス社会の歪みをもう少しだけ理解していて読んだなら、この本の出来事がもう少し現実的に感じたであろう。

    最後は「愛」……
    「私たちには素敵な嘘が必要だったの」
    ……

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    2024年11月19日
  • 滅ぼす 下

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    初ウェルベック。
    多彩なテーマも、ラスト近くになり俄然、性と死、そして看取りの話に収斂していく
    では大統領選やテロは何だったのか、ってことにはなるが、人間の社会や人の一生なんてそんなもの。
    大枠の理解などできないまま死んでいく。

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    2024年11月04日
  • 滅ぼす 下

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    ウェルベックの新作。上下巻それぞれ300ページを超える長編だが、ほとんど一気読み。少なからず消化不良のストーリーではあるのだが、高度テクノロジー時代のテロに始まり、生と死、人工受精が普通になった近未来における原始的なセックスの意味などを描いて読ませる。『素粒子』『プラットフォーム』の上、『服従』『地図と領土』の下くらいか。

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    2024年11月02日
  • 滅ぼす 上

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    初めてのミシェル・ウェルベック
    惹き込まれる。
    大統領選を補佐する情報解析員。親子、兄弟、夫婦の問題が非常にリアルで違和感なく読める。そこに時折絡んでくるテロの話題。上巻の最後に父親とテロの話題が交錯してきた、、、

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    2024年10月27日
  • 透明都市

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    建物すべてがガラス張り透明化? いきすぎた監視社会をテーマにした近未来ディストピアSF #透明都市

    ■あらすじ
    2029年フランスで暴力事件の未解決と民衆の意見によって新たな法律ができた。事件の予防と可視化を目的として、すべての建物をガラス張りにして、市民がお互いに監視し合うという社会を成立させたのだ。

    20年後… 犯罪が少なくなった透明都市であったが、ある裕福な家族が行方不明になってしまう。街の治安を守る安全管理人であるエレーヌ・デュベルヌは、一家の捜索を始めることになった…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    やりすぎた監視社会をテーマにした近未来ディストピアSF。透明な建物で暮らすなんて

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    2024年09月18日
  • 滅ぼす 上

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    ネタバレ

    家族のキャラクター設定がものすごく良いと思った。
    シニカルで真面目な官僚の長男、慈悲深く家族を繋ぐ役割をしている妹、うだつが上がらず、災難ばかり降りかかる弟。父やマドレーヌ、そして彼らの結婚相手しかり。みんながキャラクターとしての役割を見事に演じていて、物語の情景が自然と頭に浮かんだ。

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    2024年06月09日
  • 滅ぼす 下

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    ネタバレ

    滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。

    プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。

    所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。

    政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えの

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    2024年06月09日
  • 滅ぼす 下

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    テロや政治の大きな物語を背景としつつ、フォーカスされるのは、一人の人間がどのように己の死に向き合うかということ。
    文明の滅びのイメージと人間の滅び、自然の巡りなどを相互に響かせながら物語は進んでいく。

    伏線では?と勘ぐりたくなるような匂わせが頻発するが、それらの記述は解決されず、物語の背景で滞留し続ける。
    その解決されない問題に取り巻かれながら、もやっと曖昧に、でも確実に死に向かって歩んでいく流れが、私達の現実の肌触りに似ているような気がして震える。

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    2024年05月26日
  • 彼女たちの部屋

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    読んでいるうちに、ブランシュやソレーヌまでにはなれなくても、困窮した女性を助ける人になりたいと思った。日本にも困窮している女性がいて、そのことを知っているのに、何もしないというのは違うような気がするから。ささやかでも自分のできることを考え、実行したい。

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    2024年04月24日