デイヴィッド・フィンケルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アメリカの対イラク戦争に派遣された兵士たち。
イラク、アフガンで見た惨状。
「敵」の攻撃(爆破)によりむごたらいい戦友の死…。幼児を抱えたイラク兵を撃つ…。
帰国後、PTSDになり、自殺に至った者も多い。
本書で取り上げるのは、自責の念にとらわれ、苦悩する元兵士本人やその家族の苦悩を、淡々とした客観的視点で描く。
「戦争に行く前は『いい人』だったのに、帰還後は別人になっていた」。
「戦争」が、兵士やその家族を「破壊」していく様子が、痛いほど伝わった。
もちろん、アメリカ兵たちも、他国の兵士や民間人を殺害していて、他国側の人々にも肉体的・精神的苦痛を負わせているのも事実。
「国家のため」従軍して、肉体的にも精神的にも「破壊され」戻ってくる…。
格差社会が生み出した「志願兵」。「生きる」ために兵士になった(ならざるを得なかった)アメリカの「ごく普通の」若者たち。
20代の兵士でこのような精神的ダメージを味わっているのだから、中東の子どもたちは、どのような苦痛を負っているのかと考えると、深いため息が出てくる。
ありきたりな表現になってしまうが、「戦争というものは、何も生み出さない、人間にとって必要のないもの」ということをつくづく感じた。
「訳者あとがき」にも触れられているが、後方支援にあたった日本の自衛隊の方々の中にも、自殺、あるいはPTSDになった方々がいる。
「戦争」というものが、いかに愚かしいことかを痛感する。
多くの人に読んでもらいたい。 -
Posted by ブクログ
帰還兵の物語というとオブライエンの『本当の戦争の話をしよう』が思い出されるが、これはイラク戦争からの帰還兵を追ったノンフィクション。第二次世界大戦、ベトナム戦争からの帰還兵とイラク戦争の帰還兵は当然それぞれの苦悩があったかと思うが、帰還後の精神的ストレスについてはトラウマの症状が異なるという。前線があるかないか、明確な戦場が区切られていないイラクでは360度、気の抜けない環境であったことが指摘されている。
ノンフィクションではあるが、帰還兵のその後の生活、本人を取り巻く家族の苦悩、米軍によるメンタルケアの実情などが生々しく物語られていて、さながら複数の主人公が存在する小説を読んでいるかのようである。描かれている状況は悲惨だが、それにしても、アメリカがここまでのケアを実施するためにどれほどの予算が必要か、その想像にも慄く。
日本では戦争を知る生存者も少なくなり、過去の認識も歪んだまま安易に語られるようになった現在、戦争の爪あとがこのような形で残される、そしてこのような本がきちんと評価されるアメリカに敬服する。
なお訳者のあとがきに記載があるが、日本からイラクへ派遣された自衛隊員1万人のうち、帰還後の自殺者は28人とのことである。 -
Posted by ブクログ
読み進めるのが辛く、読み終わるまでに1年以上かかってしまった。イラク戦争において、アメリカ軍からアフガニスタン・イラクに派遣された兵士は約200万人いて、そのうち50万人がPTSDとTBIに苦しんでいる…?始めて知った。そして、日本からも自衛隊として約1万人が派遣され、1~3割がPTSDに苦しんでいる…?それも知らなかった。
「彼らにはわかっていた。わかっていたのだ。それでも毎日戦闘に出かけ、戦争がどのようなものかわかってくる。勝者はいない。敗者もいない。勇壮なものなどない。ひたすら家に帰れるまでがんばり、戦争のあとの人生でも、同じようにがんばりつづけなければいけない。」 -
Posted by ブクログ
帰還兵は「なぜ」自殺するのか、という理由の解明よりは、帰還兵の心的外傷·脳損傷の後遺症を伴っての生活の様子と周囲の人々を追い続けた1冊である。心的外傷や、戦闘において脳に損傷を受けた兵士たちの、「生活上の困難」と一言で表すには余りある生活が描かれる。精神的な症状についてはある程度想像ができたが、そのために働くこともままならず慰労金も十分でなく治療の為に休職もせざるを得ず生活に苦しむ、ということまでは想像がつかずなるほどと思わされた。戦争は、負ければ言うまでもなく、しかし勝っても国民の心身や生活に重大なダメージを及ぼすのだということがよくわかる。戦争反対。
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アメリカが抱える本音と建前、差別、そして戦争が人間に負わせる傷の深さがノンフィクションで描かれている。
大統領選挙前後のアメリカ人の日常、感情に多くを割いて書かれているが、これが日本人には深く理解が難しい要素が多い。そして、現在世界一とされているアメリカではあるがその闇の深さ、今後ますますその問題は大きくなり全世界に波及ししていく感覚を強く持った。
本著の最終章ではバイデン大統領誕生で閉じるが、知っての通り再び大統領はトランプ大統領返り咲きとなる。アメリカは前進しているのか後退しているのか、どこに向かっているのか、今の自分の知識ではわからないことが多く、歴史的にアメリカは非常に複雑な事情を抱えた国であるということは表面的には把握しているつもりでしたが、もっと知らなければいけないことが多いと思いました。
アメリカンドリーム、フレンドリー、楽観的と言った感覚的なイメージとは(感覚が古すぎる?最近はもっとデジタル分野の知的なイメージが強くなってるかな?)大きく違う実情がよくわかります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ戦争後に精神を病む軍人に対し(またその軍人に接する機会の多い家族に対し)、どう支援すべきか、どんなシステムを構築すべきか。イラクとアフガニスタンの戦争に200万人のアメリカ人が派遣され、そのうちの20〜30%はPTSDやTBIの精神疾患にかかった。彼らが元の性格に戻ることは困難だ。家族の負担も大きい。精神衛生の問題は陸軍では自殺者の増加が問題となり医療施設ができたが収容者でいっぱいで入れない人もいる。セラピストも足りない。日本もイラクに約1万派兵したが帰還後28人もの自衛隊員が自殺した。派兵では兵士の精神衛生管理は1番重要な問題とみなすべきだろう。
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Posted by ブクログ
デイヴィッド・フィンケル(1955年~)氏は、米フロリダ大学卒業後、長年ワシントン・ポスト紙に勤務し、2006年にピュリツァー賞(報道部門)を受賞。
2007年に新聞社を辞めてバグダッドに赴き、1年間、米陸軍第16歩兵連隊第2大隊の兵士たちと生活を共にし、その過酷な日常と凄惨な戦闘について詳細に記した『The Good Soldiers』(邦題『兵士は戦場で何を見たのか』)を上梓(2009年)した。しかし、帰国後、バグダッドで知り合った兵士たちが、帰還後に電話やメールや手紙で不調を訴えてきたことから、戦争の後を記録しなければ、自らの仕事は終わらないと考えるに至り、帰還した兵士や家族、ペンタゴンの上層部や医療関係者に取材を行い、書き上げたものが本書(2013年)である。本書は、全米批評家協会賞ノンフィクション部門の最終候補となったほか、各紙の賞を受賞、また、同年のベストブックのひとつに挙げられた。
イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で、米国がイラクに侵攻して始まった「イラク戦争」(2003~11年)では、イラク(とアフガニスタン)におよそ2百万人の兵士が派兵され、そのうちの50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に苦しみ、毎年200人以上の帰還兵が自殺をしていると言われている。
本書には、5人の兵士とその家族が登場する(一人はイラクで戦死)が、彼らは、爆弾の破裂による後遺症、及び、仲間が殺されたことや敵兵を殺したことによる精神的打撃によって自尊心を失い、悪夢を見、怒りを抑えられず、眠れず、薬物やアルコールに依存し、鬱病を発症し、自傷行為に走り、遂には自殺を考えるようになる。周りがいくら、本人のせいではなく戦争のせいなのだ、と言っても、彼らの戦争の記憶と自責の念が薄れることはない。
私は少し前に、ティム・オブライエンが自らのベトナム戦争の従軍の経験をもとに書いた短編集『本当の戦争の話をしよう』(1998年)を読んでおり、似た読後感を持ったが、本書においてより強く印象に残ったのは、帰還した兵士とともに苦しむ家族の姿である。登場人物の中でも中心的に描かれているアダム・シューマンと妻のサスキアの、帰還後の3年余りの日々は凄絶で、戦争で死ぬことは(言うまでもなく)辛く苦しいことだが、帰還兵と家族が生き続けることも、想像を超えて辛く苦しいことなのだということがわかる。
「訳者あとがき」によると、2014年4月に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、イラクに派兵された自衛隊員の中で、なんと28人もが帰還後に自殺し、1~3割がPTSDに苦しんでいると報じられたのだという。これは驚くべき事実だと思うが、一体どれだけの日本人がこの事実を知っている(覚えている)だろうか。。。
米国では、帰還兵に対するカウンセリングや医療のための施設が整備されつつあるといい、本書にもそのことは登場する。そして、「帰還兵はなぜ自殺するのか?」を一つの社会問題と捉えるなら、そうした帰還兵への対応の充実が大事ということになるだろう。
しかし、おそらく、最も本質的な問題は、そういうことではなく、「人はなぜ愚かな戦争を止められないのか?」ということなのであり、今も続く、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃に心が痛むばかりである。
(2024年6月了) -
Posted by ブクログ
表題の通りである。
非日常は人を狂わせる。(米軍においてはおそらく)心身無事に帰還する兵の方が多いわけだが、PTSDに悩まされる帰還兵は少なくない。
「負傷兵の方がまだましだ」という見方もある。外傷は名誉の負傷であり、誰が見てもすぐにそれと分かる。
「撃たれて死ぬ方がまだましだ」とすら言える。戦死者の記念碑に、自殺した兵士の名は刻まれなかった。
例えばアメリカ領サモア。「彼の育った島には、マグロの缶詰工場以外に働き口がなかった。トーソロはうんざりするまで工場で働き、もっと充実した生き方を求めて島の募兵係のもとに出向いた」心の底から兵士になることを望んだわけではない。
否応なしに戦場で殺し、殺される。昨日まで一緒に飯を食っていた隣人が今日は死んでいる。
帰還兵はなぜ自殺するのか。それは予想通りでもあり、平穏に暮らす我々の予想の埒外でもある。 -
Posted by ブクログ
戦場から帰還した兵士の苦しみが胸に刺さるが、兵士の妻の苦悩もまたいかばかりかと思う。夫は大変な仕事をしてきた。地獄を体験した。身心ともに疲れきっている。
しかし、生きていれば嫌でも生活というものをしなくてはならない。なのに、夫はあてにできないどころか、夫がいることで負担が増す。家事も、育児も、生計も全て自分にかかってくる。夫は国費で治療が受けられるが、自分は頼れる人もいない。苦しんでいる夫には当たれない。
夫を思いやり、顔は笑って家族を支えるのが、いい妻、いい母だとわかっていても、皆ができるわけじゃない。
それにしても。生きて帰ってきても幸せになれない人が多いのに、なぜ戦争を続けるのか。なぜ戦争が始まるのか。そこを真剣に考えないと、不幸な人の数は増えるばかりじゃないか。
アメリカは帰還後の医療体制も(ずっと戦争しているから)整っているが、日本は整っていない。恐らく帰還した兵士が死ぬまでかかるだろう医療費も税金から出ることを考えても、そもそも戦争しないのがいいに決まっていると思う。
アメリカの普通の人はどう考えているのだろうか。