古川緑波のレビュー一覧
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非常に好みがはっきりしていて、当時の読者を牽引するだけの魅力も説得力もあったんだろう。その辺の「言い切り」が一般大衆に受けるのは今も昔も変わらない。
一方、それ故に、ってことでもないのだろうが、あんまり自分自身の思考を分解する、というようなことはしなかったんじゃないかと思う。無意識に自分が芸能人という特権階級にいることを誇示しようとして、人気商売としてはそのへんのアフターケアというか、後処理はうまくない印象。
で、この辺の後処理の完成形が立川談志あたりにあると思っている。談志は六波のファンだったという志らく師匠の解説があり、このあたりのよもやま話を藝として完成させていったんだろう、とい -
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さしずめ、喜劇人ロッパの〝グルメブログ〟といった内容。
江戸っ子にもかかわらず蕎麦は食えず、寿司屋に行っても「こはだ、あなご、玉子」くらいしか食べられない。いっぽう、さすが男爵家に育っただけに物心ついたころからフォークとナイフを器用に操り西洋料理に親しむ反面、おでんや天ぷらといった「下司(げす)な味」をこよなく愛する。その偏食と大食が、こちら読者としてはかえってチャーミングである。
ロッパによれば、洋食や洋菓子の場合、おなじ店のおなじメニューでも戦争を境にすっかり味が変わってしまったという。もちろん「むかしの味」の方が、よかった、ということになる。ロッパとも親交のあった食通の映画監督.山本 -
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ネタバレ再読メモ。十数年前に本屋で見かけたこの本でロッパのことを知った。
戦前戦後に活躍する昭和のインテリ喜劇芸人、エッセイスト、舞台映画役者。
本作執筆時は戦後10年前後。戦争をはさんで勢いを取り戻す飲食店を食べ歩き、あれこれ感想が綴られる。戦前よりも店の数やジャンルの幅も広がったという飲食店事情や、店がどんなものを提供していたのかを知れるのは興味深い。
外来語の記述が今と違う メニュウ、レストウラン、ラヴィオリー、シュウ・クリーム、エクリア、カフエー、テレヴィ、チャップスティック、カッテージ(コテージ)。「チャップ」「カッテージ」が綴りの「オ」ではなく米国アクセントに沿った「ア」になっている