松本健一のレビュー一覧

  • 日本の失敗 「第二の開国」と「大東亜戦争」

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    なぜ日本が対米戦争に踏み切り、そして完敗したのかを知りたくて、日本の「失敗」をテーマとする本を探していたところ出会った一冊(松岡正剛の千夜千冊から)。結果的に、とんでもない傑作に出会った。
    日本が中国に進出し、韓国を併合し(1910年)、対支二十一か条の要求(1915年)を行なった辺りからの、様々な知識人の言論を一つ一つ丁寧に拾い上げ、平易な言葉で解説してゆく。そうすることで、当時の日本の政治や評論、文学、メディア等がどのような思想を背景に言葉を発し、軍人や世論に影響を与え、戦争が進められていったのかを解き明かす。
    戦争の歴史というよりも、思想史であり、思想が国を形作ったことを証明するような非

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    2019年08月02日
  • 畏るべき昭和天皇

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    本当に昭和天皇畏るべしであった。官僚や政治家や軍人よりはるかに物の見方・感じ方のレベルは超越していて、時々刻々の世界情勢を見据え、国家と国民と皇室の存続と「君臨すれども統治せず」というイギリス風の立憲君主制を貫こうとしていたことが判然とした。 2・26事件の決起将校たちや近衛文麿首相や杉山元・陸軍参謀総長に対する言葉には圧倒的な凄味を感じる。 結局、最後まで戦争に反対し続けたのは昭和天皇ひとりであったのではないのだろうか、という気がするのである。

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    2012年02月29日
  • 畏るべき昭和天皇

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    本書は昭和天皇についてのイメージを一新する著作である。とくに、「カゴの鳥」からの脱却の章が面白かった。この章は大正十年(1921)三月から半年かけて行われた皇太子時代にイギリス、フランスなど欧州視察旅行にまつわる話である。
     皇太子時代の昭和天皇に対してなされていた教育を「箱入り教育」として激しく批判したのは枢密顧問官の三浦梧楼(陸軍中将}であった。これに、元老の山縣有朋、松方正義、西園寺公望が応じた。時の首相の原敬も「今少しく政事及び人に接せらるる事等に御慣遊ばさるる必要あり」と語っている。
     大正8年(1919)5月7日、皇太子は18歳の成年式を迎えた。この後5月10日、霞ヶ関離宮で盛大な

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    2011年02月28日
  • 日本の失敗 「第二の開国」と「大東亜戦争」

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    日本が無謀な戦争に突入し、敗れてしまったのは、何故なのか。東京裁判の結論どおり「軍閥」を中心とする一部支配層の謀議によるものなのか。それとも国民全員に等しく原因があり、総懺悔すべきものだったのか。筆者は、いずれでもない、ということを、昭和日本の外交、軍、議会、思想状況・・・を立体的に描き出すことで示してくれる。日本の中国大陸での軍事行動は、日本自らが批准していた条約に明らかに違反するものであり、決して正当化できるものではないという指摘。また軍部に「統帥権」という伝家の宝刀を振りかざす隙を与えたのは、党人政治家たちが党利党略に走ったことの結果であったとの指摘。さらに「大東亜戦争」には、開戦時、動

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    2009年10月04日
  • 畏るべき昭和天皇

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    昭和天皇という人物が持っていた、強さや聡明さ、政治的合理性については、保坂正康氏の著作などで、既に知ってはいたのですが、本著では史料として残された多数の証言に基づき、昭和史の様々な場面で現れた、その類稀なる「畏るべき」パーソナリティが多面的に検証されます。

    「近衛は弱いね」だとか、杉山参謀総長に対する「太平洋はなお広いではないか」だとか、印象的な発言に纏わるエピソードは多々ありますが、著者が何よりも強調しているのは、昭和天皇が日本という国家において唯一人、「私」を捨てた「公け」の存在であろうとし続けたこと。
    敗戦後も、平成の時代の皇室が今まさにそうであるような「民主国家における象徴天皇」

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    2019年01月06日
  • 日本の失敗 「第二の開国」と「大東亜戦争」

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    統帥権干犯や戦争犯罪など昭和史のキーワードごとに章に分かれていて興味のあるところを読み返しやすい。
    政党政治がロンドン海軍軍縮条約締結の際に統帥権干犯問題で自滅した様子が詳しく描かれているが、著者の評が政党に辛らつすぎるのかそれとも適切な評なのか自分には判断しかねるところであった。しかし昨今の政治を見ているかぎり、著者の評を肯定する要素しか浮かび上がらないのもまた事実である。

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    2012年11月29日
  • 「日の丸・君が代」の話

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    日の丸は日本人が古くから日本という国を対外的に表現するために用いてきたものなのに対し、君が代は明治以降に天皇礼賛歌として作られたものであり、そもそもの歴史が全く異なるため、国旗・国家として法に定めるにあたって、一緒くたにして考えられるものではない。
    国旗・国歌法も十分な議論がなされたとはいえないため、国旗はともかく国家はもう一度国民全員で議論し直す必要があると感じた。
    筆者が言うように国歌を国民投票で問うのであれば、同じ君が代が選ばれるにしても、国民が自分自身で選んだ責任というものを感じて、今のようないざこざは起こりにくくなるのではないか。

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    2012年06月18日
  • 「日の丸・君が代」の話

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    もうそろそろ平成の世が終わり改元ですね。
    日の丸が国旗として使われてた歴史は意外と古いんだな。戦国の世に存在していたのか。
    国歌の歴史は近代に入ってから。天皇礼式曲がその起こりで、天覧調練に使われ、万葉集の歌詞に非日本人が作曲したと。
    黒船来航、明治維新、一次大戦、満州事変、二次大戦。これらの節目が実に密接に関わっているな。
    日本は近代国家としては高々数百年だが、建国からの歴史は長い。文化を国旗国歌法を法制化する必要はあったのか...
    法制化したということは、いつの日か変わることもあり得るということではあるが。
    改元を目前に改めて、日本文化を再考するに良い一冊でした。
    しかし、国旗国歌法制定

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    2019年03月09日
  • 日本のナショナリズム

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    中国在住経験のある著者による、よく調べられた面白い本である。ただし、マルクス主義ではないにしろ左翼的な反帝国主義に固執した発言が気になった。「幕末に、ヨーロッパ列強の覇権争いに日本もいち早く参加するため開国した」「日本の植民地政策により、収奪されたアジア諸国から恨みがずっと残った」は、誤りであると思う。また、「信念を貫いた祖父を見習うべき」とか「大政翼賛会に賛成したから悪い」等の、時の話題性トピックを無理につなぎ合わすジャーナリスト的レトリックで話が進められている箇所があり、論理的学術性に乏しい。
    印象に残った箇所を記す。
    「李登輝が「台湾のわれわれに文明を伝えてくれたのは日本である」とい

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    2018年11月26日
  • 「日の丸・君が代」の話

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    ネタバレ

    国歌・国旗問題をここできちんと勉強しておく。どーでもいいけど、人によってはどーでもよくないことだから、リスクマネジメント。


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    p19 湾岸戦争
     イラクのクウェート侵攻に対して国連多国籍軍が平和維持活動を発動した、戦争。冷戦終結後のナショナル・アイデンティティを問う戦争。アメリカの独善的な戦争ではなく、世界が巻き込まれ始めた戦争。
     多国籍軍に加わる中で、これから日本は、日の丸を掲げ、君が代をBGMに行軍するのか?なんだ第二次大戦の頃と変わっていないんだな。

    p66~8 日の丸の登場
     日の丸の登場は、黒船来航の時である。開国待ったなしの時期に来て、日本が世界の一国として象

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    2015年01月15日
  • 「日の丸・君が代」の話

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    「日の丸」「君が代」が、日本の国旗・国歌となるまでの経緯を詳しく紹介しています。国旗と国歌に焦点を当てることで、日本の近現代史における「国民国家」樹立の道のりをたどることができたという意味でも、おもしろく読みました。

    さらに、テリトリー・ゲームからウェルス・ゲームを経て、アイデンティティ・ゲームの時代に入ったとされる現代の国際政治の舞台で、国旗・国歌がどのような意義を持つのかということについて、著者の主張が展開されています。

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    2014年11月14日
  • 日本のナショナリズム

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    [ 内容 ]
    近代日本のナショナリズムはどこで道を誤ったのか。
    一九一五年の対支二十一カ条の要求や、統帥権干犯問題、斎藤隆夫の粛軍演説の問題、北一輝の思想などを題材に、戦前日本のナショナリズムが迷走し、暴走した原因を追究する。
    さらに、現代の東アジアにおけるナショナリズムが惹き起こしてきた領土や歴史認識をめぐる各国間の軋轢を根源から再考察し、民主党への政権交代で注目を集めている東アジア共同体構想を含め、ナショナリズムを超えた東アジアの未来像を展望する。

    [ 目次 ]
    第1章 日本国家の未来像(「第三の開国」とアジア重視への転換;「開国」とは何か)
    第2章 日本ナショナリズムの曲がり角―対支二

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    2014年10月30日