飯野亮一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
"蒲焼は、『遊歴雑記』五編(文政八年)に記されているように、「火勢弱く久しくあぶれば焦げて、あぶらを失ふ」ので、「強き火を以て一旦に(一気に)焼上る」必要がある。そのため、
「蒲焼はあをぐじやなくて引ッぱたき」(柳五二、文化八年)
といった感じで焼き、焦げないように団扇で絶えず勢いよく扇ぎ、炭火の炎のあたりをやわらげている。したがって、扇ぐ道具は扇子より団扇の方が適している。はじめは扇子で扇いでいたのが団扇に変化していて、その様子はこれまで掲げた図版を通して眺めることが出来る。江戸の蒲焼屋は蒲焼を焼く技術を進歩させ、蒲焼を一段と美味な食べ物にした。"[p.169]