二つの話が収録されている。どちらの話も当時のロシアへの痛烈な皮肉があの手この手の表現を尽くしてか書かれていて、ロシアで発禁になるのも仕方がない。逐一注釈が同じページにあるし、最後の解説でもあるのでロシア文学に詳しくなくても楽しめる。著者は劇作家でもあることから劇にも造形が深く、かといって耽美的な描写
...続きを読むというのはほぼ縁遠く、比喩表現も喜劇のように読み手に受けることを確信した語り口でテンポ感もある。
何が斬新かって、未来❨それも2、3年先くらい❩を勝手に捏造ししかもあたかも事実のようにピシャリと書いてしまうというところ❨しかも世界的な出来事ではない。注釈は入っている❩。いつか地球が一度滅んで、後の生命体がこれをうっかり見つけでもしたら信じられてしまうのではと勝手に心配してしまう。
どちらの話も人間が恐ろしいものを人間の手で産み出してしまう、というテーマで書かれている。犬の心臓はまだ喜劇の範疇で収まるが、運命の卵は途中から突然マジで深刻な描写ばかりになるので度肝を抜かれた。途中まで軽妙で機知に富んだ語り口でユーモラスに話が進んでいたので油断した。そういうのに弱い人は注意。個人的にはスリリングで、どうやって収集をつけるか気になって最後まで読んでしまった。