丸島儀一のレビュー一覧
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キヤノンで特許一筋を歩んできた著者が、特許部隊がどんな仕事をしていて、それがどのようなスタンスによるものか、そして特許部門や特許法制に関する考え方、そして日本の産業界のあるべき姿を語っています。「私の履歴書」のような構成が気にかかりますが、あくまでも最近流行している『ソリューション・ビジネス』の考え方とは一線を画すというか、特許は自社の技術を強化するのに使うという考えに重きを置き、クロスライセンスを優先するスタンスには共感しました。メーカーであれば、知財部とか特許部とかいった特許部門があると思いますが、そこでの役割期待と事業戦略を知るのに打って付けの一冊です。
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Posted by ブクログ
『本当に知的財産が大事だというのなら、知的財産の立場から法律を見直して、障害になるようなものを取っ払ったらどうかなと思うのです。
……
アメリカの場合も始めはそうだったのですが、プロパテント政策を取ってからサッと法律を変えて、破産法の例外規定にしました。知的財産だけは破産法を適用しないというわけです。アメリカはそんなに簡単に法律を直せるのに、日本はなぜ直せないんですかと言っているのですが、なぜ特許だけ、の繰り返しです。』
チグハグな国家戦略、未成熟な裁判制度、日本企業の意識の希薄さ。打ち出す未来の構想と実際の施策が噛み合わないのは、戦前から連綿とあらゆる日本社会/組織を支配してきた層のお家芸 -
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キャノンの知財部門を築き上げた丸島儀一に、キャノンの特許戦略を、その歴史的経緯と共に語ってもらい、まとめた本。
著者は丸島儀一となっているものの、予想に反してインタビュー形式となっており、強力なテーマ性に基づいて取材が行われているわけでもないため、内容は「私の履歴書」のそれに近くなっている。
丸島氏は2011年に名著「知的財産戦略」を執筆しているが、その9年前に執筆された本書は、前者の内容を薄めて読み易くしたものに等しく、氏の特許戦略への導入として最適である。逆に、本書の内容は、キャノンの歴史的経緯に纏わる詳細を除いて、全て「知的財産戦略」に(濃度100倍で)記載されているため、先にそちら -
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特許、リバースエンジニアリング、NDA、クロスライセンスを駆使して、一企業として事業を運営していく術を丸島儀一氏の経験に基づいて語られている。時には少々姑息とも言えそうな手段も必要となるのが現実というところか。
国家として反トラスト法(独占禁止法)によって、企業の利益保護よりも社会の発展を優先するアンチパテント政策から、バイ・ドール法による産学連携による研究開発と特許取得・活用の促進とともに、企業の利益を重視するプロパテント政策へ転換することで自国の利益を保護しようとしたアメリカの政策を参考に、日本へ向けた政策、司法制度の改革などへの提言も興味深い。さらに国際標準・コンソーシアム標準などへの -
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日本最強の特許マンと呼ばれた丸島儀一氏が、自身の仕事との出会いから、今後の日本の知的財産戦略についてまでを俯瞰する。
著者自身は、当初から特許の仕事に関わることを希望していなかった。その後、仕事を行う中で特許の仕事にやりがいを見出し、キヤノン(キャノンではない)がカメラ以外の複写機や計算機の事業拡に特許戦略の面から多大な貢献を果たす。開発の源流から入り込むことで、開発する商品自体が内包する本質を特許化することに成功、キヤノンの競合企業に先駆けた特許基盤の構築に成功している。
自身の仕事を通じて、特許そのものの攻撃と防御としての特質を見出しているが、著者は特許そのものを商品のように売り買いす -
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日本の企業、産業の発展のために特許をどう戦略に使うべきかを著者の体験談から述べている。
本書は著者の特許との出会いから始まる。
技術部門を希望していた著者は先輩の退職の埋め合わせで特許係に入る。
仕事の少なさと技術をやりたい思いから研究開発へと出入りを繰り返し、その中で特許を使っていく。
ゼロックスとの特許を巡るやりとりの中で、特許と開発が一緒にやることの重要性を実感していく。
そして特許課は部になり、そこの部長になる。
本書の出版当時の2002年では顧問のようだ。
製品を開発する際には、大量の特許がその中に含まれる。
しかし、他社が持っている特許を一件でも含めば他社からクレームが入り