福原直樹のレビュー一覧
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[裏側、覗いてみました]民主主義が根付いており、生活は満ち足りており自然も豊か......。日本人が一般的に有しているであろうそんなスイスのイメージをひっくり返すようなスイスの裏の一面を描いた作品。歴史から経済に至るまでの知られざるスイスの側面を垣間見せてくれます。著者は、赴任が決まるまではスイスに関する知識は皆無に等しかったと語る福原直樹。
「黒い」と題されてしまうとなんともゴシップ感が漂ってしまうのですが、スイスが抱える過去の、そして現在の問題が丁寧に記述されており、スイスという国を考える上での良い材料を提供してくれているように思います。ヨーロッパの中でも独特の位置を占めるスイスについ -
Posted by ブクログ
ナチスドイツとの関係。スイスはナチスドイツに武器を輸出していた。ナチスドイツの共犯者だと批判されている。ナチスドイツがオーストリアを併合し、オーストリアのユダヤ人がスイスに大量移住。スイス政府は国境でユダヤ人を識別し、ユダヤ人の旅券にJ(Jude)のスタンプを押して追い返した。
ロマ族。スイス政府が支援する公共団体は1926年から1972年の間、ロマ族の子どもたちを誘拐し、強制的に施設に入れた。施設では子どもたちへの暴行も。ロマ族は怠惰で知恵遅れ、学校の勉強には付いていけない、喧嘩ばかり、監視しないと浮浪者になってしまう、と団体のスイス人は考えていた。
米テキサスで1987年に設立されたネ -
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永世中立国と名高いスイスの暗い側面に目を当てた本。
以前タックスヘイブンについて書かれた本を読んだこともあり、スイスが色々と問題を抱えていることは知っていたが、政府主導で核兵器の開発が行われていた事や、国籍を取得を希望する人物を国民が決定する(本書においてはトルコ人や黒人は却下されている)という事までは知らなかった。これまでに幾多の困難を乗り越えてきた結果が、本書で書かれているような他民族に排他的な国民性となったのだろうか。
言うまでもないことだが、本書で書かれている事のみでスイス人の人々の事を見てはいけない。事実は事実で受け止め、その人個人の事を見つめていくようにしていかなくてはいけ -
Posted by ブクログ
ネタバレスイスにも一度も行ったことがありませんが、私はスイスという国が知りたい。日本の国防の考え方を整理する上でスイスがヒントなるかもしれないからです。検索で見つけたのはこの本でした。私自身がいいイメージしか持っていない国なので、逆に悪い面から知る方が分かりやすそうですし、まずはスイスを知る上でおもしろいだろうと思い読んでみることにしました。
理想の国スイス の実態を、ご自身の6年間のジュネーブ特派員時代の取材と実体験から書かれています。内容はスイス批判です。スイス人がいかに人権侵害や差別の意識を持ち続けているか記しています。
前半ではスイスの歴史から、
・移動民族ロマ族の話し
・ユダ -
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ネタバレ好感度の高いスイスの隠れた黒い一面を扱った本。
・・・らしいですが、読後この国へのイメージが変わることはなかったです。
黒い面と言えばそうでしょうが、強国に囲まれた国ではむしろ防衛の意味でもこの本内のようなことを行っていても不思議はないかな、と(決して肯定する意味ではなく)。
むしろ綺麗なだけの国家などあるのだろうか・・・?という疑問。
移民問題についてのある若者の意見も、確かにやや過激ではありますが「信じられない意見」とは思いませんね。たぶん今移民を抱えたどの国でも似たような考えを持つ人は多くいるんじゃないでしょうか?
この作者はスイスのことが好きらしいですが、むしろ読者よりもスイスに -
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[ 内容 ]
永世中立国で世界有数の治安のよさ。
米国などを抜き、常に「住んでみたい国」の上位に名を連ねる国、スイス。
しかしその実態は―。
「優生学」的立場からロマ族を殲滅しようと画策、映画“サウンド・オブ・ミュージック”とは裏腹にユダヤ人難民をナチスに追い返していた過去、永世中立の名の下に核配備計画が進行、“銀行の国”でまかり通るマネーロンダリング…。
独自の視点と取材で次々と驚くべき真相を明かす。
[ 目次 ]
ロマ(ジプシー)の子供を誘拐せよ
「悪魔」のスタンプ
それぞれの戦い―「祖国」と「人道」の狭間
中立国の核計画
理想の国というウソ(「相互監視」社会 民主主義社会 「ある政治家 -
Posted by ブクログ
風光明媚で豊かな国スイス。しかも、人々も礼儀正しく清潔。永世中立という政治的態度から、平和的な国でもあるように見える。そんな国の暗黒面をいくつかあぶり出す。具体的には、ナチスの時代のユダヤ人難民の処遇、ロマの子供たちの誘拐、マネー・ロンダリングのからくり、核配備計画、外国人への差別的処遇等。
ヨーロッパの中の小国として、これだけの富を蓄えて自国を守るには、いわゆる「欧米」の国際標準とされるものからははみ出さざるをえないのだと思う。保守的ながら、同時に他のどこもやっていない犯罪めいたことをしたたかに行うという印象。
スイスは住んでみて大変住みやすいけれど、外国人としてここで生きていくのは日本 -
Posted by ブクログ
「理想の国スイス」のもう一面を捉えようとした本。
優生学の思想、ナチスへの協力、冷戦下にあっては核計画、現在に至る住民の相互監視、麻薬、ネオナチ、直接民主制、難民・外国人問題、マネーロンダリング、脱税がテーマである。
スイスというと各種国際機関の本部も設置されているだけにあって「理想の国」というイメージがどうやら一般的に強いようだが、永世中立国であり、そのため戦時は国民皆兵だし、山に囲まれて暮らしにくそうで、個人的にまったくプラスナイメージを持っていなかった。
本を読んで振りかえると、スイスの特殊性がよく浮かび上がってくる。EUに囲まれながらもスイスは加盟せず、南にイタリア、西にフランス