実際の事業内容はよく知らないけれど名前はよく目にする椎木里佳さん。本書の経営を学ぶ、の先生は父親。お父さんはこういう方だったのか。父娘の対談集のような形でありながら、父の体験談も多く、さらっと読みながらも、必要なポイントは目を止めながら読んだ。
「ベンチャーって本当に人が足りないんだよ。だから、社員みんなが、一人で三人分くらいの活躍をしないと会社が回らない。ものすごく忙しい。その中で毎日千本ノックを受けて、追い込まれたりしながらすごく鍛えられる。...脳の筋肉とか、胆力とか、マルチな才能とか、土壇場に出るパワーが蓄えられる。...なんでもできるスーパーマンだって思われるんだよ」
このベンチャーをNPOに言い換えたままの職場にいた。成長期のNPOは本当にこれに近い。何でもできるようになる一方で、今の社会で認められているのは専門分野をもつ人間。本当に生きる力が必要とされる場に出たら、分野を限った人はあまり使えないというのも見てきたけれど、簡単には批判もできず、その人の生きる場所、生きる社会次第。そんなギャップに苦しむ人も見てきた。それでも自分は、生きる力はマルチな力だと思うし、それを持ってる人を尊敬する。
こんな働き方をしてきて、ビジネス感覚強めのNPOにいたので、ここに出てくるようなプロジェクトごとのコラボレートや資金調達、外部の巻き込み方や任せ方、win-win、バーターの捉え方、自団体の強み弱みを知った上でのPRの仕方を目の前でみたり、実践できたり、経営を把握して少しでも関与できた感があったのはよかった。けれど、逆になくて残念だったのが「組織をつくるってどういうこと?」という視点。それは社員の扱い方も含めて。次に仕事を選ぶにあたっては、組織の作られ方や働き方の自由度、ライフワークバランスの捉え方などもきちんと確かめて選びたい。
と、起業する気はないけれど、読みながら、働き方を考えたり、ビジネスモデル、PDCAを考えてみようかという気になったりした。