ジュールズ・ハワードのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
生物学的な死を考えるというコンセプトのもと、様々な生物の生と死について著者の取材内容をまとめた一冊。読みやすくわかりやすい。ただ、ネタがネタだけにギョッとするところも多少あるので好き嫌いは分かれるかもしれない。
カラスは仲間の死を弔うのか、ロバはパートナーの死を悲しむのか、腐敗の進む豚の死骸の下で繰り広げられる虫たちの繁殖、500年以上生きた貝から考える長寿、スガの幼虫から紐解く虫と植物の生存競争、アカトビやホリッド・グラウンド・ウィーバーの保護活動から見る生物の絶滅などなど、知らない世界ばかりで面白い。
「なぜ人は死ぬのか?」「死ぬってどういうことか?」といった死に関する疑問が解消するわけではないけど、いろんな死のエピソードを読んで、死について考えるヒントときっかけをもらえた。
(本書を読んで、カツオブシムシはタンパク質を食べるから骨格標本の掃除に活用するというのを知った。古文書や古美術の世界だとその特性ゆえに害虫扱いだけど、捨てる神あれば拾う神ありなんだな。) -
Posted by ブクログ
殻のある鳥の卵や、魚、虫などの卵だけに限らず、卵子の形態も卵であるため現在卵として子を産み落とさない種がほとんどの哺乳類についてもかなりの言及がある、卵を主軸に進化の遍歴を辿っているが中生代まで純粋な生物の進化史であり、生殖の進化史でもある。
元々は無性生殖から有性生殖への生物相の移行から「卵」が生まれ、どちらへも移行できる状態から、遺伝子的安全性を維持できる有性生殖になることで、卵(卵子)の有用性が増し、カンブリアで爆発。
そのカンブリア紀で大量の種があらゆる形式の卵の中で良い物がなにかを探すために試み、地上への進出の際に感想からの保護のために殻…保護層が生まれていった。
カルシウムメインの硬い殻ではなく、恐竜は羊皮くらいの柔め殻が多かったららしいのは知らず。化石だけをみてるとそんなイメージは湧かないので許してほしいものだ。
当たり前ではあるが、進化史は卵の進化史とイコールである。卵が進化し適応できなければ、生物は生まれることはない。つまり進化は成し得ない。鶏が先か、卵が先か。生物史的にはまずは鶏が先であるものの、生殖が始まってからは卵が先だ。
そんなことに改めて気付かせてくれる一冊であった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ体裁はエッセイ風で、専門用語などもほとんど出てこず、とても読み易い。
生き物たちの営みを”死”という観点から改めて俯瞰する枠組みは期待を抱かせるし、イギリスでもゴケグモモドキにまつわるフェイクニュースが伝播したんだ…という話や、腐肉を喰らうコンドルの腸内環境についての説明、最近のアンチエイジングに対するアプローチなどなど、生き物ネタから派生する豆知識を色々と知ることができ、素直に「ほー」と感嘆する。
が、シヴィアな言い方をすると得たものはそれだけ、というか、小さなトピックスを四方山話として積み重ねることに終始し、冒頭で著者がぶち上げた”生き物はなぜ死を免れる方向に進化しなかったのか”という大命題に、結局のところ答えていないことが気に掛かり、本書を通じて貫かれる背骨のようなものが見当たらなかった。
ここは著者に責任があるところではないが、邦題に”動物学者”という言葉を入れる以上、ただの動物好きでは与り知らぬ専門的な見地からの考察をもう少し読みたかった、と切に感じる。
「パラサイト・イヴ」の方がよっぽど興味深くミトコンドリアの働きを紹介していたような。 -
Posted by ブクログ
生物とは何だろうか。それは生きているものである。
「生きている」とは何かといえば、一般には、「自己と外界を分ける境界があること」「エネルギーや物質を代謝すること」「自己複製すること」などの特徴が挙げられる。英語圏では運動(Movement)、呼吸(Respiration)、感覚(Sensitivity)、成長(Growth)、再生・生殖(Reproduction)、排泄(Excretion)、栄養(Nutrition)の7つの現象での定義があり、頭文字を取ってMRS GREN(グレン夫人)とも称される。
けれども、突き詰めて、一体生きているって何なのかというと、実のところ曖昧で未整理な部分も多い。
ウイルスは生きてるの? 生殖が必須の条件だとしたら、生殖能力がない交雑種のラバは死んでるの?
本書はそんな生命の謎に「生」と対極の「死」から迫ろうとするものだ。
著者自身、動物学者であるが、「死」を専門とするさまざまな研究者の元を訪れ、多様な観点から死を、そして生を考えていく。
ウワミズザクラとイモムシのせめぎ合い。
極めて長寿の貝とフリーラジカルの制御。
ブタの「死体農場」。
大した毒性もないのに猛毒と誤解されているゴケグモモドキ。
死んだ同胞を巣から運び出すハキリアリ。
マウスにネコを恐れなくさせ、「自殺」行為へと誘うトキソプラズマ。
個々のトピックスから、生物種によって寿命がほぼ決まっているのはなぜか、生物種同士の駆け引き、死が多様性に与える影響など、興味を惹く論点が浮かび上がってくる。
個人的には、死なないように進化しなかったのはなぜかという問いはおもしろい視点だと思った。そう、不老不死がよいものならば、そちらに向かう生物がいてもよい。どうもそうではないのは、そこに何らかの理由があるのかもしれない。
非常に整理されているというよりも、著者の思索という部分も多く、問いにも(問題の性質上)すっきり解決が与えられるわけでもないのだが、「死」から「生」を考えるというのはなかなかおもしろい試みだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最新の科学的知見を、哲学や動物学の議論を交えてわかりやすく紹介……なんてしておらず。
ふわっとした個人エッセイに、毛が生えたような
『身近で解りやすい話題』
だけど、私にとっては、
『死についてより考えが深まったりはしない』
本でした。故に、毒にもならないが薬にもならない星三つ、と評価します。
生についてよく考えるためには、死についてもよく考えねばならないと、自覚的に色々考えてみたことがある人には、向かない内容。
普段の生活で、気持ち悪い生き物は避けて当然、死や病のことなんて考えたくもない、心構えなんてしたくない。
ていうか、仏教に触れたことがない。
そういう人が初めて手に取ってみるには、いいかも知れないと付記しておくにとどめたい。