芦崎笙のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今の私にはピッタリの本であり、よく考えられて作られた作品です。
最初は自分が属する世界とは違う金融業界で、女性差別があからさまにあるという設定に、私とは違うか?と思いました。
でも読み進めるうちに、女性がまじめすぎて組織の本当のルールにしたがえないという課題を見出し、これはまさに私が日々直面していた課題だなと気づきました。
また出世をしていくことは、自分だけの希望を満たすものでも、自己実現だけのものでもなく、一つの役割として自分が望まない道にも出なくてはならないということ、これでいいんだろうかと悩むものであることが非常にうまく書かれています。
男性はどうやって乗り越えていくんでしょうか。結局同じなのでは?ただ社会から女性のくせにと言われないだけでは?と思いました。
また、最後のカンボジアでの話。作者の意図がよくわかりました。
何一つ割り切れるものはないこと、仕事だけに閉じこもっていてはわからない世界は世の中にたくさんあること、主人公が視野を広めるのに役立ちました。
私は、幸運にも子育てにより、キャリアだけを追求することができない身分であり、そのことが仕事上の迷いを吹き飛ばしていることに改めて気づきました。
この小説はすべての働く男女、上を目指す男女に共感できる秀作です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ165 薫「会社に対する忠誠心はないが、自分の仕事に対する忠誠心はある」
169 ある枠組みのなかで自分のレースを設定し、それに勝ち抜いて達成感というご褒美をもらう。それが環の自己実現のやり方であり、銀行でいえば出世競争だった。上位の役職に昇進して大きな権限、報酬、やりがいが与えられ、成功の味をかみしめる。その達成感こそが環の心の支えてきたのだった。
249 一生懸命成果を上げるほど自分を責めてしまうこの仕事。一切の同情心を排除して任務を遂行できる石田の冷酷さがうらやましく思えたこともある。だが、そんな仕事だって誰かがやらなくては組織が存在しない
251 菊田の辞表
257 自己実現イコール出世だと考え、認められて出世するためには不本意であろうと汚れ仕事であろうと地べたを這いつくばる覚悟でやってきた。だがようやく出世してみると、それが本当に自己実現につながるのか怪しい。女だからという逆差別と、粉飾された人事評価。
258 自分がこの組織に加わってやりたかったことはなんなのか。それはこれまでやってこれたのか、そしてこれからこの組織にいてできることなのか。
設定された枠組みのなかでの競争は得意だが、枠組みの設定自体を作るのは得意ではない。
組織との付き合い方に明確な意識をもってこなかった。親子関係と一緒で、成長するにつれ組織と対等な関係を望むようになる。
280 組織のなかだけで自己実現を目指してきた環にとって、組織の外にもまた自分の力を試すことが可能かもしれないという事実は新鮮な驚きだった
自分がこの20年間所属してきた組織のことを考える。この組織のなかで自分が苦労してやってきたことは世の中の誰の役になったのだろうか。社会に対する有意義な貢献だったのか。自分を成長させてくれたのか。自分はこの組織に愛着をもってきたが、組織はどうなのだろう(正当に評価しているのか)自分のことを必要としているのか?自分はこの組織とどう向き合えばいいのか。組織に対する信頼感があやふやになり、気づかずにいた自分、あるいは気づかないふりをしていた自分を腹立たしく思った
290 誰にも負けることのなかった石田が、経験したことのない苦労と引き換えに言い知れぬやりがいをかんじさせてくれる挑戦だった
295 環「なんのため?売名行為?人道支援?」石田「どちらでもあり、いずれでもないなぁ。仕事ってそんなもんだろう」
どんな仕事も不純な目的や割り切れないしがらみを何がしら抱えながら進んでいる。そんなあきらめを持ちながらこれからも仕事とかかわっていくしかないのかもしれない。
組織の出世競争に機械的に挑む女性総合職第一期生の葛藤。女版の半沢直樹のイメージ。
自分の会社がまだましだ、私には組織への忠誠心はない、仕事への忠誠心が求められているだけまだまし、組織の外で自分の力が試せる可能性の発見が新鮮というのは私にはありえない、どんな仕事にも人間関係の調整、汚れ役はある。仕事ってそんなもの、と割り切れる。
ただ、日本人以外の人には理解不能かも笑。 -
Posted by ブクログ
日経小説大賞を受賞した現役財務官僚の事実上のデビュー作。都市銀行の女性総合職一期生で本店管理職に抜擢された主人公が、子会社の解体という汚れ仕事に取り組むなかで苦悩する姿が描かれている。人物描写が巧みで、話のスジとしても読みやすかった。
人員整理などの汚れ仕事の辛さ、幹部の政治的思惑に仕事が左右される理不尽さが印象に残った。自分はまだそういう仕事に携わったことはないが、もしやらなくてはならない事態になったときに、本書の主人公たち以上にうまく立ち回れるかというと自信がない。しかし、組織で出世するには、そういう汚れ仕事をうまくこなす能力も必要なんだなということは感じた。
部下の斎田と、友人としては魅力があるが、会社員としての能力には欠けて、人員整理の対象になる社員とのエピソードも心に沁みるものがあった。 -
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女性の社会進出を社会が促進すればするほど、affirmative actionと女性のキャリアが比例するような見方をされ、陰口どころかそれを利用しろなんて本人の目の前で言うなんていうデリカシーとお頭の無さは日本が越えなければいけない壁。女性だからすぐ辞める、産休をとる、頭を使わないなんて、立派な差別。
まだまだ日本で女性がハイキャリアで働くのは、国際的な統計をみても難しいと言わざるおえない。それをサポートしなければいけない国の福祉の管理、配偶者がどれだけ子育てや家事をしなければいけないという自覚を持つか、会社がどれだけ労働基準法を守っているか、それを国がどれだけ厳しく管理するかなどしっかりしろ!といいたくなるようなところはたくさん。
仕事だからと無理をせず、自分が自分らしくいれる場所で働きたい。仕事のために生活するのではなく、生活するために仕事をしていると言いきれる人生にしたい。 -
Posted by ブクログ
金融庁勤務経験もある財務省官僚が描く、メガバンク経営企画部の内実。
頭取・専務の厳しい指示とグループ会社の実情の板挟みになる中間管理職。この辺の厳しさというか、出口のない隘路での苦闘ぶりは真に迫った感がある。一方で、この本の出口をどうするのかと思っていたら、カンボジアのスコールだった。ありがちなハッピーエンド的カタルシスはない。
こんな終わり方で良いのだろうか。普通の小説のように、なんらかのハッピーエンドにたどり着かないと読んだ労力や期待感への報いにならないのではないか、私悩んだ。そして、わかった。
だって、サラリーマンなんてそんなものではないか。身も心も疲れ果てるような仕事を命じられ、やり遂げて、簡単な慰労会があった翌日からは次の仕事に向かう。筆者も霞ヶ関でそんな経験を繰返してきたのだろう。
そんな思いが、カンボジアのスコールに打たれるシーンを通じて、読者に伝わったのかどうか。