芦崎笙のレビュー一覧
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今の私にはピッタリの本であり、よく考えられて作られた作品です。
最初は自分が属する世界とは違う金融業界で、女性差別があからさまにあるという設定に、私とは違うか?と思いました。
でも読み進めるうちに、女性がまじめすぎて組織の本当のルールにしたがえないという課題を見出し、これはまさに私が日々直面していた課題だなと気づきました。
また出世をしていくことは、自分だけの希望を満たすものでも、自己実現だけのものでもなく、一つの役割として自分が望まない道にも出なくてはならないということ、これでいいんだろうかと悩むものであることが非常にうまく書かれています。
男性はどうやって乗り越えていくんでしょうか。結局同 -
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ネタバレ165 薫「会社に対する忠誠心はないが、自分の仕事に対する忠誠心はある」
169 ある枠組みのなかで自分のレースを設定し、それに勝ち抜いて達成感というご褒美をもらう。それが環の自己実現のやり方であり、銀行でいえば出世競争だった。上位の役職に昇進して大きな権限、報酬、やりがいが与えられ、成功の味をかみしめる。その達成感こそが環の心の支えてきたのだった。
249 一生懸命成果を上げるほど自分を責めてしまうこの仕事。一切の同情心を排除して任務を遂行できる石田の冷酷さがうらやましく思えたこともある。だが、そんな仕事だって誰かがやらなくては組織が存在しない
251 菊田の辞表
257 自己実現イコール出 -
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日経小説大賞を受賞した現役財務官僚の事実上のデビュー作。都市銀行の女性総合職一期生で本店管理職に抜擢された主人公が、子会社の解体という汚れ仕事に取り組むなかで苦悩する姿が描かれている。人物描写が巧みで、話のスジとしても読みやすかった。
人員整理などの汚れ仕事の辛さ、幹部の政治的思惑に仕事が左右される理不尽さが印象に残った。自分はまだそういう仕事に携わったことはないが、もしやらなくてはならない事態になったときに、本書の主人公たち以上にうまく立ち回れるかというと自信がない。しかし、組織で出世するには、そういう汚れ仕事をうまくこなす能力も必要なんだなということは感じた。
部下の斎田と、友人としては魅 -
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女性の社会進出を社会が促進すればするほど、affirmative actionと女性のキャリアが比例するような見方をされ、陰口どころかそれを利用しろなんて本人の目の前で言うなんていうデリカシーとお頭の無さは日本が越えなければいけない壁。女性だからすぐ辞める、産休をとる、頭を使わないなんて、立派な差別。
まだまだ日本で女性がハイキャリアで働くのは、国際的な統計をみても難しいと言わざるおえない。それをサポートしなければいけない国の福祉の管理、配偶者がどれだけ子育てや家事をしなければいけないという自覚を持つか、会社がどれだけ労働基準法を守っているか、それを国がどれだけ厳しく管理するかなどしっかりしろ -
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金融庁勤務経験もある財務省官僚が描く、メガバンク経営企画部の内実。
頭取・専務の厳しい指示とグループ会社の実情の板挟みになる中間管理職。この辺の厳しさというか、出口のない隘路での苦闘ぶりは真に迫った感がある。一方で、この本の出口をどうするのかと思っていたら、カンボジアのスコールだった。ありがちなハッピーエンド的カタルシスはない。
こんな終わり方で良いのだろうか。普通の小説のように、なんらかのハッピーエンドにたどり着かないと読んだ労力や期待感への報いにならないのではないか、私悩んだ。そして、わかった。
だって、サラリーマンなんてそんなものではないか。身も心も疲れ果てるような仕事を命じられ、