一、全体として何に関する本か
英語タイトルは「Marketing in the Public Sector」(公共機関のマーケティング)である。本書が対象にしているのは行政機関だけではなく、電気・ガス・上下水道・郵便などの公共サービスを提供する社会基盤全般で働く職員、社員のマーケティングについて書かれている。公共部門の特徴としては、「公共機関は独占であることが多い」「公共機関は市民の利益のために奉仕する」「公共機関は衆人環視のもとで行われ、メディアの注目を大いに集める」ということが挙げれら、一般企業と置かれている立場が異なる。一般企業のマーケティングのスローガンは顧客価値と顧客満足であるが、公共機関のマーケティングのモットーは市民価値と市民満足である。
四、一番面白かったのはどこか、なぜ自分は面白かったのか
今回、本書を読もうと思った理由は、コーズマーケティングについて学びたかったからである。コーズマーケティングとは、ボルビック社の「1ℓ for 10ℓ」に代表されるような、企業の社会問題や環境問題などへの積極的な取り組みを対外的にアピールすることで顧客の興味を喚起し、利益の獲得を目指すマーケティング手法である。大きな成功例としては、アメリカンエキスプレス社のカードが使われる度に自由の女神修復資金を拠出する制度があり、修復拠出金は約2億円となり、カードの使用率は27%増え、新しいカードの加入者は10%も増えたという。市民の社会問題への関心が高まっている中で、日本の会社も社会問題をきちんと捉え、その解決策を示すことができれば、今以上に顧客満足度も社員の誇りも高めることが可能だと考える。