ヤン・ヨンヒのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレなんとなく手に取った本だけど、とても良かった…。主人公ミヨンは在日朝鮮人の中でもコテコテに北朝鮮アイデンティティが強い一家の出なのかなと思うけど(北朝鮮人はみんなそうなのか?)、本人はかなりそこに違和感を感じ抗っているので、感情移入しやすい。
逆に、日本に住んでるにも関わらず、多くの在日朝鮮人が北の体制や思考に違和感を持たず従ってるのもすごいなぁと思った。
最後卒業式でミヨンは忠誠を誓いません!と叫んで出ていくわけだけど、これは作者がそうしたかったという心の叫びなんだろうなと理解した。もしそうしてたら、家族、特に姉への何らかの影響があったんだろうか。。
本当に謎に包まれた隣の国のリアリティある -
ネタバレ 購入済み
以前映画を観てこの本を最近知りました。
昔は在日の人には日本では将来に選択肢がほとんどなく希望を抱いて北朝鮮へ渡ったんですね。
でもお兄さんたちは行く前に何か嫌な予感がしていたのでしょうか。
私たちの知らない北朝鮮の一般の生活。お兄さんたち、帰国者たちは慣れるのにどれだけ苦労したことか。もしくは慣れることなく精神を病んでしまうか。改めて恐ろしい国だと感じました。
家族の葛藤が丁寧に書かれていてまるでドラマをみているようであっという間に読み終えてしまいました。 -
Posted by ブクログ
著者には北朝鮮に「帰国」した3人の兄がいて、それぞれがどうにも言いようのない人生を歩まされている。芸術家肌だった長兄は、精神を病んで亡くなってしまう。次兄は三度の結婚を経て、半分あきらめたかのように自分を抑えながら、ささやかな幸せのなかで生きている。末兄は病気で、束の間の帰国を許されるが、予定を大幅に短縮され、治療もままならないまま北朝鮮に帰る。
一家をあげて、期待しては裏切られ、憤ることもできないままあきらめる。どこか麻痺したかのように、努めて感情を動かさないように生きていくしかないような人生。これを一つの国が強いているという現実。しかも、それは意図的に行われているのだろうか。ただ、コマや機 -
Posted by ブクログ
昔、李恢成『伽耶子のために』を読んだとき、立原正秋『冬の旅』を読んだとき、自分の生まれた国や「民族」について普段は、輪郭を持たない漠然茫然混沌とした思念しかもたない日本人には、刺激が強すぎる文学だと感じた。本作は、時代が下がる分ずっと現代的で、個人主義への賛を前面に出してはいるものの、同じ読後感を残す。なぜ、民族の出自にそれほどプライドをかける人々がいるのか、それを賛美強制する政体が存在するのか。これは朝鮮半島の特殊事情なのか、それとも、20世紀前半の帝国主義とナチズムと共産主義のないまぜによって、世界史的にユーラシアの東西で、共通に不幸にも発生した国際政治学的現象なのか、あるいは人類学的な根
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Posted by ブクログ
一年ほど前に映画をCSで観て原作がある事を知り、読むに至る。
映画はどうしても時間の都合があったりで飛ばし飛ばしになるが、原作は詳細に書かれている。
ヨンヒさんの文章はとても読みやすくて、難しい内容だけれどスラスラと頭に入ってくる。そして、身内の事をここまであからさまに書いてくださったヨンヒさんにも感謝したいし、これはヨンヒさんでなければ書かなかっただろう。
地上の楽園と謳われて北朝鮮の帰国事業に従事した、3人の兄。その中身を覗いてみれば、矛盾に次ぐ矛盾と己の思考を停止させることが生きることで、成分(身分)と金が物をいい、国を挙げてのプロパガンダ活動等々、市民の生活全てをがんじがらめにさせ