あらすじ
各賞総ナメの映画「かぞくのくに」の原作本。
人生に「もしも」はない。私たちの家族のひとりが「もしも・・・」と口にした時点で、きっと私たちの間で何かが壊れる。それが「何か」はわからないけれど、私たちの誰もが、この言葉を口にしたことがない。でも私は思ってしまう。もしも兄が帰国していなかったら?(本文より)~1960~80年代に日本から北朝鮮に10万人ちかくが移住した「帰国事業」。旗振り役だった総連幹部の一人娘として生まれたヤンヨンヒ監督。パラダイスを夢見て北朝鮮に渡っていった3人の実兄と日本に残った両親とヤン監督。国家や思想によって引き裂かれてしまった「かぞく」に突きつけられた厳しい現実をリアルに綴った感涙のドキュメンタリーノベル。昨年「映画芸術」2012年日本映画ベストテン第一位、第86回キネマ旬報日本映画ベストテン第一位、第55回ブルーリボン賞作品賞、第64回讀賣文学賞戯曲・シナリオ賞ほか各賞を総ナメした話題の映画「かぞくのくに」の監督が涙ながらに綴った原作本。
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Posted by ブクログ
著者には北朝鮮に「帰国」した3人の兄がいて、それぞれがどうにも言いようのない人生を歩まされている。芸術家肌だった長兄は、精神を病んで亡くなってしまう。次兄は三度の結婚を経て、半分あきらめたかのように自分を抑えながら、ささやかな幸せのなかで生きている。末兄は病気で、束の間の帰国を許されるが、予定を大幅に短縮され、治療もままならないまま北朝鮮に帰る。
一家をあげて、期待しては裏切られ、憤ることもできないままあきらめる。どこか麻痺したかのように、努めて感情を動かさないように生きていくしかないような人生。これを一つの国が強いているという現実。しかも、それは意図的に行われているのだろうか。ただ、コマや機械のネジのように人の人生が翻弄されている様が何とも悲しかった。
以前映画を観てこの本を最近知りました。
昔は在日の人には日本では将来に選択肢がほとんどなく希望を抱いて北朝鮮へ渡ったんですね。
でもお兄さんたちは行く前に何か嫌な予感がしていたのでしょうか。
私たちの知らない北朝鮮の一般の生活。お兄さんたち、帰国者たちは慣れるのにどれだけ苦労したことか。もしくは慣れることなく精神を病んでしまうか。改めて恐ろしい国だと感じました。
家族の葛藤が丁寧に書かれていてまるでドラマをみているようであっという間に読み終えてしまいました。
Posted by ブクログ
やっぱり現実は、想像を超える。
日本人拉致被害者も大変だとは思うが、在日の人たちは、帰国しても日本にいても大変だということがよくわかる。
映画化もされたみたいなので、機会があったら観てみたい。
この後引き続き「朝鮮大学校」を読む気になった。
Posted by ブクログ
一年ほど前に映画をCSで観て原作がある事を知り、読むに至る。
映画はどうしても時間の都合があったりで飛ばし飛ばしになるが、原作は詳細に書かれている。
ヨンヒさんの文章はとても読みやすくて、難しい内容だけれどスラスラと頭に入ってくる。そして、身内の事をここまであからさまに書いてくださったヨンヒさんにも感謝したいし、これはヨンヒさんでなければ書かなかっただろう。
地上の楽園と謳われて北朝鮮の帰国事業に従事した、3人の兄。その中身を覗いてみれば、矛盾に次ぐ矛盾と己の思考を停止させることが生きることで、成分(身分)と金が物をいい、国を挙げてのプロパガンダ活動等々、市民の生活全てをがんじがらめにさせられる。一体、何人の朝鮮出身者がそれを信じて帰国し、本人とその家族に理不尽な世界を強いられたのか。。