安住洋子のレビュー一覧
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ネタバレ女衒に手込めにされ逃げ出し、男として首切り役人の家で中間奉公する志乃。ある夜、盗賊に襲われ大切な物を奪われてしまい、主に迷惑がかかることを恐れ奉公を辞して、女として針売りになり生きていくことにします。女としての幸せを望むべくもない志乃でしたが、密かに憧れていた壮太が同じ長屋に越してきて…、という話。
安住さんの静かな筆致の中に志乃の凛とした姿が浮かび上がってきます。辛い過去を背負いながらも何とか生きていこうとする志乃が壮太に出会い、幸せを感じる生活を送ることが出来て本当に良かったと思います。
そして壮太もまた、何やら暗い影を背負っていました。彼にとっても志乃は、辛いことにも負けず懸命に生きて -
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再読なのですが、なぜか私のデータベースの中に初読の時の感想が入っていませんでした。
調べてみると「やっぱり本を読む人々」の中に書評が残っていました。かなり感激して書いていますが、今回読んでもまさしくその通りという感触ですので、そのまま転記します。
====2011年2月6日===
とても良いです。
「しずり雪」「寒月冴える」「昇り竜」「城沼の風」の時代小説短編。
脇役に同じ人物が登場しますが、主人公や内容は異なるので。連作短編という雰囲気ではなく、それぞれ独立した話です。
表題の「しずり雪」は、晩年の熟成しきった山本周五郎を思い起こさせる、見事な市井もの。でも、女性らしい優しさがあり、模倣 -
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再読です。
下引きを主人公にした捕物ですが、やはり安住さんは良いです。
なんとも言えない情感があって、山本周五郎や藤沢周平を思わせるものがあります。
残念なのはそれらしさが伝わってこないタイトルと表紙ですね。
それにしても安住さん、2004年に『しずり雪』でデビューして10年。いまだ5作です。文庫化去れたのは4作。あまり沢山書いて荒れるのも困ったものですが、それにしても遅筆です。
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11-037 2011/04/20 ☆☆☆☆☆
どうも、タイトルと表紙の絵で手を出しかねる所もあったのですが、中身の仕上げは見事。やっぱり安住さんは良いです。
薄雲りの下 -
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ネタバレ小石川養生所で働く若き医師、高橋淳之祐。患者を治すことを第一に考えて精進していますが、養生所の現実はなかなか厳しくて看護の人手の面でも薬代等の費用の面でも思うようにはいきません。それでも看護中間の伊佐次や下働きのお瑛等、一生懸命働いてくれる人達に希望を持ちながら、完治が難しい患者と向き合っています。淳之祐の実父と関わりのある者が患者にいると知って淳之祐の心は揺れ動きますが…。
淳之祐の周囲は優しい人だらけです。養父母は愛情深く接してくれたし、義兄は淳之祐を可愛がってくれました。だから、まっすぐ育ったのでしょうね。彼がこの先蘭学を学び、より腕のよい医者となって人々を救っていく未来が見えてきそう -
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副題、小石川診療記。
当然ながら思い出すのは周五郎さんの『赤ひげ診療譚』であり、周平さんの『獄医立花登手控え』シリーズです(ちなみにこのシリーズは私が大好きな藤沢作品のうちでも1、2を争う作品です)。
この作品の主人公の淳之介は若く、生真面目で心優しいところ、さらに多少は柔道の心得があることなど、周平さんの立花シリーズに似ています。ただやや軽率なところもあり、そのぶんさらに等身大な気がします。
ただ、やや書き込みが浅いかな。脇を固める人々も伊佐治はなかなか魅力的ですが、ヒロインのお瑛の存在感がちょっと薄い気がします。この素材なら、もっと書き込んでもっと深い物語にできた気もします。
先日から何