安住洋子のレビュー一覧

  • み仏のかんばせ

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    ネタバレ

    女衒に手込めにされ逃げ出し、男として首切り役人の家で中間奉公する志乃。ある夜、盗賊に襲われ大切な物を奪われてしまい、主に迷惑がかかることを恐れ奉公を辞して、女として針売りになり生きていくことにします。女としての幸せを望むべくもない志乃でしたが、密かに憧れていた壮太が同じ長屋に越してきて…、という話。
     安住さんの静かな筆致の中に志乃の凛とした姿が浮かび上がってきます。辛い過去を背負いながらも何とか生きていこうとする志乃が壮太に出会い、幸せを感じる生活を送ることが出来て本当に良かったと思います。
    そして壮太もまた、何やら暗い影を背負っていました。彼にとっても志乃は、辛いことにも負けず懸命に生きて

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    2018年05月07日
  • み仏のかんばせ

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    鳥羽亮さんとは逆で、なかなか新刊が刊行されない安住洋子さん、「み仏のかんばせ」、2017.12発行、著者の7冊目、デビューが2004年の「しずり雪」、6冊目が2014年の「遥かなる城沼」ですから3年以上の期間をあけての著作ですね。第1部が月明りの面影、第2部が裏庭の陽だまり。首切り役人、山田浅右衛門の元で男(松助)として14歳から24歳の10年間を過ごした志乃という女性の数寄なる生涯を描いた作品です。後に伴侶となる壮太が作品に幅と深みを与えています。読み応えがありました!

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    2017年12月28日
  • しずり雪(小学館文庫)

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    再読なのですが、なぜか私のデータベースの中に初読の時の感想が入っていませんでした。
    調べてみると「やっぱり本を読む人々」の中に書評が残っていました。かなり感激して書いていますが、今回読んでもまさしくその通りという感触ですので、そのまま転記します。

    ====2011年2月6日===
    とても良いです。
    「しずり雪」「寒月冴える」「昇り竜」「城沼の風」の時代小説短編。
    脇役に同じ人物が登場しますが、主人公や内容は異なるので。連作短編という雰囲気ではなく、それぞれ独立した話です。
    表題の「しずり雪」は、晩年の熟成しきった山本周五郎を思い起こさせる、見事な市井もの。でも、女性らしい優しさがあり、模倣

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    2016年05月29日
  • 夜半の綺羅星(小学館文庫)

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    再読です。
    下引きを主人公にした捕物ですが、やはり安住さんは良いです。
    なんとも言えない情感があって、山本周五郎や藤沢周平を思わせるものがあります。
    残念なのはそれらしさが伝わってこないタイトルと表紙ですね。
    それにしても安住さん、2004年に『しずり雪』でデビューして10年。いまだ5作です。文庫化去れたのは4作。あまり沢山書いて荒れるのも困ったものですが、それにしても遅筆です。


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    11-037 2011/04/20 ☆☆☆☆☆

    どうも、タイトルと表紙の絵で手を出しかねる所もあったのですが、中身の仕上げは見事。やっぱり安住さんは良いです。
    薄雲りの下

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    2016年05月29日
  • 春告げ坂―小石川診療記―

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    小石川養生所で働く若き医師、高橋淳之祐。患者を治すことを第一に考えて精進していますが、養生所の現実はなかなか厳しくて看護の人手の面でも薬代等の費用の面でも思うようにはいきません。それでも看護中間の伊佐次や下働きのお瑛等、一生懸命働いてくれる人達に希望を持ちながら、完治が難しい患者と向き合っています。淳之祐の実父と関わりのある者が患者にいると知って淳之祐の心は揺れ動きますが…。
     淳之祐の周囲は優しい人だらけです。養父母は愛情深く接してくれたし、義兄は淳之祐を可愛がってくれました。だから、まっすぐ育ったのでしょうね。彼がこの先蘭学を学び、より腕のよい医者となって人々を救っていく未来が見えてきそう

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    2018年02月04日
  • み仏のかんばせ

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    ずっと注目している安住洋子さんの、ようやく出版された新作です。しかし、遅筆ですね。
    過酷な過去を持つ壮太と志乃が巡り合い、所帯をもって幸せを得る姿を描いた時代小説。安住さんらしい繊細で良く練られた文体で描かれた二人がお互いを思いやる心や3人の子供の姿がとても心地良い作品です。
    難を言うならストーリー展開です。平穏なだけでは物語にならないのですが、とはいえ「闇討ち」や「盗賊団」などの扱いは、壮太/志乃の姿とややかけ離れ過ぎているように思います。もう少し、必然を感じさせる展開なら良かったのですが。

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    2018年01月28日
  • しずり雪(小学館文庫)

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    ネタバレ

    今度は安住さん、読んでみました^^ “大当たり”でした♪ 私の好きな作風です。
    人情味溢れる話、藩の大事に係ることで父を亡くした息子の話、どれも心に沁み入る短編集でした。
    養生所の見習い医者の淳之祐や岡っ引きの友五郎が他の短編にも登場しているのも、話の繋がりはないけれど嬉しい。どの話も好き! 

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    2013年09月26日
  • しずり雪(小学館文庫)

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    老中・水野忠邦の改革が始まり、苛烈な奢侈取り締まりで江戸庶民たちの心も暮らしも冷え切っていた。幼なじみの小夜と所帯を持ったばかりの蒔絵職人・孝太も、すっかり仕事が途絶え、苦しんでいる。そこへしばらく連絡もなかった幼い頃の友達が、ご禁制の仕事を持ち込んできた―。切ないほどの愛、友情、そして人情。長塚節文学賞短編小説部門大賞を受賞した表題作『しずり雪』ほか、三編を収録。珠玉の時代小説はどれをとっても人生の哀感に心が震える。

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    2010年05月24日
  • み仏のかんばせ

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    う~ん、はじめはよかったのです。男として生きていかなくてはならなかった志乃をもっと長く描いてもよかったんじゃないかな。後半はどんどん展開していって、ほとんどあらすじになってしまって、もったいない。一つ一つを短編として丁寧に描いてほしかったな。

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    2018年02月04日
  • 春告げ坂―小石川診療記―

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    副題、小石川診療記。
    当然ながら思い出すのは周五郎さんの『赤ひげ診療譚』であり、周平さんの『獄医立花登手控え』シリーズです(ちなみにこのシリーズは私が大好きな藤沢作品のうちでも1、2を争う作品です)。
    この作品の主人公の淳之介は若く、生真面目で心優しいところ、さらに多少は柔道の心得があることなど、周平さんの立花シリーズに似ています。ただやや軽率なところもあり、そのぶんさらに等身大な気がします。
    ただ、やや書き込みが浅いかな。脇を固める人々も伊佐治はなかなか魅力的ですが、ヒロインのお瑛の存在感がちょっと薄い気がします。この素材なら、もっと書き込んでもっと深い物語にできた気もします。
    先日から何

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    2016年05月15日