高橋正衛のレビュー一覧
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二・二六事件に関する書籍では最もロングセラーだろう。事件の全貌とその思想的背景をまとめた良著。
新型コロナウイルスに関するニュースばかりの2月26日、久々に久々に二・二六事件に関連した本を読もうと随分昔に読んだ1冊を再読。
あらためて読んで本書の内容の的確さを強く感じる。おそらく事件を扱った書籍の中で一番のロングセラーだろう。
同期があるから行動が許されるというわけではないが、青年将校の思想は極めて純粋である。特に農村の疲弊と徴兵、富国強兵のしわ寄せの来る兵士の実情を知る隊附将校。天保銭に代表される軍閥と対照的。
本書で象徴的なのは事件を一言でまとめた言葉。
「結果的にいえば二・二六事 -
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みすず書房で現代史の史料編纂に携わってきた著者が二・二六事件について前史から収束までをまとめた作品。
事件を起こした青年将校たちの手記や省部・参謀本部の日記などを通して事件の周辺人物が局面ごとに何を考えていたのかを丹念に追っている。
また昭和初期の陸軍内の派閥争いや青年将校が「昭和維新」を求めた心情的背景を描き出し、
単なる「皇道派のクーデター」という歴史的事件としてだけではなく当時の軍人のあり方といったものが伝わってくる。
特に自分たちの部下とともに死地へ赴くという軍隊特有の苦悩からの救いを求めて天皇への信仰が隊付将校の中で深まっていくという分析や
軍隊の擬似家族的な構造の中で陸軍の若きエリ -
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五・一五事件の本を興味深く読んでこちらの事件についてもちゃんと読んでみようと思ったので手に取ってみた。1994年に出たものでかなり古いのだけど新書で今まで売り続けられているのはそれなりの内容なのかと思ったので。同じように時の首相をはじめ政府要人を暗殺するという立派なテロにも関わらず、殆どが微罪ですぐに主謀者達が釈放された五・一五事件と異なりこの事件では民間人も含めた首謀者達は事件の後すぐに銃殺刑に処されているのは何が異なるのかに興味があった。首相を暗殺できたのが不思議なくらいのドタバタだったように見える五・一五事件に比して同じくらい衝動的に決起したように見えるにも関わらずかなりの成果を上げてい
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この当時のマスコミも現在この事件を語る際、なぜ、態々蹶起した将校の前に「青年」とつけるのであろう??
そこにこの事件に対してある種「美しさ」(もしくは美化したい思いの反映)と「青臭さ」の両方を感じとったからではないないだろうか??
この「美しさ」と「青臭さ(醜)」はコインの両面であり、立場によてって見方が変わる。陛下への将校への思いと、事件当初から「反乱軍」と断定する昭和天皇のように。
この将校たちの一方的な思いこそが、現在もこの事件を語るうえで「青年」とつく理由なのかもしれない。
著者の真崎への批判は筋は通るが、これを納得させる材料には乏しく感じた。
しかし、この真崎への対応を含めて老獪 -
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明治以来、日本において唯一おきた軍部によるクーデターである「二・二六事件」については多くの本が出ているが、本書は淡々と事実を追いかけており、その全容がよくわかる本であると思った。
最近の政界に旋風をまきおこしている政治勢力に「維新の会」があるように、明治維新以来「維新」という言葉は、いまでも一定の「プラス」のイメージを持っていると思うが、現状否定の思想において、左翼の「革命」に対し右翼の「維新」という言葉が定着したのは、この事件が発端となったと言えるのではないか。
それにしても、本書を読んで「昭和維新」を標榜した「二・二六事件」の「クーデター計画」は実にずさんであると思った。
「蜂起す -
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ネタバレ高橋正衛『二・二六事件』
昭和史でも有名な二・二六事件についての本です。
著者は、この時代を生きていた人のようですね…
昭和史について…というより、軍部についててんで知らないのでは話にならないだろうと思い、新書という事もあって手を出したのですが、いや、なかなか難しかったです。
やはり軍隊の事はよくわかりません。
知識でどんなに補っても、感覚的に理解できないところがあります。
そういう意味では、私は本文中に出てきた検事と同じ立場なのだと思います。
この本は二・二六事件を時系列を追って説明するのではなく、事件そのもの、起こった背景、などに分けて章立てをしているので、組み立てるのは