春日真人のレビュー一覧
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NHKで放送したものを書籍化したもの。
ミレニアム問題の一つである「ポアンカレ予想」。
【単連結な三次元閉多面体は三次元球面と同相か】
これは、幾何学における問いで、たくさんの色んな形をした、様々な形をした積み木を、惑星規模、恒星規模、はたまた宇宙規模にかき集めた時、そうやってできた物体は「球体」ってことになるか、というもの。
地球や月が、何億年もかけて自身の重力によって球状になったことについて、擬似的におんなじ事をやっても球体になるだろうという、シンプルな問題でしたが、従来の幾何では解けません。なぜなら、表面積は有限(球体でないといけない)なのに、体積はほぼ無限なのです。球体ではない物体 -
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本書は、数学について書かれたものではなく、数学者という特殊な生き物について書かれたものである。したがって、「100の難問(ポアンカレ予想)」についての解説はほとんどなく、これを解いたペレルマンおよび、その関係者について焦点があてられている。 この方法は、決して悪いわけではなく、むしろ、ポアンカレ予想とは「3次元ホモトピー球面は3次元球面に同相」であり、これは・・・などと数学用語を並べたてるよりは良いのかもしれない(数学を学んだこと、特にトポリジーが大好きだった私にとっては若干ものたりないが)。 というわけで、この本は、謎の数学者ペレルマンに肉薄しようとする。しかし、このペレルマン、数学以外に興
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ネタバレポアンカレ予想を解いたベレルマンの、人と周辺について、書簡などを引用して説明している。
ポアンカレ予想を知らない方が、最初に読むのによい本。
なぜ、フィールズ賞を受賞しないかは、「ポアンカレ予想」
証明はどういうものか「ポアンカレ予想を解いた数学者」
を参照するとよいかもしれない。
最初に本書を読み、「ポアンカレ予想」「ポアンカレ予想を解いた数学者」の順に読んでいくと、
人と内容の両方がおぼろげながらでも理解できるかもしれない。
本書では、ポアンカレ予想がロープをかけたときに、表面から離れないように、回収できるかどうかと同じ問題だということを知りました。
また、特異点問題 -
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ポアンカレ予想を証明した数学者ペレリマンを追ったNHKのドキュメンタリー番組を元に書かれた本。
ポアンカレ予想はフランス人数学者アンリ・ポアンカレが1904年に発表した論文の最後に残した問いかけから生まれた。その問いかけとは「単連結な三次元閉多様体は、三次元球面と同相と言えるか」である。(端的に解説できない為詳細は省略)そして数学の7つの未解決問題、ミレニアム懸賞問題の一つだった。ミレニアム懸賞問題を証明した暁には100万ドルの懸賞金が約束されていた。
2006年、ロシア人数学者グレゴリ・ペレリマンによってポアンカレ予想は証明された。彼には数学界のノーベル賞と名高いフィールズ賞が授与されるこ -
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Nスペは観たけれどずいぶん前なので忘れている。でもたぶん番組の流れ通りだった気がする。四色問題の解決に、ブラックボックスである計算機の結果を信じてよいのか?という問いかけが、昨今の「AIを信じていいのか」に通ずるものがあると思った。天才サーストン博士が自分の育てられ方を窮屈だと感じていたように、大人の思惑と違う行動をする子に対して大人はどう対処してよいか分からず、自分の考えを規範とするしかなくどうしても押さえつけてしまうことはよくありそう。ポッキリ折れてしまわなければ良いけれど。本書に登場する数学者たちが純粋すぎてなぜか悲しくなる。今もこのような静かで孤独な闘いがどこかで行われているのだろう。
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2007年に放送されたNHKスペシャルの内容らしいが、番組は観ていない。
本書は番組の内容を取材の様子を交えながら、一冊の本に書き下したものである。フランスの数学者であり、物理学者でもあるアンリ・ポアンカレが提起した超難問「ポアンカレ予想」に関して、これを解決したグリゴリー・ペレリマン博士に迫ろうというドキュメンタリーのような内容だ。
内容は、ポアンカレ予想とはどんな問題かというところから始まり、時間を追ってその難問に挑戦した数学者たちの成果や苦労などが描かれている。数学についての詳細な記述はもちろん出てこないが、専門用語などは注釈にしてわかりやすい解説になっていると思った。
数学の話も、 -
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ネタバレ非常に高潔な数学者が,多数の凡庸な数学者が作り出す社会と絶縁したというのが本当のところなのではないかなと邪推します。瑣末な研究を沢山行って生まれる業績で,学会に幅を利かせる人はどの業界にもいるからねぇ。
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彼の怒りは理解できないわけでもないですが。おそらく彼の心の中では,[フィールズ賞を]辞退したほうが気が楽だったのでしょう。(p.119 スメール博士の言葉)
数学の本質とは,世界をどういう視点で見るかということに尽きます。数学的な考え方を学べば,日常はまったく違って見えてきます。文字どおりの『見る』,つまり網膜に映るという意味ではありません。学ぶことによって見えてくるという -
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ネタバレ数学における最大の難問のひとつポワンカレ予想を証明し、一躍時の人となったものの、栄誉を拒み姿をくらませた天才数学者ペレリマンの実像に迫る、という数学ドキュメンタリー。数学という普通一般人が敬遠しがちな学問分野を扱う上では仕方のないことかもしれないが、周辺情報を盛り込みすぎて(その上それらについての解説は浅く、むしろ消化不良になる)、一番重要であろうペレリマンがこの予想と格闘する数年間の描写がかなり手薄になっていたことはいささか残念だった。とはいうものの、この本全体を通して語られる「問題と対峙する上で、ひとりでストイックに問題のことだけを追及するのか、自分の研究時間を犠牲にしてでも外部と交流をも