菅原潤のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ドイツの思想史において、ドイツ観念論の哲学者であるヘーゲルの「弁証法」と、ドイツ・ロマン派の論客シュレーゲルの「イロニー」の概念は、密接なかかわりをもっています。ところが日本の思想史研究のなかでは、この二つの概念が関連づけて論じられることはまれでした。本書は、じつは近代日本の思想史においても、「弁証法」と「イロニー」の概念は、けっして遠くへだたったものではなかったということを明らかにし、近代日本思想史の分断を架橋することをねらっています。
近代日本哲学のなかで「弁証法」をみずからの思想の重要な概念として採用したのは、哲学者の田辺元でした。一方「イロニー」は、日本浪漫派の保田與重郎によって主題 -
Posted by ブクログ
「京都学派」とは、西田幾多郎、田辺元をはじめ、世界水準と評される西洋哲学研究者を輩出しながらも、1942年に「近代の超克」を掲げて行われた座談会などが、戦後、日本の軍国主義を擁護したものとみなされ、知的A級戦犯という扱いを受けてきた、京都大学に基盤をおく哲学研究グループのこと。
その悪名高い存在は知っていても、彼らの思想の難解さゆえに、「日本が西洋近代を超克する存在になる」というくらいの思想なのだろう程度で、本当のところ何を論じていたのか、実はよく知らなかったのです、恥ずかしながら。それが新書でわかりやすく解説されているというのだから、よし今こそ宿題をかたづけてやろうという勢いで読み始めました -
Posted by ブクログ
三木清の思想と行動を知るにつけ、聖人はいないのだ、との感を強めた。私の知っている三木清像は誰が描いたのだろうか。
また、戦争という国家規模の動きに巻き込まれないことがいかに難しいかを痛感する。科学だけでなく、パラダイムはあらゆる分野に確実に存在する。後の時代から声高に断罪することの意味はいかほどか。
上山 春平の「ネガ」としての日本文化論は興味深い。ナショナリズム克服の方途としての視点だけでなく、健全なナショナリズム構築の視点もあるからだ。
本書で記述されている、思想的な部分と心情的な部分の人間模様は京都学派に限らず、他の分野でも必要な切り口だろう。
また、全体的に哲学的な思考を入口っ -
Posted by ブクログ
近代の日本において独創的な哲学的思索を展開した京都学派について、戦後の展開も含めて解説している本です。
京都学派といえばその領袖の西田幾多郎をはじめ、西田の批判者の田辺元や宗教哲学の西谷啓治、あるいは京都学派左派の三木清らの名前がよく知られていますが、本書は彼らのほか、「世界的立場と日本」の座談会に出席し戦後責任を追及されて公職追放にあった高坂正顕、高山岩男、鈴木成高、西谷啓治らの議論の問題と意義について、比較的くわしい検討がなされています。さらに、京都学派の思想的遺産を戦後に引き継いだ三宅剛一と上山春平にもページを割いて、より広い観点から京都学派の思想史的意義を見なおそうとしています。