マルセル・モースのレビュー一覧

  • 贈与論 他二篇

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    現代の貨幣経済は、合理性や契約によって個人の自由を確保している。そこでは、古代社会の経済を成り立たせていた、贈与による「関係の厚み」や「返礼の義務」は見当たらない。贈与は今や慈善か例外の行為とされ、構造からは切り離されている。

    個人的には、日本がこのまま欧米型の資本主義・個人主義を推進しても、大きな成果は見込めないと思っている。アメリカのように、競争と自由を徹底的に突き詰めてきた国には、制度的にも文化的にも敵わない。むしろ日本は、元々モースの描く贈与経済的な価値観に親和性がある(内向きで、互酬的・集団主義的な土壌がある)のだから、そっちで集団としての結束力を高めた方が勝ち目あると思うんだけど

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    2025年04月05日
  • 贈与論 他二篇

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    贈与は資本経済とは違う軸で動く、という新たな視点、そして贈与に係る様々な「なにか」を強く感じられ、とてもよかった。現代でも贈与が残る理由がよくわかり、そして自分たちがとるべき行動や今何も考えずとっている行動について再考する良いきっかけになった。

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    2022年10月31日
  • 贈与論

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    贈与は呪い。「贈与交換」は無限ババ抜き。
    貨幣経済とどっちがカオスか、と問われると難しいが、個別清算であるぶん、貨幣経済のが健全だろう。
    一方で貨幣はムラを分断するだろうから、互助の精神は希薄化するのだろうな。

    読むほどに不安と恐怖を感じる。
    呪いとしての贈与文化は苦手。
    しかし何度も読み返したくなる蠱惑的な本。
    GIVE&TAKEみたいなペラい本と違い、プリミティブな人類に対する示唆が超絶多い。

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    2022年08月12日
  • 贈与論 他二篇

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    お金にならない価値の「価値」を言語化したくて読んだ。
    読後の結論は、

    お金にならない価値の「価値」は、人と人との繋がりを生む、という価値である。金銭での等価交換は、一回きりであり、繋がりや関係性を関係性を生むことはない。

    という点に収まった。納得。

    ***
    贈与と返礼は、人間社会の特徴の一つ。

    人間は、贈与を受けると、お返ししなければ、という気持ちになる。(なぜそうなるのか本書では明かされていないが、人間の特性として備わっているようである。)そして、この贈与とお返しは、お返しに対するお返し、そしてさらにそのお返しに対するお返し、というように、やりとりに連続性が生まれ、贈与者と被贈与者を

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    2021年07月11日
  • 贈与論

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    贈与論
    人やモノを全て含んだ円環状の贈与体系をトロブリアントの民族からの実地調査をもとに検証している。また、贈与をするための霊的な感覚による根拠(ハウなど)を同時に示し、人類の経済の基層に贈与・交換があることを明らかにした。
    ハウとは、何か物を与えられたら、人に与えなければならない。そうしないと、落ち着かないという気持ちを霊的存在に見立てて解説したものである。モノをもらっても人にあげなければ、ハウという悪い神が持ち主をどんどん蝕んで最後には殺してしまうというのである。これは、ものではわかりにくいが情報ならどうだろう。噂話を聞いたら人に語りたくなってしまう気持ちは、ハウによるものではないかと思う

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    2017年01月04日
  • 贈与論

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    [メモ(暫定)]一連の研究の問題意識は「未開あるいはアルカイックといわれる社会において、受け取った贈り物に対して、その返礼を義務づける法的経済的規則は何であるか。贈られたものに潜むどんな力が受け取った人にその返礼をさせるのか」であり、モースが分析の対象としたポトラッチやクラは以下の特徴をもっている。①交換し契約を交わす義務を相互に追うのは個人ではなく集団である、②彼らが交換するものは、専ら財産や富、動産や不動産といった経済的に役に立つものだけでなく、何よりもまず礼儀、饗宴、儀礼、軍事活動、婦人、子供、舞踊、祭礼、市といった社会の全領域にわたる資源であり (全体的給付)、経済的取引はその一部にす

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    2012年11月07日
  • 贈与論

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    全人類に共通する慣習「贈与」。

    これは、単に与えるだけではなく、受け取った側が返礼の義務を負うという点に特徴がある。
    また、贈与に対する返礼といっても単なる物々交換ではなく、宗教的・法的・競争的・経済的・政治的な要素を多分に含んでおり、それらは全て集団的である。

    本書は、世界各所および、あらゆる時代における人類社会の贈与活動についての考察を通して、現代社会が陥っている個人主義偏重を批判している。

    本書で提案されているのは、貨幣経済に偏重しない、より集団社会的な人類の営みである。

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    2011年11月27日
  • 贈与論

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     特に一部の地域コミュニティでは、人間の活動は贈与で成り立っている。そこには、霊とのつながりから導き出される現所有者との
    過去所有者とのつながりがある。それが、恐らく地域コミュニティにおいての不和をなくさせてきたのかもしれない(もしかしたら、逆なのかもしれないが)。
    では、なぜ現代社会では不和がすぐ近い人間同士でも起こるのか?それは、現代社会がつながりを見えなくしているからかもしれない。
    人間、やはり視覚でとらえられないものに対しては非常に弱い(ラ・ポール効果の目隠しした人の誘導でも分かるが…)。それが人とのつながりを
    希薄にさせているのか…。考えさせられる逸品である。

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    2009年10月07日
  • 贈与論 他二篇

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    日常で論文を読むことが少ないので難儀。読後、自分なりに資本主義との関係を考察するなど社会の本質を探りたくなる欲が湧くきっかけをくれた。
    贈与論−アルカイックな社会における交換の形態と理由−贈与に対しお返しが義務付けられているお話。メラネシアやポリネシア、アメリカ北西部でおこなわれるポトラッチを軸に遅れた社会、もしくはアルカイックな社会においては、法規範と利得の追求にかかわるどのような規範があって、贈り物を受け取るとお返しをする義務が生じるのだろうか。贈与されるものにはどのような力があって、受け手はそれに対してお返しを仕向けられるのだろうかを論及していく。
    「贈与」贈与=交換という原理がこうした

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    2024年10月16日
  • 贈与論 他二篇

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    「贈与」
    贈る義務、受け取る義務、返還する義務が存在する。

    はるか昔から、人間社会の基底に存在してきた贈与というシステム。
    そのシステムは様々な社会関係を安定化させ、発展することに寄与してきた。
    確かに、資本主義というシステムが世界中を席巻する現代においても、システムとしての「贈与」は存在しているように思う。
    しかし、その存在の仕方は、現代社会のシステム全体においてはあくまで細い支流の1つ程度のもので、贈与というシステム単体で、資本主義そのものを脅かすほどの存在ではないだろう。

    ただし、近年は、産業化の過剰がもたらす環境問題やグローバル化による市場のカオス化、格差拡大など既存の資本主義シス

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    2023年10月26日
  • 贈与論 他二篇

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    何もかもが独立、分裂している今日の西洋的な社会とは対称的に、このような何もかもがつながり、循環している社会もあるのだ知ることができたのが、この本を読んでのなによりの収穫だった。
    この社会に住む人々にとって、幸福とは富を限りなく増やしていくことではなく、増やし蓄えた富を皆と分かち合ったその先にあるものなのだ。みんなが自分の一部を誰かに分け与えあい、モノ、ヒト、さらに霊や魂、神までひっくるめて文字通り大きな輪になっているのには感動すら覚えた。

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    2021年09月12日
  • 贈与論

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    様々な地域に残る贈与と返礼の義務という伝統的な習慣を膨大な資料を元に比較研究し、贈与の与える社会的な役割や影響を研究した書籍。現代の日用品の交換などの贈与との違いは精神のコミュニケーションでもあること。贈与は神聖な儀式であり、富を破壊(消費)することで争いではなく信頼関係を築き、クラン同士の結びつきが強まり文化圏を広げ、また再生することで循環が生まれ文化が成熟していったのかと思います。最初難しかったけど、終盤で突然頭の中のゴリラ達が一斉に立ち上がり武器を捨て、経済活動をする瞬間があって気持ちよかったです。

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    2021年04月27日
  • 贈与論 他二篇

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    ネタバレ

    前半は贈与が歴史的にどうのように変遷をしてきたかをまとめてくれている。
    贈与が人類にどのような影響や意味があるのかを第4章の結論でまとめてくれている。
    忙しい方は第4章のみを読めば良いと思う。それでもこの本の価値は、極めて高いと思う。

    贈与=契約▶贈与=交換、義務、かけ、礼を礼で返すもの
    贈与は他者を支配する志向のもとにある≒相手を自分の意のままに操る
    社会システム(政治・経済)=お互いに贈与をしあっている社会形態
    有機的連帯(統一性と統合性が備わっている)=社会の発展に与え、受け取り、お返しをする。
    幸せ、平和を定立させるために、労働として適切に秩序づけられたものがある。富として蓄積され、

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    2020年03月23日
  • 贈与論 他二篇

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    マルセルモース 「 贈与論 」

    贈与を 集団間における給付と定義し、お返し(反対給付)を義務としている。集団間の贈与が 集団の規範、宗教儀礼、交換経済に組み込まれている

    「贈与により 人、物、霊魂が混じり合う」感覚は 集団の感情を理性的にコントロールする手段だったのではないか?

    全体的給付の体系→交換(集団から集団へ)
    *法的、政治的、経済的、宗教的な体系
    *給付と反対給付を繰り返すことにより 相互に結びつく
    *交換するのは 財、ふるまい、饗宴、女性、子供、踊り

    ポトラッチ=競覇型全体的給付(相互に対抗し合う)
    *お返しは 絶対的な義務
    *富によって授けられる名誉、権威→義務を果たさな

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    2018年08月15日
  • 贈与論 他二篇

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    (01)
    最終章では、政治、社会、経済、倫理の各側面から現代における贈与のあり方を示唆しており、著者が過去や他の民族を生きられている世界としてとらえている点は重く受け止める。
    贈与は、決して一方的な(*02)ものでもないし、贈与が非対称である場合は、社会全体としてバランス(*03)が図られるように機能することをも示している。物々交換や自然経済といった概念が一般的に流布している未開の単純さといった認識を批判し、贈与や交換が単なる経済の範疇にとどまらない拡散や集中を現象することを捉えている。

    (02)
    売買がバイバイとして、売ることと買うことが等価というよりも同義であること、担保や保証や分割や賃

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    2016年10月22日
  • 贈与論

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    今春ころから気になっていた、モースの『贈与論』を読みました。
    モース(1872-1950)は社会学者であり、民俗学者であり、
    当時の彼の学生や交友のあった学者からは、「彼は何でも知っている」と言われたり、
    思われたりしていたそうです。そういう博識の大学者タイプの人だったようです。

    さてさて、ずっと頭に引っかかっていて、
    きっと現代の生きにくさをやわらげる一つのヒントになるんじゃないかと思えていたこの『贈与論』。
    その贈与についてですが、まず原始的な社会において、「物々交換」とされるような、
    その文字通りの意味での淡泊な交換は存在しなかったみたいです。
    霊とか魂、そう書くとオカルト的に思えちゃ

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    2014年09月11日
  • 贈与論

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    ドイツ語におけるGiftは「毒」の意味も併せ持っているというのは象徴的だ。そう、資本主義が商品の売買によって他者との関係を築くのに対して、それ以前の未開社会は相互の贈与によって他者との関係を築き、それは政治や法律の代替として機能していた。だからこそ贈与には受領や返礼の義務が付随するのであり、それは又物品だけでなく感情の交換をも担う行為でもあった。「貰ったのと同じだけ施しなさい。そうすれば万事上手くいく」これは決して偽善から生じたものではなく、人類の歴史が育んだ叡智の結晶であったのだ。知的興奮が止まらない。

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    2013年08月26日
  • 贈与論

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    本書は、経済は市場経済だけではないという論証になっていると思うので、市場経済に苦しめられている私としては救われる書物であった。
    贈与経済を実践するためには、贈与を義務としてとらえるというマインドや贈与先の無数のリストを保持するという条件が必要だが、未開社会や原始的な社会においては、神話や呪術や宗教や法や倫理が様々に入り組んで構造化されることで、その二つが人間に与えられている。
    そういうものをこれから組み立てようとするのは至難の業のようにも思えるが、やはり必要な気がする。最終的には、人類共同体が生き残るためのきまり(=倫理)の追求の問題になるのかな?

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    2013年12月27日
  • 贈与論

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    贈与と返礼を巡る考察。豊富な具体事例も魅力の一つ。

    古代社会・未開社会での経済を考えたとき、「物々交換」とは異なる原理が存在するのではないか、ということを事例を引きながら丁寧に説いている。本文中の引用に留まらず、注釈部においても多く事例が掲載されており、読むのにとかく時間がかかった印象。それだけに結論部で述べられている利己的すぎてはいけないし・度を過ぎた寛大であってもいけないこと、また社会学という学問のあり方についてが非常に印象的だった。

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    2012年01月03日
  • 贈与論

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    ほぼ世界の全域にわたる地域に関する資料を渉猟し、古代の法に関する文献を蒐集することによって、贈与、受領、返礼を義務とする文化が、太古から人類のあいだに、しかも地域を横断する仕方で息づいていることを、比較文化的に浮かび上がらせる文化人類学の古典的研究であるが、そのアクチュアリティは、発表から85年以上を経た今も色褪せない。本書の議論において何よりも重要なのは、人類が太古から、場所によっては「ポトラッチ」と呼ばれる蕩尽の祝祭に極まる歓待と贈与の文化を発展させてきたことであり、またそこに生まれる鷹揚な交換を可能にする関係こそが、文化そのものを育んできたという洞察であろう。それとともに、英語のinte

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    2011年11月08日