マルセル・モースのレビュー一覧
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現代の貨幣経済は、合理性や契約によって個人の自由を確保している。そこでは、古代社会の経済を成り立たせていた、贈与による「関係の厚み」や「返礼の義務」は見当たらない。贈与は今や慈善か例外の行為とされ、構造からは切り離されている。
個人的には、日本がこのまま欧米型の資本主義・個人主義を推進しても、大きな成果は見込めないと思っている。アメリカのように、競争と自由を徹底的に突き詰めてきた国には、制度的にも文化的にも敵わない。むしろ日本は、元々モースの描く贈与経済的な価値観に親和性がある(内向きで、互酬的・集団主義的な土壌がある)のだから、そっちで集団としての結束力を高めた方が勝ち目あると思うんだけど -
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お金にならない価値の「価値」を言語化したくて読んだ。
読後の結論は、
お金にならない価値の「価値」は、人と人との繋がりを生む、という価値である。金銭での等価交換は、一回きりであり、繋がりや関係性を関係性を生むことはない。
という点に収まった。納得。
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贈与と返礼は、人間社会の特徴の一つ。
人間は、贈与を受けると、お返ししなければ、という気持ちになる。(なぜそうなるのか本書では明かされていないが、人間の特性として備わっているようである。)そして、この贈与とお返しは、お返しに対するお返し、そしてさらにそのお返しに対するお返し、というように、やりとりに連続性が生まれ、贈与者と被贈与者を -
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贈与論
人やモノを全て含んだ円環状の贈与体系をトロブリアントの民族からの実地調査をもとに検証している。また、贈与をするための霊的な感覚による根拠(ハウなど)を同時に示し、人類の経済の基層に贈与・交換があることを明らかにした。
ハウとは、何か物を与えられたら、人に与えなければならない。そうしないと、落ち着かないという気持ちを霊的存在に見立てて解説したものである。モノをもらっても人にあげなければ、ハウという悪い神が持ち主をどんどん蝕んで最後には殺してしまうというのである。これは、ものではわかりにくいが情報ならどうだろう。噂話を聞いたら人に語りたくなってしまう気持ちは、ハウによるものではないかと思う -
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[メモ(暫定)]一連の研究の問題意識は「未開あるいはアルカイックといわれる社会において、受け取った贈り物に対して、その返礼を義務づける法的経済的規則は何であるか。贈られたものに潜むどんな力が受け取った人にその返礼をさせるのか」であり、モースが分析の対象としたポトラッチやクラは以下の特徴をもっている。①交換し契約を交わす義務を相互に追うのは個人ではなく集団である、②彼らが交換するものは、専ら財産や富、動産や不動産といった経済的に役に立つものだけでなく、何よりもまず礼儀、饗宴、儀礼、軍事活動、婦人、子供、舞踊、祭礼、市といった社会の全領域にわたる資源であり (全体的給付)、経済的取引はその一部にす
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特に一部の地域コミュニティでは、人間の活動は贈与で成り立っている。そこには、霊とのつながりから導き出される現所有者との
過去所有者とのつながりがある。それが、恐らく地域コミュニティにおいての不和をなくさせてきたのかもしれない(もしかしたら、逆なのかもしれないが)。
では、なぜ現代社会では不和がすぐ近い人間同士でも起こるのか?それは、現代社会がつながりを見えなくしているからかもしれない。
人間、やはり視覚でとらえられないものに対しては非常に弱い(ラ・ポール効果の目隠しした人の誘導でも分かるが…)。それが人とのつながりを
希薄にさせているのか…。考えさせられる逸品である。 -
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日常で論文を読むことが少ないので難儀。読後、自分なりに資本主義との関係を考察するなど社会の本質を探りたくなる欲が湧くきっかけをくれた。
贈与論−アルカイックな社会における交換の形態と理由−贈与に対しお返しが義務付けられているお話。メラネシアやポリネシア、アメリカ北西部でおこなわれるポトラッチを軸に遅れた社会、もしくはアルカイックな社会においては、法規範と利得の追求にかかわるどのような規範があって、贈り物を受け取るとお返しをする義務が生じるのだろうか。贈与されるものにはどのような力があって、受け手はそれに対してお返しを仕向けられるのだろうかを論及していく。
「贈与」贈与=交換という原理がこうした -
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「贈与」
贈る義務、受け取る義務、返還する義務が存在する。
はるか昔から、人間社会の基底に存在してきた贈与というシステム。
そのシステムは様々な社会関係を安定化させ、発展することに寄与してきた。
確かに、資本主義というシステムが世界中を席巻する現代においても、システムとしての「贈与」は存在しているように思う。
しかし、その存在の仕方は、現代社会のシステム全体においてはあくまで細い支流の1つ程度のもので、贈与というシステム単体で、資本主義そのものを脅かすほどの存在ではないだろう。
ただし、近年は、産業化の過剰がもたらす環境問題やグローバル化による市場のカオス化、格差拡大など既存の資本主義シス -
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ネタバレ前半は贈与が歴史的にどうのように変遷をしてきたかをまとめてくれている。
贈与が人類にどのような影響や意味があるのかを第4章の結論でまとめてくれている。
忙しい方は第4章のみを読めば良いと思う。それでもこの本の価値は、極めて高いと思う。
贈与=契約▶贈与=交換、義務、かけ、礼を礼で返すもの
贈与は他者を支配する志向のもとにある≒相手を自分の意のままに操る
社会システム(政治・経済)=お互いに贈与をしあっている社会形態
有機的連帯(統一性と統合性が備わっている)=社会の発展に与え、受け取り、お返しをする。
幸せ、平和を定立させるために、労働として適切に秩序づけられたものがある。富として蓄積され、 -
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マルセルモース 「 贈与論 」
贈与を 集団間における給付と定義し、お返し(反対給付)を義務としている。集団間の贈与が 集団の規範、宗教儀礼、交換経済に組み込まれている
「贈与により 人、物、霊魂が混じり合う」感覚は 集団の感情を理性的にコントロールする手段だったのではないか?
全体的給付の体系→交換(集団から集団へ)
*法的、政治的、経済的、宗教的な体系
*給付と反対給付を繰り返すことにより 相互に結びつく
*交換するのは 財、ふるまい、饗宴、女性、子供、踊り
ポトラッチ=競覇型全体的給付(相互に対抗し合う)
*お返しは 絶対的な義務
*富によって授けられる名誉、権威→義務を果たさな -
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(01)
最終章では、政治、社会、経済、倫理の各側面から現代における贈与のあり方を示唆しており、著者が過去や他の民族を生きられている世界としてとらえている点は重く受け止める。
贈与は、決して一方的な(*02)ものでもないし、贈与が非対称である場合は、社会全体としてバランス(*03)が図られるように機能することをも示している。物々交換や自然経済といった概念が一般的に流布している未開の単純さといった認識を批判し、贈与や交換が単なる経済の範疇にとどまらない拡散や集中を現象することを捉えている。
(02)
売買がバイバイとして、売ることと買うことが等価というよりも同義であること、担保や保証や分割や賃 -
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今春ころから気になっていた、モースの『贈与論』を読みました。
モース(1872-1950)は社会学者であり、民俗学者であり、
当時の彼の学生や交友のあった学者からは、「彼は何でも知っている」と言われたり、
思われたりしていたそうです。そういう博識の大学者タイプの人だったようです。
さてさて、ずっと頭に引っかかっていて、
きっと現代の生きにくさをやわらげる一つのヒントになるんじゃないかと思えていたこの『贈与論』。
その贈与についてですが、まず原始的な社会において、「物々交換」とされるような、
その文字通りの意味での淡泊な交換は存在しなかったみたいです。
霊とか魂、そう書くとオカルト的に思えちゃ -
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本書は、経済は市場経済だけではないという論証になっていると思うので、市場経済に苦しめられている私としては救われる書物であった。
贈与経済を実践するためには、贈与を義務としてとらえるというマインドや贈与先の無数のリストを保持するという条件が必要だが、未開社会や原始的な社会においては、神話や呪術や宗教や法や倫理が様々に入り組んで構造化されることで、その二つが人間に与えられている。
そういうものをこれから組み立てようとするのは至難の業のようにも思えるが、やはり必要な気がする。最終的には、人類共同体が生き残るためのきまり(=倫理)の追求の問題になるのかな? -
Posted by ブクログ
ほぼ世界の全域にわたる地域に関する資料を渉猟し、古代の法に関する文献を蒐集することによって、贈与、受領、返礼を義務とする文化が、太古から人類のあいだに、しかも地域を横断する仕方で息づいていることを、比較文化的に浮かび上がらせる文化人類学の古典的研究であるが、そのアクチュアリティは、発表から85年以上を経た今も色褪せない。本書の議論において何よりも重要なのは、人類が太古から、場所によっては「ポトラッチ」と呼ばれる蕩尽の祝祭に極まる歓待と贈与の文化を発展させてきたことであり、またそこに生まれる鷹揚な交換を可能にする関係こそが、文化そのものを育んできたという洞察であろう。それとともに、英語のinte