NHKスペシャル『メルトダウン』取材班のレビュー一覧
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まずはNHK取材班の地道で粘り強い調査取材に敬意を評したい。時に政権におもねるようなことをする信用できないメディアに思われることもあるが、このように優秀で気骨のある記者たちがいるのだと改めて認識する。言葉では言い尽くせない未曾有の危機の連鎖の中、命を賭して事故対応に尽力し続けた吉田所長はじめ東電職員の姿に、深く心を揺さぶられた。ここで語られている失敗の本質は、国民に深く根ざしたものかもしれず、将来再び突きつけられることもあるだろう。もはや忘れ去られようとしている気の遠くなるような廃炉作業を負うのは、NHKなど見ない未来の若者たちだ。外国人問題などよりこっちの方がずっと差し迫った危機だと思うんだ
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Posted by ブクログ
まず、その取材力に驚いた。深堀りし続ける探究心と熱意。未曾有の事故を何とか教訓として次世代に活かし、同じような災害を招いてはいけないとの思いがひしひしと伝わってきた。
その中で導き出されたポイントを自分なりに噛み砕いたものとして簡単に列挙してみた。
①日本人らしい特徴なのか知識のみの机上の空論が主体となりやすく、一方で職人気質の経験のみに頼ってしまうという2パターンに陥る傾向にある。そのため、不足の事態に対して経験がないから動けない。もしくはブラックボックス化した属人性のみでしか対応できず、チームで動くことができないため、軋轢や混乱が生じる。まず、精緻なマニュアルもしくは履歴を残し、知識と -
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3基もの原子炉がメルトダウンした福島第一原発事故において、事態の悪化を一気に加速させたきっかけは最初に水素爆発を起こした1号機でした。1号機の冷却には「イソコン」と呼ばれる非常冷却装置があったのにも関わらず、事故当時その設備が稼働していなかったという致命的な誤認がありました。1号機運転開始から約40年間、「イソコン」を訓練でも実際に稼働させてこなかったことが原因でした。なぜ原子炉冷却に最重要な設備の訓練が実施されてこなかったのか、関係者への取材と資料をもとに追及していきます。
後半は膨大なテレビ会議の記録から、なぜ「イソコン」の稼働状況を誤認するに至ったのかをAIを用いて解析した結果を報告して -
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今年の3月11日が来ると、東日本大震災と福島第一原発の事故の
発生から4年目となる。民放は3月11日が近くなると特番を組む
が、あの原発事故を長期に渡って丹念に追っているのはNKH
くらいだろうか。
NHKスペシャルは時間が許せば見ているが、見逃している回数
の方が多い。なので、本書のような書籍版はなるべく購入して
読むようにしている。
本書は未だ多くの謎に包まれている福島第一原発事故について、
関係者や研究者に取材し、7つの謎について解明しようとしている。
1.1号機の非常用冷却装置が津波直後から動いていないことに
なぜ、気が付かなかったのか。
2.メルトダウンした1号機のベントが -
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NHKスペシャル『メルトダウン』の取材範囲よる、同番組を本にしたものだが、活字というものは中断、読み返し、先読みが出来るのでありがたかった。
過剰な表現は避けて、徹底的な取材と検証を心がけている。
これはNHKでしかできなかったのだろうなあ。
タイトルには『7つの謎』とあるが、読み進めば、まだまだ分ってないことが多いことが解る。事故の検証はまだまだ、これからなのだ。というよりも、検証可能なのだろうか。
そんな状況なのに原発を再稼働するとかを言う人間はどうかしていると言わざるを得ない。
福島原発事故(事件)検証本としては第一級のものであることは間違い無いが、これを超えるものが生まれなければなら -
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福島第一原発事故を時系列に説明して何が起こったのかが分かるように、かつ、分かりやすく書かれている本。NHKスペシャルで放送されたものをもとに書かれているのかな。テレビで見られなかったのが残念。と、思わせるほど、リアルに福島第一原発の現場で起きたことや復旧作業について書かれています。読んでてリアル感があるので、読んでる方にも緊張を強いますね…。
これを読むと事故を酷くしたのは現場を無視、というか理解できなかった政府の対応の不味さも大きいのではないかしらん。この事故をより詳細に調べたら、政府の責任を問う結果になりそう。特に政府主導の放水作業実施のため、電源復旧が3月17日から20日、22日まで遅れ -
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NHKスペシャルとして放映された「メルトダウン」シリーズの取材班による福島第一原発事故の技術的な解説。福島第一原発の事故は政治的な側面があったり、複数の原子炉の事故が同時並行的に進行したため、非常に複雑です。
水素爆発を起こした1号機、3号機、4号機と深刻な放射性物質の拡散を発生させた2号機の各原子炉で、それぞれどのようなプロセスで事故が進行したのかを技術的な切り口で解説しています。
この手の本では事実を詳しく解説する事に傾注すると難解すぎて理解しにくく、逆に単純化し過ぎると結局何の事か良く分からないといったことが多々あります。しかし、この本は情報の正確さと分かりやすさが両立しており、新書1冊