三橋順子のレビュー一覧
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キワモノ系の本かと思って読んだら、かなりアカデミックな内容で驚いた。著者は、戸籍上は男性で、M t F のトランスジェンダー(性別越境者)で、社会・文化史研究家。日本最初のトランスジェンダーの大学教員となった。
本書は、「古代から近代までの日本の歴史の中の現れる女装に関するさまざまな事象を取り上げ、社会・文化史的に説き明かすとともに、現代における女装コミュニティや性別認識を分析し、さらに世界の女装文化の比較文化論的位置づけにまで及ぶ。日本初の女装に関する専論書として井上章一、原武史、松岡正剛など知識人・読書人の評価が高く、現代風俗の領域での独創的な研究に対して授与される第19回(2010 -
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2008,三橋順子,「女装と日本人」講談社現代新書
日本で、古代よりどのような場面で、どのような人が女装を行ってきたか、社会はそれを、どのように受け止めていたか、というところが序章。そこから、近世、近代、現代と時間をたどっていく。
勉強になったのは、西欧諸国以外の世界では、かなり女装の男性が活躍している、ということ。西欧では、宗教(キリスト教)によって異裝者が弾圧されてきた、ということ。日本の古代は広く女装(異性裝)が行われてきたが、明治期以降の西欧医学の導入で、「変態性欲」とみなされ、「風紀を乱す」として規制され、アンダーグラウンド化した、ということ。とくに、異性裝者(もしくはホモ・セクシ -
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[ 内容 ]
ヤマトタケルの神話、僧侶と女装の稚児の恋、歌舞伎の女形、江戸の陰間茶屋、夜の新宿ネオン街…“女装”を抜きに日本文化は語れない。
[ 目次 ]
序章 日本人は女装好き?
第1章 古代~中世社会の女装
第2章 近世社会と女装
第3章 近代社会と女装
第4章 戦後社会と女装
第5章 現代日本の女装世界―新宿の女装コミュニティ
第6章 日本社会の性別認識
終章 文化としての女装
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足 -
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半ばナナメな気分で手に取ったが、面白かった。特に「日本では女装者/トランスジェンダーに対する差別はほぼない」という視点に立っているところ。プロテストの本じゃないところに好感をもった。また女装者≠女性ではない、と明示しているところ。トランスにはトランスなりの魅力があるのだ。だからこそ「パス(女性として通用する)/リード(男であることが見破られる)」という二項対立の強化を避けている。パスするのは本人かいかに女性になりきるかではなく、存在する環境や相手の視点によるところが大きい。トランスジェンダーはホモフォビアが強く、ゲイはミソジニー傾向がある、という指摘にも納得。
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女装を歴史観点からと著者本人の観点から見た本。
卒論の参考にもさせてもらったけど、扱わなかった部分のほうが面白い。
は~、みんなこうやって女装してるのか…。
著者本人の写真も結構載ってて実感する。
んで、最後のほうに書いてあったけど。
著者は自分のことを「性同一性障害」ではなく「あいまいな性」としている。
女装するけど性転換手術も戸籍転換もしない。
無理やりどちらかにつくんじゃなくて、中間地点を選んでる。
医者側からすれば「中途半端な君を治してあげようと
せっかく手を差し伸べてるのに拒むなんてばかなの?」というのは
ただの押し付けであって「偏見・差別」なんだと。
自分の考え=他人の考えで -
Posted by ブクログ
ヤマトタケルは何故女装をしてクマソ兄弟を襲ったのか、という話から始まり、「女装」という文化がいかに日本に古来から存在し、またどのように変遷していったのか。第3の性が存在しえたことは「和の思想」に繋がっていくことと思われるが、それゆえ明治維新後の西洋文化流入により分断の危機に襲われる。アンダーグラウンドかしていく中で、いかに存続していったか、また認められていったか。作者自身「女装者」ということもあり、生々しい証言なども交えながら、実態を解説してくれている。
下手な官能小説を読んでるよりも、よっぽど興奮します。稚児の話や陰間の絵は、なかなか淫猥で良い。 -
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著者の三橋順子さんは女装者で、自らの女装姿に対するナルシストである。(ぼくは一枚を除いてはあんまりきれいとは思わなかったが、三橋さんの写真をおかずにする人もいるらしい)三橋さんは女装者として夜の世界に活躍しただけでなく、日本では数少ない女装史の研究者であり、お茶の水大の講師もしているし、井上章一さんたちの日文研の研究会にも参加している(『性の用語集』講談社新書が出ている)。女装というと、ぼくが82年に中国へ行く前に突如として現れた松原留美子という人がいる。なにかのコンクールでまんまとまわりをだましてミスなんとかに選ばれた人で、帰国するといなくなっていた。(写真集はまだネットで手に入るようだが