【感想・ネタバレ】女装と日本人のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年06月29日

 キワモノ系の本かと思って読んだら、かなりアカデミックな内容で驚いた。著者は、戸籍上は男性で、M t F のトランスジェンダー(性別越境者)で、社会・文化史研究家。日本最初のトランスジェンダーの大学教員となった。

 本書は、「古代から近代までの日本の歴史の中の現れる女装に関するさまざまな事象を取り...続きを読む上げ、社会・文化史的に説き明かすとともに、現代における女装コミュニティや性別認識を分析し、さらに世界の女装文化の比較文化論的位置づけにまで及ぶ。日本初の女装に関する専論書として井上章一、原武史、松岡正剛など知識人・読書人の評価が高く、現代風俗の領域での独創的な研究に対して授与される第19回(2010年度)橋本峰雄賞(社団法人・現代風俗研究会)を受賞した」(Wikipediaより引用)。

 LGBTへの偏見差別は、明治中期以降に欧米文化(特にキリスト教)の影響というか、導入によるもの。明治初期までは、日本ではLGBTに対して「おおらか」な社会であった。変態(ヘンタイ;変質者とかいわれる)は、大正期に翻訳された「変態性慾心理」に由来していることがわかった。

 そして、あとがきにあるように、性別を超えて生きようとすることを社会悪とした19世紀以来の欧米の精神医学、この基本思想がいまだに息づいていること。「変態性慾」、「異常性欲」、「性的逸脱」、「性同一性障害」と名称こそ変えてきたものの、あいまいな性の存在を許さない性別二元制と異性愛絶対主義が今なおはびこっている。
 本書の巻末には多数の参考文献が掲載されており、勉強になること請け合い。いわゆるLGBT法案に反対したり、危惧したりしている議員さん達には、ぜひとも読んでいただきたい。

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Posted by ブクログ 2021年01月06日

一冊の中に神話の時代から現代までぎっしり内容が詰まっていて面白い!日本は異性装に寛容であったことが歴史からよくわかる。
明治の戸籍制度の始まりによって女装した男性が男性と共に生活していくことができなくなったというのも納得だった。

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Posted by ブクログ 2011年08月10日

2008,三橋順子,「女装と日本人」講談社現代新書

日本で、古代よりどのような場面で、どのような人が女装を行ってきたか、社会はそれを、どのように受け止めていたか、というところが序章。そこから、近世、近代、現代と時間をたどっていく。
勉強になったのは、西欧諸国以外の世界では、かなり女装の男性が活躍し...続きを読むている、ということ。西欧では、宗教(キリスト教)によって異裝者が弾圧されてきた、ということ。日本の古代は広く女装(異性裝)が行われてきたが、明治期以降の西欧医学の導入で、「変態性欲」とみなされ、「風紀を乱す」として規制され、アンダーグラウンド化した、ということ。とくに、異性裝者(もしくはホモ・セクシャル)に寛大だと思っていた西欧社会に対する認識は、180度変わった。
こうした歴史の流れを本書に沿って読み進むと、確かに筆者が豊富な経験をもとに主張するように、男性・女性の2元論は極端に見える。とくに、「男性が表現する女性の妖艶さ」という表現には、異性裝者に間近で遭遇した経験もないのに何故か納得できた。
コミュニティによって、あるいは、共同幻想によって性別が規定される、という視点も興味深かった。「あなたが男性なのは分かっているけれど、俺にとっては女」という、女装者とともに、対峙者も一緒にトランスジェンダーする、という認識には始めて触れた。
「曖昧な性」という、終章での著者の思想は、本書を読むまではおそらく極論に見えた。しかし、本書を読み終えた後ではそうはいかない。男/女を極めて強力に規定する社会の極端さがはっきりするからだ。

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Posted by ブクログ 2011年02月12日

女装したヤマトタケルのクマソ討伐の逸話にはじまり、江戸時代の陰間・女形、明治以降の近代化と女装に対する世論の変化、そして新宿のコミュニティに代表される現代の女装文化の発展など、自信も女装家であり性社会史研究者でもある著者が日本の”女装史”を紐解いています。写真・新聞記事・絵画など図版も豊富で、わかり...続きを読むやすい一冊です。”女装”という隠された日本文化について、手軽に知ることができる良書。

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Posted by ブクログ 2009年11月24日

日本のなかで広く容認されている、女装者の姿に迫った本。

ニューハーフが外を歩いても安全なのは、日本とタイだけだそうだ。
それを歴史的背景から説いており、とても興味深い内容になっている。

なにより著者自身が性的越境の女装者なので、一つ一つに説得力もあり、体験談も楽しく読める。

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Posted by ブクログ 2023年05月15日

神話から現代までMtFを中心に丁寧に解説された本。少し古い書籍ですが、楽しめました。

なんで興味を持って読み始めたかは覚えてないんですが、まあ現在LGBTQをはじめ様々な議論が巻き起こっている世界なんでね。

この本を読んで感じた雑な感想で言えば人間の認識や常識、価値観なんて簡単に変わるんだなぁっ...続きを読むてことですね。まあ日本は昔はすごかった!とかいう気はまったくないんですけども。西欧文化って強い。

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Posted by ブクログ 2012年01月15日

古代からの現在に至る女装とその周辺のことを、時に脱線しながらもマジメに書かれた本で大変勉強になりました。
テレビで次々にオネエキャラの人たちが登場して受け入れられているのって、なんか不思議だなあと思っていたのですが、日本に歴史的な背景があるのがよくわかりました。

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Posted by ブクログ 2010年11月23日

[ 内容 ]
ヤマトタケルの神話、僧侶と女装の稚児の恋、歌舞伎の女形、江戸の陰間茶屋、夜の新宿ネオン街…“女装”を抜きに日本文化は語れない。

[ 目次 ]
序章 日本人は女装好き?
第1章 古代~中世社会の女装
第2章 近世社会と女装
第3章 近代社会と女装
第4章 戦後社会と女装
第5章 現代日...続きを読む本の女装世界―新宿の女装コミュニティ
第6章 日本社会の性別認識
終章 文化としての女装

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

半ばナナメな気分で手に取ったが、面白かった。特に「日本では女装者/トランスジェンダーに対する差別はほぼない」という視点に立っているところ。プロテストの本じゃないところに好感をもった。また女装者≠女性ではない、と明示しているところ。トランスにはトランスなりの魅力があるのだ。だからこそ「パス(女性として...続きを読む通用する)/リード(男であることが見破られる)」という二項対立の強化を避けている。パスするのは本人かいかに女性になりきるかではなく、存在する環境や相手の視点によるところが大きい。トランスジェンダーはホモフォビアが強く、ゲイはミソジニー傾向がある、という指摘にも納得。

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Posted by ブクログ 2019年10月29日

トランスジェンダーである三橋順子さんが誘う、
「女装と日本人」は講談社現代新書。

堅苦しくなく、神話の時代から紐解く説には
納得させられると共に、読みやすくハードルも低い。

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Posted by ブクログ 2019年05月16日

女装の歴史。
確かに言われれば…というくらい昔から長い歴史があるんですね。
宗教的理由や文化など様々な視点から読み解いていて面白く読めた。女装にも公的な理由と個人的な趣向での2種類あるのかな。

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Posted by ブクログ 2011年06月26日

日本人は女装者に寛大だということが、歴史的背景+著者目線で書かれていました。
日本人に生まれてきたことを、ちょっとだけ誇りに思いました。

それにしても、ベッドシーンの描写をした絵画は衝撃的でした。こういう作品が存在することを初めて知りました…!

とりあえず印象的だったことは、鶏姦って痛そうだなと...続きを読むいうことです(*_*)

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Posted by ブクログ 2010年12月12日

女装を歴史観点からと著者本人の観点から見た本。

卒論の参考にもさせてもらったけど、扱わなかった部分のほうが面白い。
は~、みんなこうやって女装してるのか…。
著者本人の写真も結構載ってて実感する。

んで、最後のほうに書いてあったけど。
著者は自分のことを「性同一性障害」ではなく「あいまいな性」と...続きを読むしている。
女装するけど性転換手術も戸籍転換もしない。
無理やりどちらかにつくんじゃなくて、中間地点を選んでる。
医者側からすれば「中途半端な君を治してあげようと
せっかく手を差し伸べてるのに拒むなんてばかなの?」というのは
ただの押し付けであって「偏見・差別」なんだと。

自分の考え=他人の考えではないのだ。

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Posted by ブクログ 2010年10月22日

ヤマトタケルは何故女装をしてクマソ兄弟を襲ったのか、という話から始まり、「女装」という文化がいかに日本に古来から存在し、またどのように変遷していったのか。第3の性が存在しえたことは「和の思想」に繋がっていくことと思われるが、それゆえ明治維新後の西洋文化流入により分断の危機に襲われる。アンダーグラウン...続きを読むドかしていく中で、いかに存続していったか、また認められていったか。作者自身「女装者」ということもあり、生々しい証言なども交えながら、実態を解説してくれている。
下手な官能小説を読んでるよりも、よっぽど興奮します。稚児の話や陰間の絵は、なかなか淫猥で良い。

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Posted by ブクログ 2011年09月08日

ヤマトタケルの神話、僧侶と女装の稚児の恋、歌舞伎の女形、江戸の陰間茶屋、夜の新宿ネオン街……“女装”を抜きに日本文化は語れない。

タイトルに惹かれて手に取りました。
わかりやすい話の進め方でした。
ただ、学校で読んでいたので、春画が出てきたページには焦った。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

稚児とか男色についての考察がすごい。男色がゲイではないという考え方に感動。西洋文化が入ってきてここらへんの独自文化がなくなったのは残念だなあと思います。

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Posted by ブクログ 2009年10月07日

 著者の三橋順子さんは女装者で、自らの女装姿に対するナルシストである。(ぼくは一枚を除いてはあんまりきれいとは思わなかったが、三橋さんの写真をおかずにする人もいるらしい)三橋さんは女装者として夜の世界に活躍しただけでなく、日本では数少ない女装史の研究者であり、お茶の水大の講師もしているし、井上章一さ...続きを読むんたちの日文研の研究会にも参加している(『性の用語集』講談社新書が出ている)。女装というと、ぼくが82年に中国へ行く前に突如として現れた松原留美子という人がいる。なにかのコンクールでまんまとまわりをだましてミスなんとかに選ばれた人で、帰国するといなくなっていた。(写真集はまだネットで手に入るようだが)女性できれいな人はいくらでもいるが、女装者の魅力は、それがあくまで男性だからだ。だからといって歌舞伎の女形には惹かれない。このへんが不思議だ。女装史というと、一般には女性の服装史の意味でとられることが多いが、本書はあくまで男性にとっての女装を歴史的にまた、彼女?の豊かな社会体験を通して書いたものであり、内容の濃いものになっている。しかし、この世界は複雑だ。まず、性同一性障害というのは、この範疇ではない。体が男性の彼女たちは、たまたま男に生まれたのであって、実際は女性である。そういう人たちが今風俗以外の世界で活躍しだしたことはすばらしいことだ。ゲイというのは男性しか愛せない男性のことだが、この人たちは必ずしも女装に憧れるのではない。憧れる人たちは女装ゲイというらしい。新宿でも二丁目はゲイの世界で、かれらはここに女装者たちがはいってくるのを好まないそうだ。女装者たちが集まるのは新宿でも歌舞伎町だという。さらに女装愛好者の中もいろいろあって、本書では、それを細かく分析している。

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