北上次郎のレビュー一覧
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北上次郎『冒険小説論 近代ヒーロー像100年の変遷』創元推理文庫。
本の優れた読み手として、数多くの優れた書評を残し、2023年に逝去した北上次郎が8年の歳月を掛けて執筆した労作にして、大傑作。
1993年に早川書房より刊行された同名作の最終版である2008年刊行の双葉文庫版を底本に復刊。第47回日本推理作家協会賞受賞作。
改めて北上次郎の鋭い感性と読書量の凄さに驚愕した。冒険小説の捕らえ方一つを見ても、単なるヒーロー物の娯楽小説として括るのではなく、時代背景や歴史、文化を酌み取り、冒険小説を文学史の高みにまで押し上げている。そういう点で本作は北上次郎が語る冒険小説論というよりも、冒険小 -
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稀代の一流の読み手である北上次郎が、勝手に!書いた文庫解説集。日本の小説12本に海外の小説16本に書き下ろし2本を加えた全30本の文庫解説を収録。巻末には、池上冬樹、大森望、杉江松恋、北上次郎の四人による文庫解説スペシャル座談会も収録。
全30本の解説を読むと、対象となる文庫本に留まらず、同じ著者の他の作品や他の著者の同じ系列の作品などにも触れるなど、非常にマニアックな内容になっている。このような本の世界の広げ方は、本好きにはたまらない。
個人的には、この解説集で紹介されている本の半数は既読作であるのだが、未読作で読んでみたいと思ったのは、沢木耕太郎の『波の音が消えるまで』とハーバート・バ -
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北上次郎が旅立ってすぐ神保町の本屋さんでコーナーが出来ていて、そこで見つけた本です。逝去のニュースと「黒と誠」を読み始めたのが同時くらい…「本の雑誌」を読まなくなってから著者の文章に触れることはずっとなかったけど、縁あってページを開きました。圧倒的な読書量から来る知識をネタバレせずに上手に伝え読みたくさせる文章、天才的。ずっと忘れていたけどすごい!さすが本を読む時間が無くなると言って会社辞めた男!「本の雑誌」を作っている名前としては目黒孝二、ミステリー評論家、文芸評論家としては北上二郎、競馬エッセイストとしては藤代三郎、三つの名前で文章書きまくっているので、いつ本読んでいるのだろう…という生活
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急逝した目黒さんを偲んで、手にとった一冊。考えてみたら、北上次郎名義の文章はたくさん(まったくたくさん)目にしてきたけれど、単著のものはあまり読んでいなかったような気がする。今は大人になった息子さんたちを思いながら、家族を切り口にした小説評を綴った本書。しみじみと良かった。小説を読むというのは、単にプロットを追うことではなくて、細部に現れる人の姿を味わうことなのだと、あらためて教えてくれる。目黒さんは、そういう読み方をずっと身を持って示してくれた。深くこうべを垂れて感謝します。
本書には、目黒さんの息子さんたちへの思いがあふれていて、それが読みどころだ。同じく成人した子どもを持つ身としては、 -
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『すでに文庫になったものを取り上げるケースは少なくないが、それはその文庫解説に不満があるからではない。おれのほうがもっといい解説が書ける、と言う自信があるわけでもない。素晴らしい解説はすでにあるけど、でもしかし、おれにも書かせろ、と言うニュアンスにすぎないのだ』
この感じが面白い。個人的に、文庫本の解説を読んだ時に、たまにしっくりこないことがあって、好きな書評家さんが、もしこの解説を書いたらどうなのかなあ、、、と思うことがある。そんな思いをちょっと叶えてもらえたような。
巻末で、スペシャル座談会として、池上冬樹・大森望・杉江松恋・北上次郎の4名が対談をしている。その中で、大森さんが北上さんに -
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北上次郎氏のガイドブックは相変わらず純口語体で、何よりもそれが裏腹のなさを示しており、結構好感が持てる。
前回の『余計者文学の系譜』の時よりは『本の雑誌』書評の編集本ということもあり、作品の選択が一般的で愉しめた。
ただやはり書評家としてよりも一読者としての好みが全面に出ているきらいがあり、そこがいやに目に付く(まぁ、それが書評家北上氏の個性とも云えるのだが…)。
また全体的にのめり込んだ本についての書評が長く、1つのコラムのバランスが非常に悪い。これならいっそ1冊に絞り込んで徹底的に評したらいいと思うのだが。
惜しむらくはこの本を読んで触手の伸びる新たな本が見つからなかったこと。
でも