末近浩太のレビュー一覧
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高橋新書ガイドから。不勉強だけに、かなりの労力を要した読書だったけど、充足感も大きかった。何よりも、中東・北アフリカを見るにあたり、ポイントとなる視点の端緒を得られたのは大きい。すなわち、本書の章立てでもある、国家、独裁、紛争、石油、宗教。ごく当たり前にも見えるけど、その当たり前に止まらない、一歩進んだ論点にこそ、本書の独自性がある。論旨の展開についても、前章で触れられたことが、次章で深堀りされるって感じで、理解が容易になるよう、丁寧に重層的に語られていく。独裁の章に感じる既視感のように、ジェンダー指数や国民満足度において、同国家群とどっこいどっこいの自国の体たらくに、暗澹たる気持ちになる。
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ネタバレ20190527-0618 バランスよく解説された良書。2010年の「アラブの春」をきっかけに。長い封印から解き放たれた政治と宗教の関係、という古くて新しい問いに、イスラム諸国(主に中東・北アフリカか)は向き合っている。その問いに対する答えの一つが、イスラームの教えを政治に反映させるという「イスラーム主義」だった。と筆者は説く。オスマン帝国崩壊後、「あるべき秩序」の模索が今も続く中東で、イスラム主義が果たしてきた役割について、社会科学・人文科学双方のアプローチから、わかりやすく解説している。「イスラーム主義」について、前近代的なものと切り捨てるのではなく現代思想の一つとして読み解いていきたいな
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Posted by ブクログ
【「もう1つ」の解答と見なされて】近代に入り中東世界が揺さぶられる中で芽吹き,政治にイスラームを反映させることを試みてきたイスラーム主義。この考え方を様々な形を取るものとして捉え,その変遷をたどった作品です。著者は,比較政治学についての共著作品も手がけている末近浩太。
著者自身も記していますが,イスラームまたは中東政治についての日本語の書籍が数多くある一方,イスラーム主義については手に取ることができる作品の数が限られていたため,その入門として非常に魅力的な一冊でした。聞き知った歴史や出来事も,イスラーム主義の窓を通して見ると,また異なった意味合いが浮かび上がることが再確認できるかと。
〜中 -
Posted by ブクログ
複雑怪奇と思われがちな中東政治について、地域研究と政治学の両方の要素を持つ中東政治学のエッセンスを紹介しながら、「何が」起こっているかを「知る」だけではなく、「なぜ」起こったのかを「理解する」ための考え方を論じる。国家、独裁、紛争、石油、宗教という5つのテーマ別の構成となっている。
アラブの春、イスラム国の台頭、そして最近のパレスチナ(ハマース)とイスラエルの戦争など、度々深刻な問題が生起し混迷する中東政治について、「理解する」ための基本的視座を提供してくれる良書。
イスラム教の影響力が強いなど、中東は特殊な地域だとのイメージが先行しがちだが、本書はそのような中東例外論を排し、中東地域の固有性 -
Posted by ブクログ
もともとは中東のある1カ国について学べる本を探していたのだがなかなか見つからず、半ば仕方なく手に取った。だったが、「中東」「イスラム」というベールに覆われて見えにくくなっているその世界の中に政治一般理論があるのかどうかを探るような、興味深い切り口の本で、初心者にはやや難しいところもあったものの満足な読後感である。
読み通して感じたことは、そもそもの「中東」の多様性 …政体から宗教との関わり方まで、本当に様々であること。その一方で、オスマン帝国という歴史を共有し、イスラームとの関係が国家のあり方に影響を与えているという共通点がやはりあるということ。これらの切り口を通すことで各国のあり方もわかりや -
Posted by ブクログ
ネタバレたいへん意欲的な仕上がりになっていて目からウロコの一冊だ。
「中東」については、普段新聞で何らかの事件などをきっかけに、断片的に「宗教」や「政治・政体」について知る機会があるがどうもすっーと頭に入らない。本著のように中東を包括的に宗教や政治・政体、経済をつなげて解説していただくと理解が深まる、というか中東というものをとりあえず頭のなかで整理できる。
本著で紹介されている「石油の呪い」が大変興味深い。なぜ産油国は莫大な収益がありながら独自の先端産業が発展しないのだろうと思っていた。その理油が3つの呪いだ。
1 経済成長が不安定になる
石油価格の乱高下の影響やオランダ病が原因で国内