平川新のレビュー一覧
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目からウロコの本。内向きな「日本史」ではなく、巨視的な観点から日本の位置づけを論じている。
1494年のスペインとポルトガルによるトルデシリャス条約による「世界領土分割」体制の影響を当時の日本も影響を受け、ポルトガル・スペインから宣教師が来航。これらに対抗し、軍事力を誇示するために秀吉は朝鮮出兵を行なったとある。戦国時代に国内に軍事力を蓄え、秀吉・家康と国家の形を造り上げるなか、世界から「帝国」として認知されるに至り、これが日本の植民地化を防いだと分析。
それにしても、かつてからこれほど海外とのやり取りが多かったということや日本人奴隷があちらこちらにいたという事実には驚き。丹念に調べ上げた -
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戦国時代(世界史としては大航海時代)、ポルトガルやスペインがヨーロッパで覇権を握る中、アジアにもそれらの国が迫ってくる。ザビエルをはじめとするカトリック宣教師が来日したのは、偶然なのか、はたまた必然なのか。なぜスペインは日本に手を出そうとしたのか、日本を侵略してどうしようとしていたのだろうか。当時の世界情勢と共に、日本という国の特徴を改めて学ぶことができた。
日本が侵略されなかった大きな要因は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の存在が大きいだろう。信長はキリスト教の布教には寛容であったが、自分で神を名乗っている。宣教師からすれば、自ら信じているイエスキリストではなく、日本には織田信長という神が存在 -
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めっちゃ面白い。秀吉は、朝鮮を攻める10万の大軍を動員した時、マニラのスペイン総督府を恫喝した。総督は、もしかしたら、朝鮮は陽動作戦で、マニラに攻め込んで来るのではと恐れていた。
ポルトガルとスペインが勝手に世界を二分して、東西に進んで侵略を続けると、地球は丸く、出会った地の果てが日本だった。両大国は、伝説の黄金の国を征服したかったが、そこに住む民族は、好奇心旺盛で、鉄砲を手に入れると、またたくまに自分たちで量産し、もはや手に負えない強力な軍事力を持つ国となり、さらに新興国のイギリス、オランダが台頭し、日本を征服することはできなかった。
この時代の世界とのかけ引きが面白い。 -
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ネタバレ秀吉も家康も、日本国内の「天下」だけを見ていたわけでは無く、欧州列強とのゲームをプレイしていた。
家康の対外貿易方針/キリスト教対策の変遷
家康・秀忠と政宗との間の熾烈な駆け引き、情報戦
国内問題であり、対外問題でもあり。
世界を分割線としていたポルトガルとスペイン
そのスペインから独立し、アジアの海で一番荒事をしていたオランダ
彼等を追い抜かんとしていたイギリス
そんな欧州列強は、朝鮮出兵における日本の対外戦争能力を注視していた。
武力征服を断念したのみならず、布教の禁止も、貿易の制限も彼等が受け入れたのは、受け入れざるを得ないと判断させるだけの軍事力の裏付けを日本側が持っていたから。
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中国を中心にした東アジアの枠組みではなく、スペイン・ポルトガルの世界支配の枠組みの中で、信長・秀吉・家康・政宗の対外政策を見ていくとどうなるか、という内容。
特に秀吉の朝鮮出兵や明の征服は、東アジア支配をもくろむポルトガル・スペインへの反抗だという評価が一番印象的。
秀吉の「天竺を切り取る」というプランも、そこにポルトガルの貿易拠点ゴアがあることを踏まえるとインド洋交易ルートの掌握を狙っていたのでは、という妄想もふくらんでくる。
可能性や推測で語っているところも多いし、そこまで言っていいの?と思うところもあるけど、とりあえず筋は通っている。日本史を考えるうえで視野を広げてくれる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
2022年に始まる高校教科「歴史総合」、日本史と世界史を統一的に扱う科目とのことだが、正にこの本で行われている営みであり、両者を統合することで見えてくる視点があることを実感できた。
秀吉の朝鮮出兵や家康の鎖国など、日本のことだからだろうか。あまりにもあっさり片付けられてしまう。しかし、「日本が朝鮮に出兵した理由、それを受けて特に欧州各国はどう反応したか」「なぜ日本は植民地にならず鎖国を強行できたのか」という問いは、日本の部分を他の非ヨーロッパ国に変えた時に当然出てくる疑問のはずだ。まさに灯台下暗しの灯台下を照らしてくれたような一冊だった。