松本章男のレビュー一覧
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ネタバレ[ 内容 ]
曹洞宗の開祖道元は、すぐれた歌人でもあった。
良寛や川端康成が愛誦した「春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえてすずしかりけり」も道元の作である。
新古今集の歌人・慈円を大叔父に持ち、後鳥羽院宮内卿らと親交を結んだ道元にとって、歌を詠むことは自らの人生に欠かせない営為であった。
いまに伝わる四九首を、その生涯や思想をたどりながら鑑賞する。
一見平易な歌の中に込められた道元の深遠な思いが浮かび上がる。
[ 目次 ]
第1章 本来の面目―春は花・夏ほととぎす
第2章 深山の奥―山々と交わって生まれる自発心
第3章 季節の歌―道元の数奇
第4章 菩提とは何か―道元の日常1
第5章 生死事大 -
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春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて すずしかりけり
このやさしく、うつくしい和歌は、意外にも禅の高僧、難解な『正法眼蔵』の道元のものです。
著者は、律令体制の崩壊から源平が覇を競った時代がかつてこの国に無かった自然破壊のはじまりであり、鎌倉幕府の国づくりを「開発と経済優先」と位置づけます。
道元に大きな影響を与えた慈円がこれを憂えて、「春夏秋冬の風光を和歌に詠んで自然と共生交感する素養をつちかい直す新たな『国おこし』」を提唱して詠んだ今様があります。これをひきながら、この和歌の精神を読み解いています。
川端康成が『美しい日本の私』と題したノーベル文学賞受賞スピーチの冒頭で朗吟した -
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毎日新聞夕刊連載小説 『恋ふらむ鳥は』
作 澤田瞳子を楽しみに読んでいるが、本作に
出会い併読することにした。
和歌など、今までじっくり鑑賞したことはなかったが『上代語』でわかりにくいところもあたが、著者の解説や引用和歌を上手く取り入れて解説してくれているのは嬉しい。著者は何しろ楽しんでいる。
かつて転勤先で訪れた奈良にもう一度行きたくなった。
…万葉期の日本は、国としていまだ揺籃の段階にあった。(中略)歌を詠むとは生活そのものを自覚する行為にほかならなかったのであり、あらゆる作に
純朴で逞しい気概にあるれている。
新聞小説は、額田大を主人公に当時の大和朝廷…
血族関係の強い支配一族との人