山本有三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレもし自分が、このお話の主人公だったとしたら、
果たして今のように自分自身を保っていられるだろうか?
この本は何十年も前に読書感想文の為に選び、いちど読んでいますが、
改めて読み終わった今、真っ先にそう感じてます。
主人公、愛川吾一は道ばたの蹴られる石。タイトルの通り
彼は話のいたるところで理不尽な扱いを受け、ほんのささいな希望すら
踏みにじられては、それでもそのたび起き上がって生きていく
雑草魂を幼少期の頃から否応なしに求められます。
彼の生まれるすこし前の日本では、明治維新が起こり、
歴史的大転換期をうまく変化できた者と、そうでなかった者で真っ二つに割れ、
この吾一の父親、愛川庄吾の育 -
Posted by ブクログ
本の内容はあえて省く。この本の書かれた時代が偶然にせよ、完結にまでいたらせなかったことが非常に残念ではある。主人公が厳しい境遇にありながらたくましく生きていくことは素晴らしいことであるが、自分の乏しい経験からするともはや時代遅れと感じている。
20年以上も前になるが、自分がいた会社で統括部長がその年にが新入社員に訓示したことは「石の上にも三年という言葉があるが、今はそんなことはない」というものであった。去る者はとっととされ、自分のやり方についてくるものだけついてこい、と自分は理解したが当時会社の中でもプロジェクトがあまり思わしくない状況であり、目の前は誰が見ても泥船でありそれを立て直すことに運 -
Posted by ブクログ
山本有三記念館に行ったのをきっかけに、どんな文章を書く人だったのだろう?と思って読み始めてみた本。もっと古めかしい文章かと思ったら、意外と読みやすい。だけどタイトルの「路傍の石」の様に、この本も戦争によってあっちでけっとばされ、こっちでけっとばされ。結局完成しなかった。完成してないけど、それもまた良いかと思ってしまうのがこの本の不思議なところ。統制を受け、自由な表現が規制された時代。今でも何でもOKなわけではないけれど、作家にとってどんなにか息苦しい時代だったのだろう。今後二度と、そんな日本にはなって欲しくないな。作品も良かったけど、「ペンを折る」という文章がとても印象に残った。働くとは&qu
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Posted by ブクログ
明治時代中期を生きた少年の成長記(但し未完)です。
遅刻するから、と待ち合わせに現れない友達を諦め学校へ急ぐ優等生吾一。学校のできた彼であったが貧乏という致命的な重荷を背負っていた。優位逆転に屈辱を味わい親父にも度々足を引っ張られながらも、か細いツテと運をテコに持ち前の闘争心で人生を切り拓いていく。
誰よりも早く始め誰よりも遅くまでやる、辛抱、ド根性の時代。成長してなお多少の嫌味が抜けない主人公の姿にかえって著者の誠意を感じました。美しすぎる人物は信用できない。ただただ彼の生命力が眩しく、皆生きることに逞しい。続きが読みたかったです。切に。 -
Posted by ブクログ
戦争の時代に書かれた本です。
治安維持法などの法律により、山本有三は物語の続きを書けませんでした。
政府に対する思想を持っていたためですが、
途中で打ち切りとなってしまったので、続きがとても気になる終わり方になってしまっていました。
主人公が関わる人たちが著者の思いを代弁しており、
その中でもいちばん印象的だったのが学校の先生でした。
学校で教えることは何なのか、
このままでいいのか、など、今でも同じことが言えると
思うようなことがたくさん書かれていました。
日本政府はこのような大事なことを伝えていた作家を邪魔して、
とても大きな失敗をしてしまったと思いました。