田中康弘のレビュー一覧
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「山怪」も早3作目か。
回を重ねたとて、まったく変わらないその造りにホッとするというかなんというか。
失礼ながら第1作にはいかにも珠玉の、傑作山怪談オールスターが詰め込まれていたというわけでは決してなく、山という括り以外に縛りのないジャンルの中で、何となく不思議だなあ…とほのぼの感じるようなエピソードも含めて、素朴に談話が並べられていただけだから、第2作、第3作と追っても劣化感のようなものは皆無だし、何なら採録する地域は広がっていったりするので深化が感じられる。
この遣り方なら永遠にシリーズは続けられるかも?
個人的には、モロ幽霊系の話は、自分も山に入ることが多いので「勘弁してくれよ…」と本気で怖いが、怪しい光などの火の玉系にはまったく食指が動かんな…。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマタギを中心にした「山の鉄人」らから集めた怪しい話集。
マタギの名前(仮の人も)と地名とが出され、さらに方言が加わるとちょっと体温や肌触りがリアルなように感じて、楽しいことこの上ない。
中には「不思議なことなど何もない」と言い切る鉄人もいて、そんな人でも理解出来ない不思議な話が一つか二つはあるらしい。
個人的には人間の五感は山に入ると微妙に狂うもので、その狂いの差で出会う怪にも違いがあるのかも、などと考えた。
けれど3部に収録された話はそれとはまた違う不思議な話が多く、やっぱりスーパーナチュラルに説明を加えようとか解明しようとか思うのは野暮なのかしらと楽しみながら読み終えた。 -
Posted by ブクログ
近年、獣害が増えている。それに伴い、駆除されるなどするシカやイノシシの数は相当増えているという。捕獲頭数は50年前に比べて、シカ46倍、イノシシ14倍(平成22年の数値)。猟師の数は減ってきているから、一人の猟師が獲る個体数が増えているということでもある。
だが、こうして捕獲される個体は一部を除いて、大部分が廃棄されている。その一方で、ジビエとして食べられる肉や、クラフト用のシカ皮などは大半が輸入ものだ。
いや、それはおかしいだろう、もったいないじゃないか、というわけで、本書が紹介するのは、獲れた獲物を猟師たちがどのように処理・加工し、食肉やなめし革にしてきたか、その知恵である。また、実際の狩猟に当たり、わなをどのように仕掛けるか、銃の種類はどのようなものがあり、猟師になるにはどういった資格が必要かという話題もある。最後は、こうして調達された山の恵みをどのように供給していくか、試行錯誤の実例も紹介される。
写真が多く、猟師と山の暮らしの写真集として眺めることもできる1冊だ。それもそのはず、著者は長年、マタギを初めとする全国の猟師を追い続けてきたカメラマンでもある。読み始めてから気がついたが、先日読んだ『山怪 山人が語る不思議な話』の著者でもある。
各地の猟師をよく知る著者ならではの、猟師の懐に飛び込んだ視線が非常に楽しく興味深い。
冒頭に、本書に登場する猟師たちと周囲の人々の写真が掲載される。猟師の中には女性もいる。元は農家だが獣害に立ち向かうため狩猟資格を取った人もいる。代々続く猟師もいる。狩猟し、さばき、料理し、客に振る舞うまでを一貫して行う夫婦もいる。犬猟、単独猟、集団猟、スタイルもさまざまである。
第1章の「食べる」はさながら料理本の趣である。脂の多い少ないなど、多少の特性の違いはあるが、イノシシは豚に、シカは牛に似ている。それぞれ特徴をよく知る猟師たちの料理は垂涎ものである。
第2章は「皮・角・牙を利用する」。かつては熊の敷皮や剥製などがステイタスであった時代もあるが、今やグロテスクと思われかねない。価値がないとして捨てられる皮や牙でも、小さく切り分け、アクセサリーに仕立てたり、クラフトの材料としたりすることで人気のアイテムとなることもある。
第3章は「獲る」。獲物との知恵比べである。狩猟は大きく、わな猟と銃猟に分けられる。「待ち」と「攻め」とも言えよう。
「待ち」とは言っても、わなでも置いておけば掛かるというものではなく、獲物の足取りを観察し、見極め、掛かりやすい場所に掛ける必要がある。もちろん見破られてはいけない。わな猟は猟銃に比べ、危険が少ない印象があるが、捕らえた獲物に近づく際は、場合によっては銃より危険である。怒ったイノシシは、檻に体当たりして壊すほどの破壊力を持つことがある。さまざまな場面で、猟師一人一人の経験から生まれる知恵と工夫がものをいう。
第4章は「売る」。畜肉と異なるのは、決まった餌を与えられて管理されてきた肉ではないことだ。その部分が風味ともなるわけだが、一方で、捕獲後の処理を迅速にする、血抜きをよくする、衛生管理に留意するといった点が守られないと、安心して食用にできなくなる。食肉処理に関しては、食品衛生法に則り、「食肉処理業」「食肉販売業」「食肉製品製造業」の資格などが必要になる。これとは別に、自然界のものならではの、「いつ獲れるかわからない」という不確定性がある。安定した供給が難しいため、他の精肉と同様のルートには乗せにくい。こうしたハードルをクリアして、消費者に肉を届ける試みをいくつか紹介する。
全体的に、突っ込んで具体的、かつ写真が豊富でわかりやすい。
猟とはどういうものか、漠然としたイメージしかなかったものが、ほほぅ、なるほど、と納得できるる。
シカやイノシシの増加は放置してはおけない状況で、しかし捕獲された大半は廃棄されているというのはやはり残念なことと言わざるをえない。
猟師たちの知恵に感心しながら、人と生きもの、自然との関わり、食べるということについて、あれこれ考えさせられる、深さのある1冊である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白い着眼点ですよねぇ。
時の流れに思いを馳せる感じ。
なかなかのインパクトがあったのは、往時の鍛冶屋の収入は超高所得だったこと! もちろん、腕を疑っている訳ではないし、今でもそれくらいどうかもらってください、と思うけど、今の鍛冶屋さんには、やはり残念ながら、そういう所得イメージはまったく抱いていなかったので、単純に純粋に驚きでした。
あとは、第一次産業は鍛冶屋が支えている(なくなると困る)という話と、
たたら製鉄(和鉄)の話が面白かった。そもそも、鉄をそういう分類で考えたこともなかったし。この超ドメドメな話の流れの中で急にヒッタイトのことが出てきたのも、個人的にはツボでした(笑)。