田中康弘のレビュー一覧
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ネタバレマタギを中心にした「山の鉄人」らから集めた怪しい話集。
マタギの名前(仮の人も)と地名とが出され、さらに方言が加わるとちょっと体温や肌触りがリアルなように感じて、楽しいことこの上ない。
中には「不思議なことなど何もない」と言い切る鉄人もいて、そんな人でも理解出来ない不思議な話が一つか二つはあるらしい。
個人的には人間の五感は山に入ると微妙に狂うもので、その狂いの差で出会う怪にも違いがあるのかも、などと考えた。
けれど3部に収録された話はそれとはまた違う不思議な話が多く、やっぱりスーパーナチュラルに説明を加えようとか解明しようとか思うのは野暮なのかしらと楽しみながら読み終えた。 -
Posted by ブクログ
近年、獣害が増えている。それに伴い、駆除されるなどするシカやイノシシの数は相当増えているという。捕獲頭数は50年前に比べて、シカ46倍、イノシシ14倍(平成22年の数値)。猟師の数は減ってきているから、一人の猟師が獲る個体数が増えているということでもある。
だが、こうして捕獲される個体は一部を除いて、大部分が廃棄されている。その一方で、ジビエとして食べられる肉や、クラフト用のシカ皮などは大半が輸入ものだ。
いや、それはおかしいだろう、もったいないじゃないか、というわけで、本書が紹介するのは、獲れた獲物を猟師たちがどのように処理・加工し、食肉やなめし革にしてきたか、その知恵である。また、実際の狩猟に当たり、わなをどのように仕掛けるか、銃の種類はどのようなものがあり、猟師になるにはどういった資格が必要かという話題もある。最後は、こうして調達された山の恵みをどのように供給していくか、試行錯誤の実例も紹介される。
写真が多く、猟師と山の暮らしの写真集として眺めることもできる1冊だ。それもそのはず、著者は長年、マタギを初めとする全国の猟師を追い続けてきたカメラマンでもある。読み始めてから気がついたが、先日読んだ『山怪 山人が語る不思議な話』の著者でもある。
各地の猟師をよく知る著者ならではの、猟師の懐に飛び込んだ視線が非常に楽しく興味深い。
冒頭に、本書に登場する猟師たちと周囲の人々の写真が掲載される。猟師の中には女性もいる。元は農家だが獣害に立ち向かうため狩猟資格を取った人もいる。代々続く猟師もいる。狩猟し、さばき、料理し、客に振る舞うまでを一貫して行う夫婦もいる。犬猟、単独猟、集団猟、スタイルもさまざまである。
第1章の「食べる」はさながら料理本の趣である。脂の多い少ないなど、多少の特性の違いはあるが、イノシシは豚に、シカは牛に似ている。それぞれ特徴をよく知る猟師たちの料理は垂涎ものである。
第2章は「皮・角・牙を利用する」。かつては熊の敷皮や剥製などがステイタスであった時代もあるが、今やグロテスクと思われかねない。価値がないとして捨てられる皮や牙でも、小さく切り分け、アクセサリーに仕立てたり、クラフトの材料としたりすることで人気のアイテムとなることもある。
第3章は「獲る」。獲物との知恵比べである。狩猟は大きく、わな猟と銃猟に分けられる。「待ち」と「攻め」とも言えよう。
「待ち」とは言っても、わなでも置いておけば掛かるというものではなく、獲物の足取りを観察し、見極め、掛かりやすい場所に掛ける必要がある。もちろん見破られてはいけない。わな猟は猟銃に比べ、危険が少ない印象があるが、捕らえた獲物に近づく際は、場合によっては銃より危険である。怒ったイノシシは、檻に体当たりして壊すほどの破壊力を持つことがある。さまざまな場面で、猟師一人一人の経験から生まれる知恵と工夫がものをいう。
第4章は「売る」。畜肉と異なるのは、決まった餌を与えられて管理されてきた肉ではないことだ。その部分が風味ともなるわけだが、一方で、捕獲後の処理を迅速にする、血抜きをよくする、衛生管理に留意するといった点が守られないと、安心して食用にできなくなる。食肉処理に関しては、食品衛生法に則り、「食肉処理業」「食肉販売業」「食肉製品製造業」の資格などが必要になる。これとは別に、自然界のものならではの、「いつ獲れるかわからない」という不確定性がある。安定した供給が難しいため、他の精肉と同様のルートには乗せにくい。こうしたハードルをクリアして、消費者に肉を届ける試みをいくつか紹介する。
全体的に、突っ込んで具体的、かつ写真が豊富でわかりやすい。
猟とはどういうものか、漠然としたイメージしかなかったものが、ほほぅ、なるほど、と納得できるる。
シカやイノシシの増加は放置してはおけない状況で、しかし捕獲された大半は廃棄されているというのはやはり残念なことと言わざるをえない。
猟師たちの知恵に感心しながら、人と生きもの、自然との関わり、食べるということについて、あれこれ考えさせられる、深さのある1冊である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ山怪 山人が語る不思議な話
序文
Ⅰ 阿仁マタギの山
狐火があふれる地/
なぜか全裸で/
楽しい夜店/
生臭いものが好き/
狐の復讐/
見える人と見えない人/
狸は音だけで満足する/
消えた青い池/
人魂、狐火、勝新太郎/
親友の気配/
辿り着かない道/
蛇と山の不思議な関係/
汚れた御札/
マタギの臨死体験/
叫ぶ者/
白銀の怪物
Ⅱ 異界への扉
狐と神隠し/
不死身の白鹿/
来たのは誰だ/
もう一人いる/
道の向こうに/
響き渡る絶叫/
僕はここにいる/
謎の山盛りご飯/
山塊に蠢くもの/
鶴岡市朝日地区/
出羽三山/
鷹匠の体験/
奈良県山中・吉野町/
ツチノコは跳び跳ねる/
足の無い人/
巨大すぎる狐火/
山から出られない/
行者の忠告
Ⅲ タマシイとの邂逅
帰らない人/
死者の微笑み/
迎えに来る者/
ナビの策略/
椎葉村にて/
テントの周りには/
幻の白い山/
なぜか左右が逆になる/
不気味な訪問者/
天川村の事件/
帰ってくる人/
固まる爺婆/
お寺とタマシイ/
飛ぶ女/
帰ってくる大蛇/
呼ぶ人、来る人/
狐憑き/
真夜中の石臼/
狐火になった男
主にまたぎへの取材で聞いた山での不思議な話を三つのカテゴリーに分けています。
しかしながら、カテゴリー分けがあまり統一感が無いです。
取材先も全国各地にわたっていますが、その整理もされていません。
著者の考察もいろいろと書かれていますが、著者の感想的なものが多いです。
ということで、民俗学的なものを期待すると外れます。
純粋にこういた不思議なことがあるんだというふうに思えるように、変に感想など入れない方がよかったかもしれません。
いづれにしても、山は物の怪が住む場所なので、それを敬い尊ぶ姿勢を私たちは忘れないようにしたいものです。
竹蔵