田中康弘のレビュー一覧
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田中康弘『山怪 参 山人が語る不思議な話』ヤマケイ文庫。
シリーズ第3弾。今回も山と山里で暮らす人びとから収集した話が多数描かれる。火の玉に狐火、幽霊、ツチノコ、座敷わらしに大蛇、人を化かす狸や狐、神隠し、祟り、虫の知らせなどなど、山と山里には不可思議が存在する。
作中にも書かれていたが、確かに田舎の家は外と変わらずオープンで家の中をオニヤンマが通り抜けたり、視線を感じてふと目をやればニホンカモシカが裏山に佇んでいたりと、家の中と山との境界線が無いように思う。
不可思議と言えば。昔、隣とはかなり離れた田舎の祖母の家を尋ねた時に納屋の2階で遊んでいたら、裏山にもんぺ姿の女性が佇んでいるのを -
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山の話は面白い。古来から、山は日本人の日常でありながら、その厳しさゆえに人を非日常へと簡単に誘うものであった。本書で紹介されるのは、山にまつわる民話の原石となる「怪しい」話である。
山が開かれ、娯楽が充実した現代では、代々口伝で伝わってきた山の話は絶滅寸前だ。民話にならなかった話の数々をテキストに起こした筆者の功績は非常に大きいだろう。
山でよくある話は「狐に化かされる」というものだ。山に慣れた人が集落の近くの何でもないような道で左右を間違え、遭難する。そういった時に、人は「狐に化かされた」と言う。
もちろん、実際にそんなことはないだろう。低山での遭難記録をいくつか読めば、遭難は何でもな -
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山の怖い話というより、タイトルの通り山の怪しいお話し。
昔聞いた民話のような、遠野物語のような、そんな不思議なお話がいくつも書かれている。語り手や場所によって差はあれど、似たような出来事も多く、1話1話も短いため、間を置いて読み返すと「もしかして前に読んだ?」「もしかしてまだ読んでいない?」が繰り返され、何度も読む内に楽しくなってくる。
また、知っている山の話があるとそれだけで楽しい。
全国というわけではなく、ある特定の地域方から聞いた話が多いが、後書きを読むと納得する。
「この本で探し求めていたのは、決して怖い話や体験の類いではない。言い伝えや昔話、そして民話でもない。はっきりとは -
購入済み
★★きったん★★
山にまつわる様々な怪異をまとめた本。「遠野物語」の現代版みたいな感じ。昔から語り伝えられ
てきた民話や伝説に近い話もあるが、科学技術の発達した現代でも説明がつかない話もいろいろ出
てくる。やはり山には何かがいる、というのは本当かもしれない。都市部に住んでいると、なかな
か実感がわかないが、実際には日本の国土の7割以上が山地で、殆ど人が住んでいないエリアも多
い。文明の恩恵に胡坐をかき、キツネや火の玉をバカにしていると、とんでもない災厄に見舞われ
そう。自然をおそれ、敬う気持ちを持ち続けたい。 -
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田中康弘『山怪 弐 山人が語る不思議な話』ヤマケイ文庫。
今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行と何とも贅沢。
『山怪』の第2弾。今回も数ページの山と山里の怪異掌編が多数収録されている。事件の現場となった山に見る幽霊、火の玉に狐火に、山中で聞こえる謎の声、狸や狐に化かされた人、大蛇に座敷わらしにヒバゴン。山と山里は怪異や不思議の宝庫なのだ。
似たような話が多数並ぶ。多くの怪異は田舎の噂話が人から人へと伝聞されて、地理的範囲も次第に拡がっているのではなかろうか。例えば本作に収録されている『ミミズ素麺』。岩手県南でも似たような話を聞いたことがある。ある日、山里の集落で -
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「山怪」も早3作目か。
回を重ねたとて、まったく変わらないその造りにホッとするというかなんというか。
失礼ながら第1作にはいかにも珠玉の、傑作山怪談オールスターが詰め込まれていたというわけでは決してなく、山という括り以外に縛りのないジャンルの中で、何となく不思議だなあ…とほのぼの感じるようなエピソードも含めて、素朴に談話が並べられていただけだから、第2作、第3作と追っても劣化感のようなものは皆無だし、何なら採録する地域は広がっていったりするので深化が感じられる。
この遣り方なら永遠にシリーズは続けられるかも?
個人的には、モロ幽霊系の話は、自分も山に入ることが多いので「勘弁してくれよ…」と本