浅羽通明のレビュー一覧
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「尊王」のうち退けられた神秘的部分は、教育の分野で生き延びました。
小学校高学年で教えられる国史は、神武天皇以来の皇統の暗唱から始まり、古事記神話をも歴史として教えるものでした。これは後に昭和の「右翼」へとつながってゆきます。146
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昭和の「右翼」は、明治の権力者が庶民用、軍人用に創り上げたフィクションであるこの伝統(顕教)を真に受けました。
学問的エリートたちの通説だった「天皇機関説」(密教)を、天皇陛下を蒸気機関のごとく見做す不敬な学説ゆえ弾圧すべしと突き上げるま -
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近代を批判した物は、このポジティブな成果を忘れた。
自らが安穏と近代批判などしていられるのは、これら近代の成果の上にあぐらをかいているゆえだという大前提を忘れるほど甘えていた。73
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近代合理主義を完成したテキストで学べるものと思い込んだ近代の後進国であるドイツや日本特有の誤りである。
近代合理主義は何よりも「実業」としてあった。78
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フランス革命を導いた啓蒙思想、自由と平等と理性の思想を、より実質化し徹底さ -
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右翼と左翼という対立軸がたどった歴史的変遷を、分かりやすく解説した本です。
フランス革命以降、進歩史観とマルクス主義の形成とたどり、さらに冷戦後の展開までを踏まえて、右翼と左翼の対立という図式を概観しています。さらに、明治維新以降の日本における右翼と左翼の対立軸についても触れられています。
最後に著者は、戦後左翼が心情的な平和主義以上の何も提出できなかったのと同様に、右傾化が口にされる現在の日本でも、「日本は良い国だと思いたい」という現状肯定への欲求以上の意志は見られないと指摘しています。このこと自体は、大衆社会現象として構造的に論じられるべきだと考えますが、著者の議論はそうした方向には向 -
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右翼とは何か。左翼とは何か。
歴史を追う中でそれぞれがどう変遷していったのか、
どのようにお互いが関わりあってきたのかについて解説している。
そういう点では六章までが分かりやすく良いと思った。
ただ七章の現在の状況についての説明は作者の意見も混在しているのと、
まだ変わりつつある今を説明しようとしているせいか一部納得しかねるところがあった。
ただ、今後は単なる二元論ではなく、
いろいろな軸を加えて評価して行かなければならないという見方は参考になる。
宗教は果たして右か左かという問いは個人的に新しい知見。
思想という枠内にあるのになぜこれを今まで気にしなかったのだろう。 -
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近代・現代日本のナショナリズムに関する諸思想を案内している入門書です。
序章で著者は、マンガ家の小林よしのりの『新ゴーマニズム宣言special 戦争論』(幻冬舎)と、それが巻き起こした論争について触れています。そこには、小林が著者との対話を通して、彼が理想とするプロフェッショナルとしての自立という思想を担いきれない市井の人びとの存在に気づいたこと、そしてそのことが小林の『戦争論』執筆の動機となった経緯が紹介されています。
小林にとって「国家」とは、自分がその一員であると実感することで生きがいと安心を享受できる集団でした。そして、そのような「国家」とは、特定のイデオロギーなどではなく、ナシ -
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近代・現代日本のアナーキズムに関する諸思想を案内している入門書です。
まず取り上げられているのはアナーキスト大杉栄です。頼むべきは自分一人だと考える大杉は、個人の自由を最大限に尊重する気質をもっていたと著者は指摘しています。そうした大杉にしてはじめて、アナーキズムを人びとに「啓蒙」するというジレンマを解決することができたというのが、本書が語る大杉像です。大杉にしたがう人びとは、彼の思想の奴隷となったのではなく、彼の人格に魅せられて自主的にアナーキズムへと進んでいったと著者はいい、大杉のキャラクターを、彼と親交のあった任侠の世界との関係のなかで読み解こうとしています。
著者はまた、権藤成卿の -
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ナショナリズムとは?
愛国心(パトリオット)、ファシズムとも混同されそうな、思想である。また、危険性も少し孕むような。現在の日本において、求められるものではなかろうか?本書ではまず、小林よしのり、を取り上げる。戦争論。国を愛する、国を考える上で、戦争は意識しなければならないことである。明治以降の事象が語られる。天皇、軍歌(友情として)、国土として、鉄道唱歌、民族・日本人論、左翼と革命、男気の「男一匹ガキ大将」、「坂の上の雲」⇒「沈黙の艦隊」と軍隊のことで締めくくる。
国を愛し、民族の誇りは、明解で痛快である。日本人に生まれて、日本で暮らし、良かったと思える。日本人を取り戻す、考えるための入門書 -
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ネタバレ著者自身が述べている様に(P287)筑摩書房「現代日本思想体系」を底本としている。彼の本は60年代発行であり、本書はその後の思想史をカバーし、かつ「道具としての思想」を意識している。
日本のアナーキズム思想における重要書として10冊をあげている。
結局のところアナーキズムにとって最大の難問は「権力統制無しにいかにその運動を持続させるか」にある。
この難問にかつて数多のアナーキストが挑みそして失敗してきたか。
結局のところ、世間の中でなんとなく生きている人にとってアナーキズムなんて、思想的エンターテイメント以上の価値を持たないと思えてくる。 -
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この本は大学新入生向けの本ですね。
私も大学に入って数年が経ちますが、今読んで思うのはもう少し早く読んでみたかったなと。
本書の想定している読者層は、かなり大学という知的空間に期待を寄せている高校生の方向けに書かれています。
昨今、厳しさを増す就活の仕方についても書かれていますから、現役の高校生や浪人生が今のうちに読んでおくことは有益だと思います。
特に文系の人文学系に進みたい方は必読といってもよいと思います。なぜかというと、人文学系は非常に面白い学問区分ですが、市場を分析する経済学などと比べると社会に出てから使いにくい学問区分です。
というよりも、大学で学んだ人文学系の知識を就活で使おうな -
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主に文系大学生向き。タイトルから連想されるイメージ(堅い、真面目)とは裏腹に、「すれた」大学観が語られる。大学教育が大衆化した現代(出版当時のだけど)では、もはや大学生がエリートとしてもてはやされることはない。真面目に学問やったとしても、院に行くのでなければ、その努力は報われにくい。では大学生活をどう過ごせばいいのだろう。「学生は勉強が本分」という建前は置いといて、そもそも世間は大学・大学生をどう見ていて、そして世間から評価される大学生とはどんなものかを、世間を見てきたジャーナリストの著者がかなりあけすけに語る。ただ結局は「高学歴ほどいい」という身もフタもない結論なので、もう大学に入ってしまっ
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ネットの書評をみて思ったのだが、現実と理想。 もしくは、現状と社会とでも区別したほうがいいわけで、絶対、この本を読んで、誤解しない方がいいのは「大学」」と「大学生」は違うということと、著者が通っていた大学とはどこなのかを著者紹介で、よく確認したうえで、今の自分の立場をよく弁えたほうがいい。簡単にいえば、騙されないことだと言うのが適切かな? なんせ、私は、彼(著者)の生の声(waseda)を聞いて思ったが, 慰め=騙し(理想)=読者納得 より、 批判=現実=読者反対 という方程式を受け入れたほうが、実際に勉強している読者、受験勝ち組なら、余計な方程式に悩まされなくてすむんじゃないの?と一言いい