平山周吉のレビュー一覧

  • 江藤淳は甦える

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ハードカバーで760ページを超える大著であるが、読みやすく、ボリュームを気にすることなく読み終えることができた。

    江藤淳は、大学2年生の時に三田評論に書いた「夏目漱石論」で、従来の定説とされてきた小宮豊隆の漱石晩年の「則天去私」という神話を打ち壊し、漱石を近代の個人主義と我執の中で苦しんだ生活者として捉えた新進気鋭の評論家として強烈にデビューした。
    また評論や論争では、その鋭い舌鋒で論敵を打ち負かす保守の論客であり、評論家としては、戦前・戦後と活躍した小林秀夫の後継者として見られ、政治的には真逆の立場にいた吉本隆明と共に、当時もっとも影響力のあった評論家であった。
    (極左の吉本隆明と保守の江

    0
    2025年09月17日
  • 小津安二郎

    Posted by ブクログ

    ▼書名を見ただけだと、「はいはい、またまた小津本ですか」という印象だったんです。実は個人的に、20代の若いころに「小津本」を絨毯爆撃をするように読み漁った時期があり、全般食傷、もうあまり新刊が出ても読まないのです。正直、ほぼ知ってる話の焼き直しばかりですし。

    ▼ところが筆者名を見て「?」と興味が。「平山周吉」。これは、終盤の小津作品で頻繁に出てくる役名なんです。「・・・これは、かなりの小津マニアが書いてるんだな」と、購入。

    ▼結果、面白かったんです。大変に。DVD世代というか、ねっとり何度でも映画を見直せる強みを活かして、そしてとにかく「小津日記」をはじめとして同年代の新聞雑誌などのインタ

    0
    2024年03月24日
  • 小津安二郎

    Posted by ブクログ

    小津安二郎ファンは必読の書。
    産まれた日に死んできっちり60年の生涯を生きた名監督。
    朋友の山中貞雄(監督)の才能を認めその死を(28歳の若さ戦病死)嘆き悲しんだという。
    表紙の写真も小津監督と山中貞雄監督(確かにあごが長い、それを隠すために顎ひげを生やしていたそうな)と、お気に入りの女優、原節子の写真。
    ふたりは何度も噂になっていたみたいだけど、好意はあったのはもちろんだけど形にはなっていなかったような気がする。
    小津監督は生涯独身を通したけど、元芸者の森栄という器量良しの愛人さんが長年いたそう。
    大昔「秋刀魚の味」「晩春」は観た記憶があるけど、
    「東京物語」は録画したまんま、この映画につい

    0
    2023年08月29日
  • 昭和天皇 「よもの海」の謎

    Posted by ブクログ

    「よもの海みなはらからと思ふ世に
                   など波風のたちさわぐらむ」

    昭和16年9月6日、日米開戦か、回避かを決する御前会議の
    終盤。慣例を破って昭和天皇は発言を求めた。そこで読まれた
    のが明治天皇が日露戦争の際に詠まれた御製だった。

    慣例を破ってまで明治天皇の御製を読み上げたのは、外交の
    力で日米開戦を回避せよとの昭和天皇の意思表示だった。

    しかし、大御心とは反対に日本はアメリカとの戦争に突入して
    行く。和平を望んで読み上げたはずの御製は軍部によって
    都合よく解釈された。

    日本は何故、昭和天皇の思いと裏腹の道を進むことになった
    のか。本書は

    0
    2017年08月21日
  • 昭和天皇 「よもの海」の謎

    Posted by ブクログ

    昭和天皇が太平洋戦争開戦を巡る御前会議において、慣例を破って発言された。それが明治天皇の作った歌「四方の海…」であり、戦争回避の願いを込めた行為であった。本書は、その発言をされた昭和天皇、発言を受けた陸軍の杉山参謀長、永野軍令部長、同席した関係者、さらには発言があったことを伝え聞いた近衛文麿、山本五十六という人たちの歌の受け止め方とその後を丁寧に追跡している。さらには、当時この歌が軍人や知識人にどのような形で知れ渡っていたのかにも目を向けている。掘り下げ方に浅さや偏り、過度の推測がなきにしもあらずだが、この件で一冊の本が書き上げられたことは特筆に値するだろう。
    それにしても、これを読むと当時の

    0
    2014年12月23日