矢崎源九郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレイプセンはウェルメイド・プレイの構成生かし、自己認識と独立を現実的に反映するために劇という象徴を用いて理想主義のもろさを明らかにしている。
観客が、この戯曲が女性の解放を表している作品であるという先入観に縛られ続けているため、ウェルメイド・プレイであるという構成が、同じ結末を保証するものではないということを忘れていることを暗示している。
作品の大半ではノラが完璧であろうという家族像にしがみついている様子が描かれている。従って、観客はこの戯曲の理想的な結末がどのようなものであるべきかを振り返り、結局ノラの家出がこの戯曲の山場、すなわちクログスタッドとの対立・衝突を解決しているか否か、その判断が観客の観点に委ねられる。
つまり、この作品は女性の独立と社会進出を描いた作品なのか、それとも女性であることを最大限に利用し夫を操り支配するノラの利己心を描写しているのか、考えさせられる作品だ。 -
Posted by ブクログ
全然イプセンなんか興味なかったのに、なぜか産休の時に買っていた。それから4回くらい読んでるけど、毎回、途中の『夫に秘密がばれてしまう』というところだけ覚えていて、結末を全く思い出さないで再読している。今回は3年ぶりくらいかな。また、『なんとなく』手に取った。
イプセンはノルウエーの戯曲家で、板垣退助張りの髭のおじさん。かのおじさんが、ここまで女性の真髄を表現しているとは!私も女として年を取るたび、『女』がいかなる生き物であるか、自分を含めて解ってきているはず。読むたびに新しい発見をする。一般的には、婦人解放の思想と解釈されているようだけど、今回は、ヒロインのノラが、女の持つ多面性の平面でなく、玉虫色の滑らかな球面で表しているような感じがした。
『今夜奇蹟が現れると思っておりましたのに、それが現れなかったからです。それであなたという人が、あたしが今まで考えていたような方ではないということがわかったのです。』
そうね。結婚して、子供も出来てから気がつくことだってあるわよね。同感。
本日の通勤の往復で読破。濃い時間だった。次読むときも新しい気持ちで読める予感がする。 -
Posted by ブクログ
相手の思い通りになる「人形」である限りにおいて愛されてただけなんだと気がついたときのあの絶望感。思い出して苦しくなり、終盤は奥歯を噛み締めながら読んだ。
ノラの台詞に父から夫へ受け渡された、みたいな言葉があり、「あの子は貴族」にも似たような台詞があったので思い出した。もしかしたらあの子は家族はこの作品にも影響受けている?シスターフッドがある分あの子は貴族のラストの方が爽やかだけど、併せて読むと面白いのかも。
中盤までの主人公ノラはあまりにお馬鹿に見えるんだけど、「目が覚めた」後は教育がないなりにものすごく聡明で、こういう面を父や夫に抑圧されていたんだな、本来の彼女はこっちなんだな、と分かる。
イプセン、他の作品も読みたい。 -
Posted by ブクログ
「人形の家」は1879年にノルウェーの劇作家イプセンが書いた戯曲だ。雑に言うとモラハラ夫の偽善に気付いて主人公の女性(ノラ)が家を出るというストーリーである。タイトルにある「人形」はバービーのような実際の人形のことではなく、あたかも人形のように愛でられ、家庭に縛られていたノラ自身のことを指している。
例えヨーロッパといえども、140年も昔には女性の立場は今よりも弱かったと思うのだが、しっかりと自分の言葉で夫に別れを告げ、自分の足で立ちたいと言って人生をリスタートするさまは爽快感がある。
最後に家を出る直前、ノラは初めて夫に向き合い、自分の考えをぶつける。ここで語られた思いが時代を飛び越えたかのようにフレッシュで、胸に響くものだったので驚いた。さすが現代まで読み継がれる古典作品と思った。作品自体はさておき、青空文庫にアップされている翻訳はかなり古めかしいので、新しい訳で再読したい。 -
Posted by ブクログ
女性の自立への目覚めを描いた戯曲。
古さを感じさせず面白かった。
ノラは父からも夫からも人形のように可愛がられ、お嬢様育ちの世間知らずのまま大人になってしまった女性だ。専業主婦といえるが、女中や乳母がいるので家事や子育てでもそれほど苦労していない。傍から見るとなかなか「いいご身分」なのである。
世間知らずゆえに犯した過ちによってノラは窮地に陥る。そして自分の無知や、周囲の人々に影響されて自立へと目覚めてゆく。
「あたしがこんな何一つできない女になったのも、みんなあなた方の責任です」
ノラが言い放ったこの言葉は、戯曲が発表された19世紀後半にかなり物議を醸したのではなかろうか。社会によって抑圧されてきた女性の叫び。
女性の社会進出が進んだ現代の日本ではむしろ、「仕事も家事も子育てもあたしが全部やらなくちゃいけないのは、みんなあなた方の責任です」と叫びたい女性が多いかもしれない。 -
Posted by ブクログ
史上最高小説100の一冊。シェイクスピア以後、最大の劇作家といわれるイプセン。その代表作であるのが「人形の家」である。まだ戯曲といえばソポクレスの「オイディプス王」「アンティゴネ」、エウリピデスの「王女メディア」、そしてゲーテの「ファウスト」しか読んでいないので、近代劇となると初めてということになる。舞台は100年と少し前ぐらいのヨーロッパ。資本家の夫を持つノラは、銀行の頭取に夫が就き、今後の生活の華やかさに心躍らせる女性である。しかしそんな地に足がつかないような半妄想的な生活の最中、過去の金銭の貸借についての不手際が持ち上がり、またそれが夫の名誉を地に落とすような類のものであったので、すべてを打ち明けられないノラと、怨恨に固まる貸借人と、その他友人と夫を巻き込みひと悶着起こる。外面的には何事も起こらず穏やかにおさまったはずだったが、渦中の夫が放った自身に対する罵言が、人間としての本性を傷つけることとなる。すべてが収まったことで、今まで通りの関係を続けようとする夫だったが、一度離れたノラの心は数時間を持って完全に冷え切ってしまった。人形として扱われていた自分。自信の心の底を芯から理解はできないだろう夫とは、心の関係として完全に他人になってしまった。夫も子供もその他すべてのものを置いて、家を出る決意をするノラ。引き留めようと必死になり、謝る夫を後にそのまま家を出てしまう。
時代的なものもあり、女性は未だ男性の所有物の延長のように見られていたような人類史的な精神背景が流れている。これぐらいのテーマでリベラルと言ってしまえば化石のように思われるかもしれないけれど、どの時代であっても調和を一方的に破り、何かを勝ち取ろうとする姿勢はリベラルであることは間違いないと思う。しかしそんな政治的なテーマだけでこの作品を語っていたのでは、あまりにイモ臭いというやつだ。他のイプセン作を読んでいないから分からないが、この「人形の家」一作だけを読んでみても、人間の無意識的な深層心理を掬うような、人間心理の闇を巧みに表現している。そしてそのような冷え切った人間関係を「人形の家」と表現する文学の豊かさ。社会的問題を人間の内面から表現した傑作である。
イプセンの他の作品も買ってしまった。作品のみじかさもあって一気に読んでしまおう。
14.5.27 -
Posted by ブクログ
裏のあらすじを引用すると…
小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽装して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラを愛するが、ノラは人形のように生きるより人間として生きたいと願い、三人の子供も捨てて家を出る。
ヘルメルがノラを愛していることは分かるが、女はバカで可愛ければ良い…というか。そういうのが現れてたのかな、なんて。
ノラが夫婦なのに、今まで真剣に話しをしたことがなかったと言う場面があるが、彼ら二人は夫婦ではなく、ノラの言うように人形ごっこをしていたんだな、と思った。
もちろん、読んでいてノラも世間知らずな所があるな、とは思ってしまうけど…
それでも、夫婦って人形ごっこではいけないんじゃないかな、と思う。
台本形式になってたし、テンポが良くて読みやすかった。