赤染晶子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スピーチコンテストに向けて「アンネの日記」の暗唱に取り組む外国語大学の女子学生たち(「乙女」と呼ばれる)の話。「乙女」の一人、みか子の視点で描かれる一人称小説。バッハマン教授や麗子様など、名前を与えられた他の登場人物の描かれ方はマンガ的で、ユーモア小説と呼んでよいと思う一方で、「乙女」たちのアイデンティティの話が「アンネの日記」そのものとのリンクしていく感じは、割に重たい社会批評小説にも見える。薄くて、文体も読みやすいが、思いの外、難しい小説だったなあ。
難しさは、「乙女」という語が多義的であるところや、大学内の人間関係が「アンネの日記」に登場する人物に喩えられたりするところ、あたりにあると思う。 -
Posted by ブクログ
解釈の余地の多いお話という印象。高校などでこの本を題材に議論をしたら、きっと色々な意見が出て、面白いのではないかと思った。
自己が確立されてきているけれど、まだ揺らいでいる、20歳前後の少女 …作中では「乙女」という呼称になっている…達が主人公。作者の出身校でもあるらしい京都外語大学のドイツ語学科に通う彼女達は「アンネの日記」を題材に、スピーチコンテストの練習に余念が無い。スピーチコンテストを主導する個性的なドイツ人教授や、スピーチコンテストに人生を掛けているかの如き女学生を巡る噂。
色々なテーマが読み取れるが、やはり一番強く考えさせられたのは、自己…アイデンティティ…ということについて。アンネと同世代の女の子達の純粋や潔癖、真実よりも美しいフィクションを愛してしまう心、本当の自分を探し求める心などが、アンネと共振したり対象の位置に置かれたりしながら、たくさんの問いをあたりにキラキラ撒き散らしていく。 -
Posted by ブクログ
外国語大学に通う「乙女」たちは『アンネの日記』の一部をスピーチコンテストで暗唱することとなっていた。
『アンネの日記』の決まった一節を必ず忘れてしまうみか子、スピーチを生きがいとしているような麗子、帰国子女の貴代、そして風変りなバッハマン教授。「乙女」たちが見つけるアンネ・フランクとは、そして「自己」とは。
うーむ…なんというか…とても勿体ない!!という感じの作品だった。
試みていることもわかる、伝えんとしていることもわかる、でも何もハッキリとは見えてこない。
思うに、『アンネの日記』の中でもとりわけ彼女のエスニック・アイデンティティが揺らいでいる部分を取り上げて、それを自分は日本人であるというアイデンティティに欠片ほども迷いを抱いていない「乙女」の自意識形成とラップさせようとしたのは失敗だ。
その溝を、帰国子女である貴代や、日本で教鞭を握るバッハマン教授が埋めてくれるのかと思いきや、彼ら(特に貴代)はこの問題に何ら関与しない。
他にも母娘の関係など、何かあると匂わせておいて結局なにも起こらない伏線もどきが多かった。
蛇足ながら、女子校育ちで大学は外国語学部という、この作品で言うところの「乙女」度合は筋金入り(笑)の私から言わせてもらうと、この作品に描かれるような「乙女」らの争いやアイデンティティ・クライシスは大体中学校か高校までには収束し、大学生になる頃にはもう少し地に足がついた?生活を送っている。どうせなら「第二外国語としてドイツ語を習うお嬢様高校の一幕」くらいにしておいた方が、まだ設定にリアリズムがあったのに。
…と思っていたら、作者自身が京都外国語大のご出身とのことで、もしかしたら世の中にはこういう純粋な外語大生もいるのかもしれない。