赤染晶子のレビュー一覧

  • 乙女の密告

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    ネタバレ

    バッハマン教授…ヘトアハテルハイスは時を超えてアンネに名前を取り戻しました。アンネだけではありません。あの名も無き人たち全てに名前があったことを後世の人たちに思い知らせました。あの人たちは他者ではありません。かけがえのない「わたし」だったのです。
    たたみかけるようなリズムとのんびりした関西弁の会話、過去と現在、個と集団など様々な対立項の中で進むストーリーに没入してしまう良作。

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    2026年03月14日
  • 乙女の密告

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    アンネフランクを密告したのは誰か。
    そして、それはどんな意味をもつのか。
    最後クライマックスほんとによかった。

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    2025年07月23日
  • 乙女の密告

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    外語大学でのスピーチコンテストに向けてのスパルタ教育。熱心に取組む乙女達の間で起きる噂と真実…そして密告。スピーチの題材『アンネの日記』のユダヤ人と乙女達が重なり、さらに『密告』が主人公みか子と麗子様を苦しめる。15歳の若さでこの世を去ったアンネ・フランク…彼女の書いた日記がこれだけの影響力をもって後世に受け継がれているとは。彼女に教えてあげたいですね。

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    2025年07月06日
  • 乙女の密告

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    タイトルの乙女という言葉から、つい少女小説や恋愛小説なのかと推測してしまうが、さにあらず。

    学生たちに“メンチ”を切り、怒って教室を立ち去るときは「あたくし、実家に帰らせて頂きます!」と言い放つドイツ人教授や、指にストップウォッチだこができている麗子様などなど、強烈なキャラとその言動にゲラゲラ笑ってしまうのだが、読み進めていくと作者の《さあ、ここからが本番やで》という声が聞こえてくるかのように、作者の冷徹な目をもって《真実をみつめよ》と言葉が紡がれていく。

    素晴らしい音楽を聴き終えた瞬間、人は深い溜息が出るものであるが、この本を読み終えたとき、同じように深い溜息が出た。
    この作者は鬼才である。早世が本当に悔やまれてならない。

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    2024年12月31日
  • 乙女の密告

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    ⚫︎受け取ったメッセージ
    「真実とは乙女にとって禁断の果実だった。」

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。

    ⚫︎感想
    すごい短編小説だった。ユーモアとシリアスをこのように巧みにブレンドし、密告する側とされる側という葛藤と統合を描く。深刻なホロコーストというテーマを自分たちの生活に引きつけて考えることは、普段の生活ではなかなかできない。それを「乙女」な女子大生という「清純」を密告者側とと置きかえ描かれた作品。いつ誰が「乙女」と見なされなくなるか、わからない。

    真実は多くの人が夢見ていたい中で隠されなくてはならないものである。
    人は同じ美しいと思える幻想をみんなで信じて安心したがる生き物だということを改めて思った。

    面白く読ませてくれる漫画風なところがありながら、実はメタファーを盛り込み深いテーマを描いている。ぜひ再読したい。

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    2024年02月10日
  • 乙女の密告

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    短めの文章のリズムと登場人物たち(特に教授)の強い言葉が強く印象に残った。

    主題となっている『アンネの日記』とともに、読み継がれて欲しい本。
    『アンネの日記』は未読の状態だと「悲劇的な少女」のイメージを持ち、実際に読むとあまりに等身大な小女性に驚くもの(と勝手に思っているけれど)。
    本書はその後もう一度、余計なイメージを捨ててアンネを読み、アンネと向き合う時に最適ではないかと思う。

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    2023年07月06日
  • 乙女の密告

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    ナチス政権下で異分子として個の名前を奪われた人々。毎日の日記の最後に記したアンネ・フランクという名前は、悲劇に抹消された人々にも名前があったんだと語ってくれる。
    乙女は日々に翻弄されながら、自分の名前を探し続ける。
    真面目な文体にユーモラスが顔を出してくる雰囲気が大好きだった。乙女とは乙女らしからぬものを好む生き物なんだなぁ。

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    2023年05月11日
  • 乙女の密告

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    ナチスの政権下で奪われてしまった名前たち、そんな中でアンネ・フランクは決して彼女の名前を失わなかった。
    異なるものとして排除されてしまうという歴史は繰り返されていると思う。そんな世界でどのように生きていくのかを再度考えるような作品だった。

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    2023年02月01日
  • 乙女の密告

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    とても読みやすい。私小説風であり、歴史小説風であり、哲学書風であり、人情噺風でもあり、ライトノベルロマンス風でありながら軽快な語り口にあっという間に飲み込まれてしまう。そして最後に残る重いテーマの余韻。なるほど芥川賞に相応しい傑作小説だと思う。

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    2018年02月21日
  • 乙女の密告

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    ネタバレ

    重たいテーマを、ユーモラスな筆致で書いた小説であり、そこは賛否あると思うが、個人的には良かった。アンネ・フランクの境遇を、女子大生達の告げ口というスケールの違うものにリンクさせることに対して、忌避感がないといえば嘘になる。しかし、アンネを名前を持ったユダヤ人として「密告」するラストには、アンネをメタファーとしてではなく、自分たちとは異なる一人の個人と捉えなければならないという強い意志を感じた。非当事者の視点でしか書けない小説だと思う。貴子を「女王」の比喩ではなく、「タカコ」として呼ぶ教授も印象的だった。
    とはいえ、アンネがメタファーではなく一人の個人であるなら、「密告者」のメタファーを自分に当てはめるのはよいのか? というところが腑に落ちない。

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    2026年09月26日
  • 乙女の密告

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    2010年芥川賞受賞作品
    アンネ・フランクのオマージュと呼ぶにふさわしいタイトルと見事な構造の小説だ。

    『アンネの日記』を根底に物語は進んでいくが、意外にも語り口は「乙女たちは〜のである」とコミカルでスポ根漫画のような一面もあり読みやすい。ページ数も102ページ程のボリュームなので隙間時間に一気読みするのに丁度良い。

    興味を惹かれたのはアンネの日記とリンクしているところ。女子大生の軽い告げ口がホロコーストの密告と繋がっていく様はお見事としか言いようがない。乙女達の華やかな女の園のイメージが一変し、黒い噂を機にヒソヒソと犯人捜しが始まる。いつの間にか、かつてのナチスのような集団心理、同調圧力が相互監視や密告社会を作り上げていくという生温い居心地の悪さに背筋がゾクッとさせられた。

    印象的だったのは、みか子のラストスピーチのシーン。完璧な暗唱のなかで名前を叫び、アンネの世界と同化していく彼女の姿は、全体社会に完全に取り込まれた「絶望」なのか。それとも、心だけは操り人形にならないという精神の解放なのか?最後の解釈が難しく、今も謎として心に残っている。
    日常のすぐ隣にある恐怖を浮き彫りにした、芥川賞らしい作品とも思えた。

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    2026年05月24日
  • 乙女の密告

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    女の園に現れるバッハマン教授。
    アンネの日記の暗唱をする乙女たち。
    真実を知ろうとするみか子。やがて乙女の真実を通してアンネの真実に近づく。表面的な言葉をなぞるのではなく、どのような思いが隠れているのかに目を向けるようになる。
    忘れた言葉は1番大切な言葉、という麗子様の言葉のとおりみか子は自分の言葉を手に入れる。名前、わたしを手に入れる。

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    2026年05月03日
  • 乙女の密告

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    芥川賞を受賞したのは2010年。その時から気になっていた本。難しかった。
    乙女とアンネ・フランク。密告。アイデンティティ。キーワードはあるけど、あの人形にどんな意味があるのか、麗子様の存在や言動はなんなのか、よく分からずに読み進めた。麗子様は始め、エースを狙えのお蝶夫人のようだと思いながら読む。教授は宗像コーチかな。そう思って読むと、乙女のことも分かってくるような気がする。
    アンネの日記、しばらく読んでいない。完訳、というかアンネの日記の最初のものしか読んでいない。アンネが戦争が終わったらオランダ人になりたいと書いていたことは初めて知った。ユダヤ人であることをどう自分の中で取り扱うか。アンネのアイデンティティ。
    そのあたりからとても難しいと感じた。人形の誘拐に至っては、謎でしかなかったが、読んでいて苦痛になる難しさではなかった。難しくて、理解はできていないのだが、読んでいて楽しいと感じる不思議な本だった。
    赤染さんは2017年に亡くなられているので、今出版されているものが全てだ。いつか、読んでいきたい。
    分からない、難しい、理解できない。そんなことも含めて楽しんだ稀有な読書体験だった。

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    2026年02月11日
  • 乙女の密告

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    短い文章の羅列は正直言って自分には読みづらく、リズムに乗れなかった。物語の世界観も自分の趣味ではなかった。ただし、アンネの世界と女子大生の世界を乙女、密告というキーワードでうまく重ね合わせた構成の芸術的完成度は極めて高いと思う。

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    2025年10月03日
  • 乙女の密告

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     赤染晶子さん初読です。文庫筋書きの「悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅」に惹かれました。本作は100ページに満たない中篇小説で、2010年の芥川賞受賞作です。赤染さんは2017年、42歳で早世されました。

     ナチ体制下で究極の迫害を受けたユダヤ人と、大学のスピーチ・ゼミで孤立させられる主人公の対比が斬新で興味深かったです。その物語の切り口は、異質な存在を排除しようとする根源的な人間の性(さが)に通じ、普遍的問題なのかと思いました。ただ、隠れ家のアンネ・フランク一家の密告と、現代の閉鎖社会での告げ口では隔たりが大きく、そもそも比較にならない恐怖レベルでしょうが…。

     こんなレビューを書くと、重く暗い堅苦しい物語に思えますが、京言葉の会話にユーモアがあり、一文が短かくリズムもあるので読みやすかったです。
     そして『アンネの日記』が、強制収容所に送られた悲劇の少女の話だけではない優れた文学であることに、今一度目を向ける必要性を感じます。

     アンネ・フランクに造詣が深く、様々な著書もある小川洋子さんの「100分de名著」ブックスの名解説を思い出しました。奇しくも、本作が候補となった芥川賞の選考会で、選考委員であった小川さんが本作を強く推したことも頷けました。

     『アンネの日記』の奥深い世界の中に、主人公はアンネの真実の言葉、人を救う言葉を見つけたのでしょう。社会に蔓延る差別や偏見に惑わされず、困難な時代を生き延びていくヒントがあるんですね。
     80年前のアンネの言葉に再び光を当てる、とても奥深い作品でした。

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    2025年09月12日
  • 乙女の密告

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    芥川賞受賞作のこの本は非常に薄い。
    読みづらいかなと思ったが、書き出しが台本のト書きのようですんなり入り込むことができた。軽やかな文章の合間に笑いも上手く散りばめてある。

    ここは京都の外国語大学。授業中に乱入してきたのはドイツ語学科のバッハマン教授。スピーチコンテスト(暗唱の部)の課題『アンネの日記』の一節を明日までに暗記するよう告げ教室を出て行く。
    主人公のみか子は暗記しながらアンネの心の叫びに触れる。学園に流れる黒い噂に翻弄される自身をリンクさせながら…
    自分の言葉を獲得していく終盤が良かった。

    乙女という生き物は「信じられな〜い」と驚いて見せ、誰よりもそれを深く信じる。
    自分とは違う異質な存在をきっちりと認識する。
    文中で繰り返し目にする「乙女」は噂が真実であるかどうかより「信じる」ことに同調を求める。「乙女たち」から排除されたものは密告される運命にあると怖さも感じさせる一冊。

    著者が2017年、42歳の若さで亡くなられたと知りとても残念に思う。他の本も読んでみたい。

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    2025年03月29日
  • 乙女の密告

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    微妙に張り巡らせられた緊迫感と、平の文でたまに登場するおふざけのギャップがとても良かった。読みながら笑ってしまった。
    物事を自分の見みたい一側面だけで判断するのは良くないな

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    2024年02月06日
  • 乙女の密告

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    ちょっと特殊の日本語と思います。ドイツ語の特性がミックスされそうです。あらすじより、文字の流れが好きです。

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    2023年09月22日
  • 乙女の密告

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     赤染晶子が、観光地であるアンネの家を訪れて「アンネは本当はこんなこと望んでいなかった」と思った。それを忘れないでいようと思って書いた……という挿話を読んで手に取ってみました。

     要するに『私』を発見する物語なのですが、自分が自分であることを他人に委ねてはいけないし、委ねることも出来ない。
     他人が奪ってはならない。
     他人が勝手に物語を与えてもいけない。
     そういった尊厳についての物語だと思います。

     まあアンネの尊厳についてドイツ人と日本人が語るなと言われればそれまでなんですが。
     逆にアンネがみずから密告したアイデンティティを尊重せねばならぬと、ドイツ人が日本人に教えるというのは……まあやっぱつまらんギャグかもしれんがしかし、アンネを語るバッハマン教授の言葉は胸に迫りました。

     再読だったのですが1回目と違って面白く読みました。

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    2014年06月10日
  • 乙女の密告

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    文体がミュージカルみたいで何か面白かった。
    舞台は現代の外語大ですが、女子大生達は古き良き大正時代のハイカラな女学生を思わせます。
    しかし、お人形を持ち歩くドイツ語学教授(中年男性)ってどうなんだろう(笑

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    2013年08月26日