山竹伸二のレビュー一覧
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この本を通じて「認められたい」という思いは、単なるわがままではなく、人が生きるうえで非常に根本的な感覚なのだということだった。
「存在の承認」と「行為の承認」という言葉が出てくる。
「存在の承認」とは、「あなたはここにいてよい」という承認である。
成果を出したから認めるのではなく、存在そのものを否定しないこと。私はこの考え方がとても重要だと思った。
人の行為については、価値観が違えば賛成できないこともあるし、距離を取ることもある。しかし、それでも相手の存在そのものまで否定してはいけない。
逆に、人を馬鹿にしたり、軽蔑したり、面前で否定することは、「存在の承認」を傷つける行為になる。
また、本書では「承認不安」が繰り返し語られていた。
認められない不安
否定される不安
軽蔑される不安
を抱えながら生きている。
そして、その不安が強くなると、人は自由に行動できなくなる。
空気を読みすぎる。
相手の機嫌を気にしすぎる。
本音を言えなくなる。
だからこそ、人が自由に生きるためには、「存在の承認」による安心感が必要なのだと思った。
さらに、人は給料だけでは活力高く働けない、ということも思わされた。
自分の仕事が、
誰かの役に立っている
意味がある
見てもらえている
と感じられることが大切なのだと思う。
これは「行為の承認」につながる。
そして終盤では、人は「依存を理解できる存在」だと語られていた。
成熟とは、「自分は一人で生きている」と思うことではなく、「人は支え合わないと生きられない」
という事実を受け入れることなのかもしれない。
この本を読んで、幸せとは、すごい人になることではなく、
不安を少なくし、
存在を否定されず、
自分の行為に意味を感じ、
支え合える関係の中で生きること
だと思った。
「認められたい」という軽い言葉では片づけられない、人間の根本を考えさせられる一冊だった。
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Posted by ブクログ
承認不安からの脱却
集団的承認も親和的承認も得られない時は自己承認をする(社会一般の常識理解があれば可能、吟味は必要)
→普遍的自己承認
不安は危険な状況に対する無力への抵抗であり、危険を避けるように知らせている
不安が生じる→不安な自分を自覚→自己価値の低下を予感→ますます不安になる
不安の悪循環
高齢化社会でますます、障がい者や立場が弱い人が増えていく中、それを下に見て優越感に浸っていることことそが承認不安による言動
その存在を否定することは民主主義を否定することになる
存在の承認が今後の課題
学校や職場は競争意識から優劣をつけて、行為の承認ばかりを育ませてしまっている
相互ケア社会の構築
お互いに助け合う
不安が少なく、自己了解のできる人間を教育過程で育てること
子供の したい を受け入れて増やしてあげる
多様な価値観を教えて、普遍的視点を培える能力を伸ばす
それが出来なかった人もそれができた人と関わることで自己了解ができる
他者を馬鹿にしたり、軽蔑した言葉を弄することは、相手の方を引きずり下ろし、無価値なものにすることで、相対的に自分の価値を底上げしようとする、あさましい戦略なのです。
差別は自己価値の底上げを本質としています。自分の価値に自信がない人間が、他人の価値を引きずりおろし、価値のない人間として見下すことで、自分の方が上だ、自分の方が価値がある、と思いたがっているのです。本当の意味での自信がなく、能力や価値ある行為とは無関係な属性にこだわり、自分とは異なる生まれ、貧しさ、信仰、障害などを貶めようとするのです。 -
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ネタバレ休職期間の今読めて良かったと思う本だった。
メンタルに関する今まで読んできた本は「ストレスを発散しましょう」「べき思考は改善しましょう」みたいに「言われなくても分かってるし、できたらやっているよ!」と言ってしまいたくなるアドバイスが載っているものが多かった。
この本は「(承認)不安」にスポットライトを当てて、メカニズムや対処法を説明していて腑に落ちる記述が多かった。
中でも個人的に印象的だったのは以下の三つ。
■不安による不安
「不安による不安」によって悪循環が加速していくというのは、何となく自分でも自覚していたけれど、不安の現象学として整理されていて、そのように感じるのは自分だけでは無いと感じられて安心できた。
また、「不安を感じている時に自己分析をするのは良くない」ということなので、そういうときは目の前のことに集中するようにしたい。
■自己ルールの修正
自己ルールの歪み、行動を見直していくことで、承認不安は改善するが、すぐには治らないということが明記されていたので、焦らずに実践していこうと思う。
■承認不安を緩和できる人
承認不安に苦しんでいる人に共感し、適切な対応をすることができるのは、自らも承認不安に苦しんだ経験がある人であるというのは、少し自分の自信にも繋がった。
「弱い」ことは悪いことでは無い、活かせるようにしていきたい。 -
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特に木村敏さんの「精神病理の時間論」という章が刺激的な内容だった。
木村敏はこうした医学的人間学を評価し、精神病とは「生命それ自身」の関係が失われた状態なのではないか、と考えるようになった。そして、個人や個体の世代ごとに区切られた不連続な生命、個体の有限な生命を「ビオス」、生きとし生けるものすべてに受け継がれてきた根源的な生命、個体の分離を超えて連続する生命を「ゾーエー」と呼んで区別するようになる。
「私」は個別の生命であるビオスだが、同時に根源的な生命であるゾーエーにも属している。たとえば、自分の存在を内部から見た場合、私は一回きりの人生を生きている交換不可能な独自の存在である。しかし外部から見ると、私は大勢の集団の中の一人であり、他の誰かと交換しうる存在でもある。
戦争や災害などの非常時や、集団的なスポーツやゲームに熱中しているとき、祝祭の狂乱状態のときなど、私たちは没個性の感情が強くなり、一体感を感じることがあるだろう。そこでは、「個別以前」「自己以前」の生命の動きが感じられている。そして、この各個人の意識と一種のレベルでの連帯意識とのあいだの不均衡こそが、統合失調症をもたらしている。
哲学的な内容だが「地球上での自分の立ち位置を再確認しろ!」と言われているように感じた。
この本は日本人による日本人のための心理学教本という感じの内容で良書だと思う。
この本でやっと日本の近代心理学の歴史を把握できた(ような気がした) -
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「子育ての哲学」山竹伸二
教育論。ベビーピンク。
一言で言うとよい子育てとは、「子供が自由に生きられるようにする」ということ。
この要旨を導くためにわれわれ自身が子育てに対して感じている不安、願望、現実を考察しながら、かつわれわれ自身が通って来た道である子供の心を洞察し、社会における子育てへの期待を検討して論を進める。
子育てというと多分に感情を挟んでしまうことが多く(理性で検討することそのものを感情で一律に排除してしまうきらいすらある)、「子供のため」という盲目的な没論理で自分も子供も追い詰めてしまうイメージがある。
本書ではそのような感情の存在自体を認めつつ、冷静に、現象として見たときの子育てから、現代の親はどう子供に向き合えばいいのかを明らかにする。
良書。(5) -
Posted by ブクログ
ネタバレ承認不安の根底にあるものとして、存在の承認と行為の承認の不足、と捉えるのは簡単なようで中々出てこない考え方かと思う。その克服として、まず親和的な間柄の人から存在の承認を得られると良い、ということも妥当と思う。個人的には、現代の社会は子供の頃から子供を値付けし過ぎている(南直哉さんの言う子供の商品化)と感じていたので、「条件付きの」行為の承認にどっぷり浸からせてしまっている考えは納得がいく。
とは言え、著者の意見の通り、これを解消するのは簡単ではない。まず無条件で存在を承認してくれる存在が必要、というのは確かにその通りなのだが、その当たり前のことが難しいのだ。特に、スキルや才能を磨いて自分に投資して格付けを上に、と言うたぐいの情報が溢れる中でブレずにやるのは難しかろう。
多分、大事なのは、それでも身近なところから少しずつ誰かを承認していくこと、それを続けること。また、自分が他人を必要以上に評価的に値踏みしていないか、行為の価値で人を測っていないか、自問し続けることしかないのだろう。人は少しずつしか正気にはなれないから。
また、障がいや認知症の人の行動の背景にも不安があるからかも知れない、と言う視点は個人的には新しく、はっとさせられる。そういった方たちの行動に、少し違った目を向けられたら良いなと自戒した。 -
Posted by ブクログ
タイトルほど衒学的な内容ではなく、哲学的な考察の仕方を採用しているだけで案外に実践的な子育て本。
幸せな子育てとは何かという問いに対し、
育児の目的は「子供の自由な生の実現」であると置く。
そのためには、子供には自分の感情に気付く力(「感情の主体」)、自分の欲望に気付く力(「欲望の主体」)、そのうえで、理性的に行動を選び取る力(「理性の主体」)を育む必要があると整理する。
この感情の自覚、欲望の自覚、理性の獲得は、通常子供の発達段階に沿っているため、親は各段階で適切にこれを伸ばすよう手助けしていくことが望ましいと説く。
そのためには何より、子供の心に寄り添い、子供の行動の奥に潜む心理を感じ取り、自分の言動を選んでいくことが大事であるようだ。
具体的なエピソードや、子供の行動の「なぜ?」も豊富に書いてあり、色々と気づきやためになることが多く書いてある。
きわめて真っ当な主張でもあるし、一読して損はないかも。