重信メイのレビュー一覧
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アラブの春
チュニジアに端を発するアラブの春のきっかけから、周辺国での波及の様子をまとめた本。鍵はメディアだ。
フェイスブックがあったからこそ、1人の青年のアクションが同志へ波及したし、インターネットの力が認められることで、政府が政治の道具としても使うようになってきた。
チュニジア、エジプトの革命は市民によるものだが、シリアやリビアは周辺国の代理戦争の場となってしまった。
アラブの問題は単なる宗派の対立ではない。貧困、差別、弾圧といった生きることすら危うい人たちが必要に迫られて起こしたデモがアラブの春である。そしてそれを、伝えるメディアが良くも悪くも使われた。
私たちは、メディアの報道を注意 -
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アラブの世界はとてつもなく広く、とてもひとくくりには議論できないことが良く分かった。
アラブから遠く離れた日本では、アルジャジーラの様な大手メディアを通じての情報が主になる。しかし、著者はアルジャジーラが決して正しい報道をしていないと指摘する。
宗派、族、敵対関係etc. アラブ世界の複雑さをしる入門書として本書を捉えるならば、良書である。
今なお続いているアラブ世界の混迷。様々な立場から数多くの情報が入って来ることに期待したい。情報の母集団が多くなれば、きっと真の姿が浮き上がってくるはずだ。
また、数奇な人生を歩んでいる著者の今後の活動にも注目していきたい。 -
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著者は、重信メイ。赤軍リーダーの重信房子がパレスチナに亡命し、現地パレスチナ人との間に生まれた娘らしい。
頭のいい人の書いた文章は、分かりやすい。中東情勢の報道に、自分なりの考えをもって臨めるようになるのが楽しい。カダフィやアサドの実情が触れられる。カタール政府から援助を受けるアルジャジーラの報道の真偽、よく考えた方がいいようだ。アサド政権やカダフィ政権は悪、なぜ早く降伏しないのだろう、と思わされていた。中国やロシアが国連で異を唱えるのも、欧米主体のメディア戦争に、自国の立場、国益がそぐわないためだった。
大切なのは、アラブの人たちだって、人間らしく住みやすい社会で生きたい、という思いに変 -
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チュニジア、エジプト、リビアで起こった民主化革命について、それぞれの国がどのように独裁政権が崩壊していったか、黒幕がどこで、どうやって情報操作が行われていたのか、現在進行形のシリア情勢が、なぜ「革命」ではなく「内戦」と評されるのか、などを正確に知りたい人は必読。
この本には、マスメディアでは絶対に語られない真実が記されています。
サウジやカタールという「金満諸国」がこの「アラブの春」にどのように関わっているのか、等についても説明されており、アラブ諸国の今を網羅的に知ることができます。
著者が中東生まれで、ここ数カ月取材で中東に滞在してたジャーナリストなので、かなり説得力ある本です。中東に行った -
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ネタバレ【砂漠をさすらう国籍のない人々】p155
「ビドゥーン」とは、アラビア語では「持っていない」「なし」という意味。
湾岸諸国の国に住んでいた人はもとは遊牧民だった。ヨーロッパによって国境に線が引かれるまで砂漠を自由に行き来していた。
【アルジャジーラのタブー】p212
カタール政府批判
【メディア戦争だったアラブの春】p222
チュニジアやエジプトでは主役が市民だったが、リビアやシリアではメディアが偏った報道をすることで、内戦をあおりたてた。
【SNSの裏の側面】p227
ソーシャルメディアは国家権力が個人情報を収集するツールになる危険性をはらんでいる。例えば、フェイスブックはプロフィール -
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マニアックなイスラームの歴史や伝統でもなく、一つの町の限定された個人的な悲劇の現在でもなく、中東の今を理解できる。アラブに住む人にとっては常識なのではないだろうか。そういう基本をまず、知りたい。包括的で勉強になった。
・儲けたお金は毎年ある一定の割合(財産の2.5%)で、社会に還元しなくてはならない。それが「ザカート(喜捨)」。「ラマダン(断食)」にもセルフコントロールを学び、貧しい人の気持ちを理解できるようにという意味がある。イスラム教では一生に一度はメッカに巡礼することが好まれているが、巡礼では真っ白いシーツのみを身体に巻く。神の前では皆同じ、という考えを元にしており、社会主義的な平等精 -
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著者の重信メイ氏は、日本赤軍の重信房子とパレスチナ人の父の間に生まれたレバノン出身のジャーナリストです。日本赤軍の強烈なイメージがありますが、本書は左に大きく傾いたようなスタンスはまったくとっておらず、中東の民主化を「アラブの春」と手放しで賞賛するムードの陰に潜む政治的プロパガンダやメディアの姿などが批判的に描かれており、とても興味深い内容です。エジプト・リビア・チュニジア・イラン・イラクなどアラブ各国の動向も網羅されているので、知識をつける意味でも非常に参考になりました。
われわれは一般的にシリアのカダフィ大佐について、横暴な独裁者との報道に接し、その通り私自身も受け取っていましたが、カ -
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ネタバレベイルート生まれのジャーナリスト重信メイによる中東革命の裏側。日本や欧米のマスコミは勿論、アルジャジーラですらかなり偏ったバイアスを掛けた報道をしているようです。「ジャスミン革命」に代表される、"FacebookやTwitterによって民衆が革命を起こした"という分かりやすいストーリーが様々な政治目的に利用されているのが現実。リビアやシリアのクーデターはジャスミン革命とは程遠く、内戦を煽る事でその地域での戦略的優位を確保したい欧米と露中の駆け引きにすぎないと。またバーレーン、カタール、イエメン、モロッコなどで起きた出来事はほぼ無視され続けている事も、私達がいかにアラブ世界か