映画「男たちのYAMATO」を見て、この有名な本のことを思いだし、読んでみました。
著者は21歳の海軍少尉として戦艦大和に乗りこみ、その撃沈を生き延び、終戦直後、わずか1日でこの小説の初稿を書き上げたということです。
大和の最後を描いたこの作品、映画の幾つかの印象的なシーンは、この小説からそのま
...続きを読むまとられています。たとえば、長島一茂演じる臼淵大尉が、激しく言い争う士官の間に割って入って語るときの言葉とか、特攻作戦を伝える特使にくってかかる若手艦長のシーンとか。
映画では、戦闘シーンは15分程度だったと思いますが、実際には約2時間、壮絶な(というか制空権、制海権が失なわれた海を行く大和へのほぼ一方的な)戦闘が繰り広げられ、そして巨大戦艦が爆沈した後、放り出された乗組員たちは重油の海の中を2、3時間漂い、ようやく僚船に救出されます。
この作品は、その戦闘の経緯を描いたドキュメンタリーです。
文語体、カタカナという、われわれには読み慣れない文体で書いてあるので、とっつきにくいところはありますが、それゆえに独特の臨場感と緊迫感があります。
雲ノ切レ間ヨリ大編隊現ワル 十数機ズツ編隊ヲ組ミ、大キク右ニ旋回
正面ニ別ノ大編隊 スデニ突撃隊形ニ入リツツアリ
「敵機ハ百機以上、突込ンデクル」 叫ブハ航海長カ
雷撃、爆撃トモニ本艦ヘノ集中ハ必至
艦長下命「射撃始メ」
高角砲二十四門、機銃百二十門、一瞬砲火ヲ開ク
護衛駆逐艦ノ主砲モ一斉ニ閃光ヲ放ツ
(p72 開戦)
第二波去ルヤ踵ヲ接シテ第三波来襲
左正横ヨリ百数十機、驟雨ノ去来セル如シ
直撃弾数発、煙突付近ニ命中
塚越中尉、井学中尉、関原少尉、七里少尉ラ相次イデ戦死
機銃指揮官戦死ノ報アトヲ絶タズ
艦橋ヲ目指シテ投下サレタル爆弾ノコトゴトクガ外レ、コレヲ囲繞防衛セル機銃群ニ命中セシタメナリ
魚雷命中、左舷ニ二本
傾斜計指度僅カニ上昇ヲ始ム
(p87-88 間断ナキ猛襲)
治療室ニ辿リ着キ、 傷ヲ縫合スル
軍医官二名、全身ニ返リ血ヲ浴ビ、マナジリヲ決シテ「メス」ヲ揮ウ
応急治療室ニハ浴室ヲ使用ス 湯水ノ流ルル「パイプ」ニ、血ヲ通スタメナリ
他ノ室ナラバ、ヤガテ血ノ海トナリ、血ニ溺ル
室ノ一隅ハ、天井ヨリ堆キ坂ヲナシテ死体ノ山ナリ
(p148 救出)
戦争について書かれた作品の中で、一度は読んでおくべき作品だと思います。
最初は読みにくいですが、一度読みはじめたら止まりませんから。